下北沢駅の再開発事業の一環として京王線の高架下に『ミカン下北』がオープンしてからちょうど1年。飲食テナントを多数揃えながら、街の中で次々と新しい“実験”を起こしていくという使命も背負った『ミカン下北』では、この1年どのような事が起こっていたのでしょうか。『ミカン下北』を運営する京王電鉄で企画・構想段階から深く関わってきた角田匡平さん、この場所で新業態を任されているBROOKLYN ROASTING COMPANY SHIMOKITAZAWAのマネージャー・梶井紗緒里さん、そして、『ミカン下北』内のワークプレイス『SYCL by KEIO』でコミュニティマネージャーを務める影山直毅(ヒトカラメディア)の3名で、濃厚な1年を振り返りながら、街と施設とワーカーの有機的な関係や在り方について考えます。
ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー
1. 働く人の顔が見えてきた1年

――2022年3月に下北沢にオープンした『ミカン下北』が開業から1年を迎えましたね。ヒトカラメディアが立ち上げから運営に携わっている『ミカン下北』内のワークプレイス『SYCL by KEIO』も同じく1周年を迎えたということで、今日はここ1年の『ミカン下北』と下北沢の街を振り返ってみたいと思っています。
京王電鉄・角田匡平(以下「角田」):お客さんの動きというか流れが大きく変わったという気はしていますね。それは『ミカン下北』の開業と同時にアクセス道路ができたことが大きくて、アクセス道路がなかった時はマクドナルドの前を通りぐるっと回って南側へ抜けるしかなかったのが、アクセス道路という新たな道が1本できたことによって駅側から茶沢通り方面へ行きやすくなり、新しい人の流れも出来て実際に来街する人も増えたように思います。
『ミカン下北』を開業するにあたって、僕らは下北沢という街に“働く”という要素を加えたいという思いから『SYCL by KEIO』を作り、去年8月には「I am work in Shimokitazawa」とプリントされたT シャツを配るイベントなどもやりましたが、少しずつではありますが、この街で働く人の顔が見えてきた気がします。働く人が実際に増えてきたのか、今まであまり見えていなかったのが可視化されてきたのかは分かりませんが、そういう人たちがBROOKLYNさんのテラス席とかで仕事している風景を見られるようになったのは嬉しいですね。

▲京王電鉄株式会社 開発事業本部 SC営業部 角田 匡平 様
『SYCL by KEIO』・影山直毅(以下「影山」):嬉しいですよね。僕は『ミカン下北』が出来る2年前くらいから下北で働いていますが、下北沢の街の中に新しい景色みたいなものが生まれたなっていうのが実感としてすごくあります。角田さんがおっしゃったアクセス道路もそうですが、『ミカン下北』の大階段のところにみんな隣り合って座っていたり、BROOKLYNさんのテラス席は平日でもめちゃめちゃ人が多いですし、象徴的なスポットが生まれ、皆さんがそこを使いこなしながら新しい会話や関係性が生まれて行っている感じがすごくします。
BROOKLYN ROASTING COMPANY SHIMOKITAZAWA・梶井紗緒里(以下「梶井」):私は、下北沢店に配属されるまでは、実はほとんど下北沢に行ったことがありませんでした。勝手に“若い人が来る街”っていうイメージを抱いていましたが、意外と働いている人も家族連れも多くて、休日はすごい遠方からもいろんな人が来てくれる街です。最近、平日の朝は出勤前の常連さんも増えてきて嬉しいですね。
2. 新しいチャレンジを誘発する場所として

――開業直後から、たくさんのコラボレーションが起こったことが驚きでした。コロナ禍の影響を受けて『ミカン下北』の飲食店がアルバイト採用に困っていると聞けば、『SYCL by KEIO』の入居者さんがアイデアを出し合って募集ページが生まれるきっかけを作ったり、テナントさん同士がコラボした商品もたくさん生まれましたよね。
影山:そうですね。『SYCL by KEIO』の入居者さんはすごく積極的に活動されていて、『/Br6.』というブレインフードの開発をされている長谷川さんという方は、BROOKLYNさんへ直接企画を持ち込んで、BROOKLYNのGMの方がそれを見て「今ちょうど下北沢の店舗にいるから喋ろうよ!」みたいな感じになり、そこから実際に商品開発された……ということもありました。『SYCL by KEIO』の入居者さんだけでなく、『ミカン下北』のテナントの方々もこの場所全体が“実験区”であることをしっかり認識しているからこそ、そういうコミュニケーションが生まれたのかなと思いますね。
梶井:ブレインフードのコラボレーションも同じくSYCLの入居者さんが始められた『ホンネPOST』の実証実験も、今までだったらお断りしていたかもしれないですね。他の店舗で考えても、そういったことはほとんどやったこともありませんでしたし。
――今までだったら断っていたものを、今回はやってみようと思った理由はどんなところにありますか?
梶井:そうですね、下北のBROOKLYNがそもそも他の店舗とは違っていて、初の試みとしてコーヒーだけでなく食事もお出しするレストラン業態の店舗であるというのがまずあって。そこへの不安が大きかったので、いろいろな人の話を聞いてみたいと思ったんです。あとはやっぱり、この『ミカン下北』自体にチャレンジできる空気感があるというか、これまでと同じことをやっていてはダメだなと思えるのも大きいような気がします。『ミカン下北』の開業前にテナントさん同士が集まる交流会が何回かあったのですが、その時からすでに「ただならぬ商業施設だな…」と思っていました。
――どんなところからそう感じられたんですか?
梶井:いい意味で変な人たちがいっぱいいたんです(笑)。これまでBROOKLYNの店舗を商業施設内に構えることはあって、テナント交流会にも何度も出席してきましたが、『ミカン下北』の場合はちょっと変わっていました。自己紹介やテナント紹介はほどほどに、2回目くらいからは「妄想会議をしましょう!」と言って、それぞれがチャレンジしようと思っていることを発表したりしました。その内容がまたすごく濃いんですよね。せっかくこういう人たちの中にいるんだし、もっと新しいことをやらなきゃな、とその時に思いました。
3. もっと街へにじみ出していくためのハブになる

――『studio YET』も本格始動し、『ミカン下北』や『SYCL by KEIO』を中心に下北沢を舞台に実験する人を応援していく動きがさらに加速していきそうですが、「こんなことが起きたらいいな」や「こんな状況を起こしたい!」など、2年目以降の妄想をぜひ聞かせてください。
※『studio YET』とは?:誰かの”やってみたい”を0.5歩前に進める実験応援プログラム。遊ぶ・働くの境界を横断し、アイデアや熱源を持つ個人と街を繋げコトを実現させるべく、京王電鉄とヒトカラメディアが中心となり運営を行っている。
角田:やりたいことを『ミカン下北』の中だけに留めずに、ここを起点として外へ広げていきたいという思いがまずあります。少し時間がかかるかもしれないですが、『ミカン下北』の店舗だけじゃなくて、周辺の店舗も巻き込んで同時多発的にイベントをやったり、そういう状況を作っていけたらいいなと。要するに“ここからどう飛び出していくか”ですね。いろいろなことを街の中で“面”で波及させていくことがやっぱり一番やっていきたいことですし、それが街が魅力的になることにも繋がるような気がしています。
影山:『SYCL by KEIO』としては、2年目のテーマを大きく3つ掲げていて。SYCLの入居者さん同士のコラボレーションや交流は、ありがたいことに次々と起こっている状況なので、その範囲を広げて、SYCLのオフィス区画(B街区)で働いていらっしゃるワーカーの方ともっと繋がりを深めたいというのがひとつ目です。2つ目としては、SYCLの入居者さんと『ミカン下北』の店舗をもっと繋げたいと思っています。3つ目は角田さんがおっしゃっていた事と同じですが、やはり下北沢の街へもっとにじみ出していきたいですね。

▲BROOKLYN ROASTING COMPANY 梶井 紗緒里 様
梶井:BROOKLYNは、1年経ってようやく営業のペース掴めてきてスタッフ全員が慣れてきたところなので、まだまだこれからという感じではありますが、今は一切使っていない店舗の2階部分を2年目は活用できたらいいなと思っています。イベントだったりポップアップだったり、どこかの店舗やブランドさんとコラボレーションしたりして、全力で活用していきたいですね。
影山:あとは、シンプルに『ミカン下北』で働く方や街の皆さんともっと仲良くなりたいです(笑)。単純に挨拶したり飲みに行ける人が増えるだけでも働き方や過ごし方に変化って必ず起こってくると思うんですよね。やっぱり『ミカン下北』でフットサル大会しますかね?(※取材の後日、SYCLの入居者やヒトカラメディアの有志によるフットサル大会が行われました!)
――運動会も良さそうですよね(笑)
角田:運動会の案はちょくちょく出ているので、そろそろ本気で考えないといけないかもしれないですねー(笑)
――こういう、たわいのないアイデアを言い合える相手が増えて、その輪が広がっていく中で、最初は入居者や利用者だった人が2年目、3年目とどんどんプレイヤー側に回っていくような気がします。
角田:そうですね。『ミカン下北』について、実は、僕らは単なる商業施設だとは思ってないところがあって、そもそも商業施設という言葉自体も意識的に使わないようにしているんですね。施設の中にはオフィスもあるから、というのがひとつの理由ではありますが、いわゆる商業施設のこれまでのやり方は、ビジネスとしては頭打ちだろうと思っていますし、施設の新しい在り方やビジネスモデル、街との関わりを見つけたいという思いがこの『ミカン下北』には詰まっています。
――商業施設ではなく、さまざまな機能を持ったハブのような存在ですね。
角田:はい、そういうイメージですね。『ミカン下北』はあくまで拠点であり機能でもあって、ここからどう展開していくか、何を仕掛けていくかを考える“場”になれたらいいなと思っています。
――“ミカン(未完)”という名前の通り、『ミカン下北』はそんなふうに、使っていただける人たちの手によって常に編集され続け、変化し続けるのかもしれないですね。2年目も楽しみです。今日はありがとうございました。

● 京王電鉄×ヒトカラで仕掛ける、商業施設×ワークプレイス×街の可能性
● 「SYCL by KEIO」コミュニティで起きている5つのコト
編集/ヒトカラメディア編集部
ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー





