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2026/3/3

オフィス作りのプロセスが組織を変える。若手社員の声がプロジェクトを動かした、アサヒファシリティズ社のオフィスリニューアル

総合的な建物維持管理を行う株式会社アサヒファシリティズ(以下、アサヒファシリティズ)は、大阪本店のオフィスリニューアルを実施しました。今回のプロジェクトで目指したのは、単なる空間の刷新だけではなく、社員一人ひとりが”成長を実感できる環境”を作ること。若手社員を中心に実施したワークショップをきっかけにこのプロジェクトは大きく動き出します。今回は、プロジェクトの中心を担ったアサヒファシリティズ総務部の砂川直子様、横田剛士 様、新長捺未 様、そしてヒトカラメディアで設計ディレクションとプロジェクトマネジメントを担当した八塚を交え、リニューアルの裏側と、そこで生まれた組織の変化についてお話を伺いました。

ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー

    1.リラックススペースは形骸化。会議室不足も深刻に

    ©yosuke ohtake

    ーー まず、今回のオフィスリニューアルに踏み切った背景について教えていただけますか。

    アサヒファシリティズ・砂川直子 様(以下「砂川」): もともと大阪本店は2019年に一度改修したのですが、その後人員が増え手狭になっていました。そこで、オフィスリニューアルでもう一度働く環境を整えよう、と今回のプロジェクトが始まりました。

    ーー 具体的に、どんなところを見直して整えようと思ったのですか?

    砂川: 一人あたりの面積が狭くなってきたことがまずあるんですが、他には、フリーアドレスにしたいという声が上がっていたり、執務エリアの真ん中にあるリラックススペースが上手く活用できていない状況もありました。フロアにいる全員の視界に入るような場所にあるので、せっかくの休憩スペースなのに落ち着かない。結局は多くの社員は自分の席から動かない。という状態でした。
    それに加えて、WEB会議が増えたことによって会議室の取り合いも深刻になっていました。誰かがWEBセミナーを受けるために広い会議室を1人で使ってしまい、複数人での会議で使えない、といったことも頻繁にありました。

    2.「フリーアドレスにしたい」若手社員の声がプロジェクトを動かした

    ーー そうした課題を整理するために、まずはアンケートを取ってワークショップを実施されたと伺いました。これはヒトカラメディアの八塚からのご提案だったんですよね。

    ヒトカラメディア・八塚 裕太郎(以下「八塚」): そうですね。最初にご相談いただいた時点で、砂川さんたち管理部門の方々が強い課題意識をお持ちなのは伝わってきました。ただ、フリーアドレスの導入などを考えたときに、他の部門の方々がどれだけ前向きになってくれるかは未知数でした。そこで、一方的にプランを提示するのではなく、皆で一緒に”働きやすいオフィス”を考えていくプロセスをご提案しました。

    砂川: 私たちだけでは、ワークショップという発想には至らなかったと思います。どうやって社員の意見を聞けばいいのか分からなかったので、非常に助かりました。ワークショップを実施することになり、こだわったのは、参加者を若手社員中心にしたことです。当時の総務部長からも「自分たちはいいから、これから長くこのオフィスを使うみんなの意見を聞いてあげてほしい」という後押しがありました。

    ーー 実際にワークショップをやってみて、いかがでしたか。

    砂川: 本当にやって良かったと思っています。まず、社員に当事者意識が芽生えましたし、何より、私たちが思っていた以上にたくさんの意見が出てきたんです。一番の驚きは、フリーアドレスに対する反応でした。私たちの会社は比較的、保守的な社風なので、固定席を望む声が多いだろうと予想していたのですが、若手社員から「フリーアドレスをやりたい」という意見が次々と出てきて。

    アサヒファシリティズ・横田剛士氏(以下「横田」): あれは驚きましたね。社員に対するイメージが変わりました。

    砂川: ですよね。「そっちなんだ!」と(笑)。その声が、プロジェクトの方向性を決める大きなきっかけになりました。

    ▲ 写真:ワークショップで出たアイデアを空間に落とし込んでいく

    アサヒファシリティズ・新長捺未 様(以下「新長」): 私もワークショップに参加しましたが、普段あまり話すことのない他部署の人が、働く場所についてどう考えているのかを知れたのはとても新鮮でした。課題意識が共通している部分もあれば、全く違う視点からの意見もあって、多くの発見がありました。

    八塚: 先ほど砂川さんがおっしゃったように、私もアサヒファシリティズの皆さんは保守的な考えを持つ方が多いのかなと思っていましたが、ワークショップをやってみると、意外なことに「無茶ぶりを乗り越えた先に成長がある」といった、かなり”マッチョ”な体験談がいくつも出てきたんです(笑)。真面目にコツコツと仕事をする、というイメージがあったのですが、それだけではない、ガッツのようなものを秘めた方々なのだと感じました。そして、そういった無茶ぶりやチャレンジを乗り越えるためには、もっと部門間で協力できた方がいい、という意見も多く出ました。

    ーー ワークショップで出てきた意見やアイデアを、どのように空間デザインに落とし込んでいったのでしょうか。

    八塚: ワークショップのあと、対話を重ねる中で見えてきたのは、アサヒファシリティズの皆さんにとって大切なのは、まず”落ち着いて仕事ができること”だということ。そこで、執務にしっかり集中できる空間を核に据えつつ、適度にリフレッシュでき、部門を超えたコミュニケーションも生まれる、というメリハリのあるレイアウトを目指しました。

    ーー 執務エリアのデスクのレイアウトが特徴的ですね。一見、図面ですと整然と並べているように見えますが、少しずつずらして配置してあり小道がたくさんあるようになっています。

    八塚:デスクを島型にしてただまっすぐに並べてしまうと、オフィス内の動線が固定化され、フリーアドレスだったとしても結局いつも同じ人としか話さない、ということになりがちです。なので、デスクは単体ごとにしてずらしながら配置し、複合機などへ行くにも複数のルートが生まれるようにしました。ここでさらにデスクを斜めに配置したりしてしまうと、”まずは自分の仕事に集中したい”という点の実現が難しくなってくるので、集中しやすい環境を基本としながらも、どうしたら”接点”が生まれやすい空間になるか、偶発的なコミュニケーションが生まれるか、を考えていきました。

    ▲リニューアル前<Before>

    ▲リニューアル後<After>

    ーー 若手社員の声から実現したフリーアドレスですが、導入にあたっては管理職の方々からの不安の声もあったのではないでしょうか。

    砂川: はい、部門長クラスからはかなり多くの意見をいただきました。ただ、ここで固定席に戻してしまうと、何のためにワークショップをやったのか分からなくなってしまいます。ですから、なぜフリーアドレスが必要なのかを説明し、「まずは一度やってみませんか。運用しながら改善していきましょう」と説得を続けました。最終的には、部門長も前向きにフリーアドレス制に取り組んでいただけることになりました。

    横田: 私も管理職の立場として、部下の様子が見えにくくなることへの不安はありました。他の管理職も同じように感じていたと思います。ですが、砂川が丁寧に説明を重ねてくれたこと、そして本店長をはじめ上の立場の人たちが「みんながそう言うなら、まずはやってみようか」と心を開いてくれたことで、実現できたのだと思います。多くの人の協力があってこその決断でした。

    3. オフィスづくりが、組織の文化を変えるきっかけに

    ©yosuke ohtake

    ーー リニューアルからしばらく経ちましたが、新しいオフィスはいかがですか。お気に入りの場所などあれば教えてください。

    新長: リフレッシュスペースの活用が活発になり、以前は自席で昼食をとる人が多かったのですが、今はリフレッシュスペースや窓際のカウンター席がいつも誰かで埋まっています。

    横田: 早く帰る人が増えたように感じます。これは、フリーアドレス制になり、チームやグループごとに決まった席に座ることがなくなったことで、上司や先輩が残っているから帰りづらい、といった”付き合い残業”がなくなったからではないかと。私個人としても、仕事の生産性は上がったと感じています。以前は自分の机に書類を山積みにしたまま帰ることもありましたが、今は”みんなの机”なので、毎日きれいに片付けて帰る習慣がつきました。この意識の変化が、仕事の進め方にも良い影響を与えているのかもしれません。

    ©yosuke ohtake

    ーー 最後に、今回のプロジェクトを振り返っての感想をお聞かせください。

    新長: 空間にメリハリができたことで、働き方のオンとオフの切り替えがしやすくなったと感じています。集中したいときはブースにこもるなど、社員が自律的に働く場所を選んでいる様子が見られます。

    砂川: 私は最近、東京本社へ異動になったので、完成したこの大阪本店で働けていないのが残念ですが、このプロジェクトを通じて、大阪本店は”自分たちの意見が反映される組織”に変わったと、東京から見ていても感じています。管理部門が一方的に決めるのではなく、社員の声に耳を傾け、対話し、丁寧に説明する。そのサイクルが生まれたことが、今回の最大の成果ではないでしょうか。

    八塚: オフィスをつくるプロセスそのものが、組織のコミュニケーションを活性化させ、文化を育んでいくきっかけになる。そんな素晴らしいお話を伺うことができました。本日はありがとうございました。他拠点のリニューアルなど、ここからまだまだ続いていきますが引き続きよろしくお願いします。


     取材・文/ヒトカラ編集部