PROJECT
2025/12/23
セミクローズのコミュニティから、新しい繋がりと強いビジネスを育てる ──渋谷のスタートアップ共創拠点「GUILD VALLEY」誕生の舞台裏
スタートアップ支援に注力する東急不動産が、渋谷・道玄坂に新たな共創拠点『GUILD VALLEY』を開設しました。ヒトカラメディアは、空間デザインとコミュニティ運営などを担当。両者が重ねた議論と試行錯誤の先に生まれたのは、“スタートアップが自然に集まり、つながりから事業が育つ場所”です。東急不動産の嶋木様、ヒトカラメディアの柳川、穴山と、渋谷の地でスタートアップの熱を生み出す拠点「GUILD VALLEY」誕生の舞台裏を聞きました。
ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー
1.スタートアップが自然に集まれる”谷”を──動き出した「GUILD VALLEY」プロジェクト

――まず、「GUILD VALLEY」の立ち上げに至った経緯を教えてください。
東急不動産・嶋木様(以下「嶋木」):この場所は、もともとは普通の賃貸オフィスとして貸していた物件でした。その後、入居していた企業が退去されて「共創スペースとして使ったらどうか」という構想が持ち上がったのですが、ちょうどコロナ禍に入ったり、さまざまな調整の折り合いがつかなかったりして白紙に。でも、“スタートアップがコミュニケーションできる場”というアイデアは面白いと思ったので、やっぱり自分たち(東急不動産)でつくってしまおうと考えたのが出発点です。
当社はこれまで『QUICK』や『COERU』など、スタートアップ向けの企画型オフィスを渋谷を中心に展開してきました。“どうすれば渋谷で選んでもらえるか”を常に考えてきたんです。今はメガベンチャーと呼ばれる企業も、もとは小さなスタートアップ。創業期から成長を支援し、将来的に大規模物件にも入ってもらう――そんな循環をつくりたいと考えました。その想いから、既存のオフィスシリーズ『GUILD』から派生して生まれたのが『GUILD VALLEY』です。
ヒトカラメディア・穴山信一(以下「穴山」):最初にご相談をいただいたのが2023年10月ごろでしたね。すぐにプロジェクトが動き始めて、2024年2月にはワークショップを実施しました。東急不動産さんが出資しているVC7社をキーパートナーとしてお招きして、「どんな施設なら使いたいか」「何が足りていないか」を徹底的にヒアリングしました。その後は合宿なども開きながら、どういう目的で、どんな場所にしていくのかを何度も議論を重ねていきました。
――議論を進める中で一番時間がかかったのは?
嶋木:“誰に使ってもらうのか”のセグメンテーションですね。スタートアップと一口に言っても、フェーズも課題もさまざまですから。
ヒトカラメディア・柳川雄飛(以下「柳川」):そうですね、そこが一番悩みました。渋谷には既に多くのスタートアップ向け施設があります。フリーアドレスの普通のコワーキング施設で“なんでもできる場所”にしてしまうと他施設との差別化が図れません。なので、紹介制で会員を獲得していく仕組みを考えました。プレオープンをして施設を使ってもらいながらリアルなニーズを拾い、セミクローズドな形で少しずつ信頼関係を構築しながらコミュニティを育てていきました。
2.渋谷を再びスタートアップの聖地に

――『GUILD VALLEY』は2024年10月にプレオープンしましたが、ユーザーの反応はいかがでしたか。
嶋木:当社は『ビジネスエアポート』というシェアオフィスも運営していますが、『GUILD VALLEY』は場所の使われ方がまったく違っていてとても面白いですね。『GUILD VALLEY』は、ふらっと入って誰かと話をしに来るような場所になっています。最初にヒトカラメディアさんと話していた“フランクなコミュニケーションが生まれる、人と人の距離が近いコミュニティのような場所にしたい”という構想が、形になったと思っています。
柳川:『GUILD VALLEY』のコアな機能は、コワーキングスペース、イベント、コミュニティの3つです。最初はとにかく使ってもらうことを重視して、コワーキングスペースに力点を置いていました。プレオープン後は貸切型イベントや社内ワークショップも多く開催していただくようになり、その中で利用者のニーズもよりクリアになってきて、2025年8月のグランドオープン以降は、バーの継続や、先輩スタートアップが登壇する”しくじり先生”のようなイベント、ポーカー大会など、多様な企画が生まれるようになりました。
『GUILD VALLEY』は“誰でも使える場所”ではなく、会員制かつ紹介制の形をとっていて、それも他の施設にはないコミュニティ形成につながっていると思っています。東急不動産さんやVCの方々からの紹介でご登録いただくケースが多く、ある程度、利用者同士の関係性や身元が分かる状態です。この1年を見ていると、仕事でつながる前にまず仲良くなる、趣味や好きなことでつながるといった流れが、利用者の増加とともに定着してきたと感じますね。
穴山:コワーキング機能だけだと、どうしてもつながりは生まれにくいと思います。いろんな声を拾い、イベントを行いながら、スタートアップの方々が自発的に企画できる状態にすることを意識しています。プレオープンから1年ほど運営してきて、それが一番良い形なんじゃないかと実感していますね。今では会員数も増えてきていて、43社・約150人の方に利用いただいています。
3.手探りの1年、見えてきた”人が集まり、関係が育つ場所”

――1年でこれだけ利用者が増え、多様なイベントや企画も生まれていった理由はどこにあると考えていますか。
嶋木:プレオープン当初は、スタートアップ側もどう使えばいいのか手探りの状態で、最初の1〜2カ月は正直もどかしさを感じていました。キッカケのひとつになったのはUMAMI UNITED JAPANさんが開催したイベントです。UMAMI UNITEDさんはプラントベース食品を展開するスタートアップですが、シンガポールから食品・飲食経営者団体を招き、日本のフードテックスタートアップにもお声がけしてして『GUILD VALLEY』でイベントを開催されました。このイベントをきっかけに施設の特徴が伝わり、他のスタートアップへ紹介を通じて利用が広がっていったという流れです。
穴山:私たち運営側が特に意識していたのは、利用者へのヒアリングですね。「どうすればもっと使いやすくなるか」を粘り強く聞き取りながら改善を重ねていきました。その結果、貸し切り利用が大きく増えていき、利用者のニーズを把握しながら、それに沿ったイベントを開催できるようになりました。そうした積み重ねの中で、少しずつ“コミュニティスペースとしての姿”が形になっていったと思います。
――日々たくさん開催されているイベントはどのように企画しているのでしょうか。
穴山:イベントには大きく3つのパターンがあります。1つ目は、「GUILDサポーター」と呼ばれる外部パートナーによるもの。会員であるスタートアップの成長を後押しするために、サポーターの方々が講演やセミナーを開催しています。2つ目は、ヒトカラメディアが主催するスタートアップ同士が仲良くなれる交流イベント。バー営業のようなカジュアルなイベントがこれにあたります。そして3つ目が、スタートアップ自身が主体的に行うイベントです。私たちは、そうした企画がうまく成立するようサポートしています。
嶋木:最近はスタートアップ主催の大規模イベントも増えていますが、そうした場では「誰に話しかけたらいいんだろう?」と戸惑う方もいらっしゃると思うんですよね。その点、『GUILD VALLEY』にはヒトカラメディアさんのコミュニティマネージャーが常駐していて、「この人と話してみたらどうですか」と自然に繋げてくれるので、初めて来た人でも安心して会話の輪に入れることができます。それもこの施設の規模感と運営スタイルの良さだと感じています。
4.つながりがストーリーを生み、挑戦を後押しする

――今後、『GUILD VALLEY』をどんな場所に育てていきたいですか。
嶋木:業種やステージを限定せず、シードからレイターまで幅広い企業が交わる場所にしていきたいです。同じ業種でなくても“実りのあるつながり”が生まれて、「ここで出会った企業がきっかけで上場まで走れた」などのエピソードが生まれるような、ストーリーのある場にしていきたいですね。特に、創業初期のスタートアップは、営業先を一件ずつ探して問い合わせして……と大変な時期が多いと思います。だからこそ「ここに来れば誰かがつないでくれる」「頼れる場所」として存在し続けたいなと思っています。
穴山:引き続きスタートアップが自発的に活動を起こせるコミュニティスペースになれれば嬉しいですね。ここに集まることで、成長のきっかけを掴んだり、「自分もやれる」と思えたりするような前向きなエネルギーが生まれていく。そんな循環を育てていけたらと思います。
柳川:今後は行政や大学、研究機関などもGUILDサポーターとして巻き込みながら、スタートアップ支援のバリエーションを広げていきたいですね。縦でも横でもない、“斜めの関係”で支え合う関係性を耕していくことで、より手厚いエコシステムになるはずです。グランドオープン時のプレスリリースにも記載したのですが、「ここを起点に一緒にスタートアップを応援していく」という思いに共感してくれる人は大歓迎です。VCはもちろん、共に盛り上げてくれる仲間もどんどん増やしていけたらと思っています。

★「GUILD VALLEY」公式ホームページ
お問い合わせや、GUILDサポーターへの加入をご検討の方はHPよりお問い合わせください
文/太田祐一
ヒトカラメディア
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