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2026/4/23

”フリーアドレスありき”は危険 ー空間プランナーが語る、一周まわって見えたフリアド化のポイントと固定席の価値

オフィスのフリーアドレス化は、コミュニケーション促進やスペース効率化の切り札として、ここ数年、多くの企業が導入を検討してきました。しかし、実際に導入してみると「ほぼ固定席のようになってしまう」「組織活性化になかなかつながらない」という声も少なくありません。 今回は、ヒトカラメディアで空間プランナーとして数々のオフィス移転プロジェクトを手がけてきた小島と廣野に、フリーアドレス化の現実と、成功する運用のコツについて聞いてみました。

1.”フリーアドレスありき”の落とし穴

――フリーアドレス制の導入が一気に加速していた時期がありましたが、今も固定席からフリーアドレス制へ移行したい、という要望は多いですか?

ヒトカラメディア・廣野 雄太(以下「廣野」):少し落ち着いたように思います。一時期は、フリーアドレスという言葉が一人歩きしていたようなところもあり、ABWと同じで、移転担当者や管理部の方が「今はフリアドの時代らしい」「フリアドにしなきゃ」と、焦ってフリアドの導入を進めてしまう・・・というケースが見られました。

ヒトカラメディア・小島 亮(以下「小島」):ヒトカラメディアの事例でいうと、福島の渋谷レックス社のリニューアルプロジェクトでも、最初の打ち合わせから「フリーアドレスにしたい」という要件をいただいていました。フリーアドレス制を導入したいという背景には「組織内コミュニケーションの促進・活性を図りたい」という目的があり、それ自体は何も問題はないのですが、なぜフリアドなのか?フリアドでないと課題は解決出来ないのか?というところを徹底的にまずは掘り下げていきました。渋谷レックスさんは結果的にフリアドを導入したのですが、フリアドにするにしても固定席にするにしてもそれを理解した上で選ぶことがすごく重要になってきます。

ーーフリーアドレスはあくまで手段のひとつ、ということですね。

小島:そうですね。”コミュニケーションの活性化”と言っても、どことどこのコミュニケーションが足りてないのか、何のために活性化を図りたいのか・・・。それを明確にした上で、やっぱりフリアドに効果が見込めそうであればやるべきだと思うんです。でも、そのプロセスや思考をすっ飛ばして、フリーアドレスというスタイルだけが先行してしまうケースもけっこう見られます。”コミュニケーションの活性化”の解決方法は、フリアド/固定席の選択以外にもたくさんありますし、あくまで選択肢のひとつだということを、まずは忘れないで欲しいなと思います。

――業種や職種によって、フリーアドレスの向き不向きはありますか?

廣野:エンジニアさんが多く在籍する企業は固定席を採用しているところが多いですね。長時間デスク前に座っている職種ということもあり、自席の環境にこだわる方も多い印象です。優秀なエンジニアを採用するために固定席のオフィスチェアにグレードの高いものを用意したり、入社が決まると好きなオフィスチェアを選べる・・・という企業もあります。私が以前担当したケップルさんのオフィスも、本社は完全フリーアドレスですが、エンジニアさん用に新設した分室は完全固定席にしていました。

小島:オフィスを働く人の特性にフィットさせる、というのはとても大事ですよね。採用だけでなく、出社率にも直結しそうです。

廣野:以前、私が担当した製造業の会社では、プロジェクト初期段階から固定席前提で、フリーアドレスの検討すらしませんでした。社内の効率的な業務フローがすでに出来上がっており、そのフロー上、どこに誰がいるかが分かってる方が良いという理由でした。ただ、全体のコミュニケーションの総量はアップさせたい、そのための仕掛けはちゃんと考えたい、ということだったので、どの部署の方も使いやすい休憩スペースや、ゆっくりランチが食べれるスペースを新たに作りましょう、というご提案をしました。

2.フリアド成功のポイントは”目的”と”運用”

――フリーアドレス化の導入に成功している事例を教えてください。

廣野:最近ですと、私が担当したAntwayさんは上手にフリーアドレスを使いこなしていると思います。大きなポイントは、フリーアドレスの席だけでなく「フォーカスエリア」もちゃんと設けていることですね。そのエリアではおしゃべりも食事も禁止です。しかも、フリアドエリアとフォーカスエリアにはある程度の距離を持たせてあります。集中するときはこっち、話ながら一緒に仕事したいときはこっち、というふうに皆さんが用途ごとに使い分けていらっしゃいます。
それと、総務の方の運用も素晴らしく、デスクモニタの配置やお菓子の置き場所を工夫したり、固定化しない仕掛けを試行錯誤していて、これもフリアドが上手くいっている理由のひとつだと思います。会社としてオフィスという空間をどう捉えているのか、をメッセージとしてきちんと全従業員へ伝えていることも影響していると思います。

――なるほど。運用面もとても大事になってくるんですね。他にどんな運用例があるのでしょうか?

小島渋谷レックスさんでは、月に数回くじ引きで席が決まる日があるんです。普段はフリアド制をしいていますが、くじ引きの日は社長室にいる社長も一緒にくじを引いて席をシャッフルしています。フリーアドレス制にしていても、毎日同じ席に座ってしまったり、何となく「ここはあの人がよく座っている席だから...」となって、実態としては半分固定席のような状態になってしまう、ということってけっこう多いですよね。そんな”フリアドあるある”をできるだけ避けてオフィスをちゃんと機能させるには、運用担当者をきちんと決めて、常日頃オフィスがどのように使われているか、意図する形で運用されているかを定期的にチェックしていくことが必要です。

廣野:オフィスの運用って、オフィスを作ることと同じくらい大切だと思っています。新しくオフィスを構築したり、レイアウト変更したりする時、コンセプトや狙い、運用方法を何度も検討して、移転直後は皆さん頑張ってくださるんですが、移転担当の方が異動や退社されたりすると、当初の意図や熱量まではなかなか引き継がれなくて、久しぶりにオフィスを訪問してみると「あのときの遺伝子が何も残っていない...」といったような状態になってしまうことがけっこうあります。

小島:そうですね。これはフリーアドレスに限ったことではありませんが、「竣工後もちゃんと運用していけるのか?」という観点を常に持ちながら運用プランも同時に検討していくことがとても大切です。

3.フリアドの周辺スペースの作り方もポイント

――最近の傾向として、何か変化は感じていらっしゃいますか?

廣野:固定席が見直されていて、フリアドから固定席に戻す会社が増えてる気がしますね。

小島:一周した感じはありますよね。企業側もワーカー側も、固定席/フリアドのメリットとデメリットを両方経験し、理解したように思います。

廣野:固定席の「いつでもあなたの席を用意して待っています」というメッセージは、企業によっては出社率を上げたり、直行/直帰を減らすのにも効果がある、ということが改めて分かったのではないでしょうか。だからこそ、固定席の可能性を最初から捨てるのではなく、今の自分たちには本当にフリアドが合っているのか?その後の運用は大丈夫なのか?これまで以上に慎重に検討してほしいですね。

――フリーアドレスを検討している企業へのアドバイスをお願いします。

廣野:オフィスの移転やリニューアルをきっかけに組織内のコミュニケーション量を増やしたい、という課題があるとき、その解決方法はロッカーやリラックスエリアの配置、カフェスペースの作り方もアプローチのひとつになります。なので、フリアド化と同時にぜひいろいろ議論していただけたらと思います。

小島:あとは、フリアド席の周辺をどうするかも大切になってきますよね。フリアド席と集中エリアの席の距離をどう取るのか、固定席はどのくらい用意するべきなのかなど、セットで考えなければいけないことが実はたくさんあります。その作り方によってフリアドの効果も変わってきます。
フリーアドレスにするかどうかの2択ではなく、会社にとって何が最適なのか、どんな状況を起こすことがゴールなのか、導入したあとはどのように運用していくのかをちゃんと考えることが、フリアド含め”使い倒せるオフィス”を作る大切なポイントです。フリーアドレスにするかどうか?の前段階からぜひ一緒に考えていければと思っています。


 取材・文/ヒトカラメディア編集部