PROJECT
2026/7/27
【仲介・内装デザイン事例】rayout株式会社様
”完成”ではなく”成長”を目指す。rayout社の”居抜き物件ありき”のオフィス移転
工事費や賃料の高騰を背景に、さらに人気が高まっている「居抜きオフィス」という選択肢。しかし、居抜きの価値はコストを抑えることだけではありません。今回ご紹介するrayout社のオフィス移転では、居抜き物件との出会いをきっかけに、人が自然と集まり、組織とともに成長していく空間づくりを実現しました。「移転時に100%完成させない」という発想の裏側には、働く人を主役にしたオフィスづくりのヒントが詰まっています。ここでは、rayout社の代表・吉田壮汰様と移転プロジェクトを担当した小林七海様、そして、ヒトカラメディアからは仲介担当・木幡大地、空間デザイナー・小島亮が、約1年にわたる当プロジェクトを振り返ります。
ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー
1.”居抜き前提”ではじまったオフィス探し

――まず、オフィス移転を決めた背景を教えてください。
rayout・吉田壮汰様(以下「吉田」):従業員が増えてきたことが一番の理由です。それと、オフィスビル自体も古く小さかったため、お手洗いの数が足りていなかったり、エレベーターの老朽化も課題になっていました。みんなが落ち着いて働ける環境ではなくなってきていたので、移転を決めました。
――物件探しはどのように進めましたか。
吉田:予算を出来るだけ抑えたかったので、最初から居抜き物件を探していました。そのことはヒトカラメディアさんへ正直にお伝えしていたのですが、”居抜き前提”で依頼させていただくのは何というか、洋服屋へ行っていきなり「アウトレットコーナーどこですか?」と聞いているようで、実はちょっと申し訳ない気持ちでいました。
ヒトカラメディア・木幡大地(以下「木幡」):そうだったんですか!私は何も気にしていませんでしたし、当然のご判断だと思っていました。居抜き物件の問い合わせはここ最近かなり増えていて、従業員が何百人もいる大企業からも「居抜きはありますか?」という問い合わせがくるほどです。賃料はどこも上がり、工事費も高騰し続ける中で、居抜きを最優先に検討する判断は非常に合理的で、もうめずらしい選択ではなくなっています。

――しかし、理想の物件になかなか出会えないのが居抜き物件の難しいところですよね。今回も、この物件に決まるまでに苦労があったと伺っています。
木幡:そうですね、簡単ではありませんでした。去年の7月に最初の打ち合わせをさせていただいてから、今の物件に決まるまで、吉田さんにはかなりたくさんの物件資料を見ていただき、内見もヒトカラメディアだけで居抜き以外の物件も含めて10棟近く行っていただきました。途中、良いなと思う物件があり申込みを入れたのですが、タッチの差で別の会社に決まってしまいました。申込みのタイミングは半日も差がなかったように思います。

吉田:あの時は本当に悔しかったですよね。木幡さんと内見へ行ったあと、私がすぐ判断すれば良かったのに、少しだけ検討しているあいだに遅れをとってしまいました。そのせいで良い物件を逃してしまって・・・。
木幡:居抜き物件は本当に”ご縁”がつきもので、タイミングが合うかどうかがすべての世界ですからね。あの出来事があったことで「次こそ絶対に逃さないぞ」という覚悟ができた気がしますし、結果的に、あの物件を超える良い物件に出会うことができました。
吉田:そうですね。この物件を見た瞬間に「ここだ!」と思いました。今度こそ逃したくなかったので、すぐに申込みを入れさせていただきました。
木幡:この物件はもともとは2つの区画に分かれていて、別々のテナントが入っていたのですが、たまたまほぼ同じタイミングで両方空くことになったんです。「ぶち抜けば1フロアとして使えるぞ!」と思い、急いでご提案させていただきました。この物件こそ、本当にびっくりするタイミングとご縁で出会うことができました。
2.2つの区画、異なる内装をひとつのオフィスに

――物件が決まったあと、内装デザインの検討はどのように進んだのでしょうか。
吉田:2区画をぶち抜いて使うので、まず、壁を壊す工事が必要になるわけですが、本来の契約条件では壁を壊さない状態での引き渡しが前提になっていました。そこを、ヒトカラメディアさんがオーナー側と交渉してくださったことで壁を抜いた状態で引渡しされることになりました。そこから、居抜きで残っていたものをどこまで活かせるのか、最低限どんな内装が必要なのかを検討していった感じです。
ヒトカラメディア・小島 亮(以下「小島」):最初に旧オフィスにお邪魔したときに、rayoutさんの社内の空気に特別なものを感じたんですね。決して広いとは言えないスペースにギュッと人が集まっていて、だからこそ生まれるポジティブなエネルギーを感じたんです。「この感覚を移転先でも絶対に引き継がないといけないな」という気持ちがまずあり、それが私の中での基本方針になりました。
2つの区画はそれぞれがまったく違う雰囲気のオフィスだったので、この2つを繋げてまとめながら、どうしたらひとつのオフィスとして、ひとつのエネルギーを生み出す空間にできるか?が大きな課題でした。
――ひとつのエネルギーを作り出す具体的なアイデアとして、どんなことをご提案したんですか?
小島:一番大きなところで言うと、スペースの真ん中のあたりにある格子状の棚です。予算的に元の位置から動かすのはなかなか難しくて、そのままの位置にしようということに一度はなったのですが、「このままで本当にいいのか?」と思い始めて、途中でご相談し、大きく位置を変更することになりました。元の位置のままだと、どうしても空間が分断されてしまって、人の動きもなかなか回遊できない。それだと、旧オフィスで感じた活気が再現できないなと気づいたんです。
吉田:あるとき、打ち合わせでいらっしゃった小島さんが「ちょっとご相談があるんですが・・・」と切り出したので、内心「何事だ!?」とビビっていたのですが(笑)、その場でCADデータを開いて、画面を見せながら「こっちの方が良いんじゃないでしょうか?」と、丁寧に提案してくれました。変更するとなればもちろんコストも増えますし、スケジュールもギリギリのタイミングでの話だったので、正直「また変わるのか」という気持ちが全くなかったと言えば嘘ですが、小島さんの言っていることは正しいと思いましたし、ここは変更すべきだと私も判断してお願いすることにしました。結果、空間の抜けが出て、見通しも良く、ひとつのまとまり感があるオフィス空間を作ることが出来たように思います。
小島:そうですね。壁をぶち抜いた意味をちゃんと見出せた気がしますね。
あとは、ロッカーの配置もかなり工夫しています。「オフィスが広くなるとメンバー同士が交流しにくくなるかもしれない。ふらっと絡みに行きたいけど、急に話しかけるのもはばかられる。何かきっかけがほしい」というお話があって。それならロッカーをゾーンの中心部に持ってくることで「ロッカーへ行った”ついで”に立ち寄った感」を作り、コミュニケーションのきっかけが生まれるようにしました。

rayout・小林七海様(以下「小林」):このロッカーの配置、ホント絶妙です。ロッカーへ荷物を取りに行った”ついで”に寄り道したり、近くの人に「最近どう?」と気軽に話しかけることができるんですよね。通りがかりに誰が今何をしているかが見えるので、忙しそうかどうかも判断できますし、話しかけやすくなりました。前のオフィスは通路が狭くて、オンライン会議中の人の後ろを通るのも申し訳ない感じがあって、なかなか近づけなかったんです。
吉田:私もありがたく使わせていただいています。フロアを通り抜けながら自然に話しかけることができるので、最近は、自分が退勤するとき、ちょっと遠回りしていろんな人に話しかけながら帰るようにしています。
3. 余白から育つオフィスーー移転のタイミングがピークじゃなくていい

――フロア端のスペースは、今回はあえて作り込まずに残したそうですね。
小島:そうなんです。少し整えただけで、もともと置いてあった什器も残してある状態です。オフィスの空間デザインの仕事をしていると、どうしても移転のタイミングで完成度を最大にしようとしてしまいがちです。でも、せっかく作り込んだスペースがいつの間にか物置きになっていたり、想定していた使い方が実現できないケースをたくさん見てきました。本来、空間を育てていくのは、使う人たちであるべきなんですよね。そのための余白を残す方が健全なのでは?と、今回のプロジェクトで改めて感じました。特に、rayoutさんは主体性の高い方々がたくさんいらっしゃるので、移転時に100%完成していなくても、その余白を自分たちの色に染めたり、組織の成長に合わせて育てていってくれると思いました。
吉田:スペースを作り込む予算がたくさん用意できなかったというのもありますが、良い意味で”使い方の決まっていないスペース”があることで、いろんなトライ&エラーができるのがすごく良いなと思っています。今は、あのスペースで朝会をやってみています。旧オフィスではそれぞれ自席で立ち上がって朝礼をしていて、なんか昭和のサラリーマンドラマみたいな雰囲気でやっていたんですが、今はみんな同じ方向を向いてスクリーンを見ながらできています。それだけでもぜんぜん違います。

小林:旧オフィスは狭くてお昼などを食べる場所がなく、自席でこそこそ食べていたんですが、今はあのスペースで食べられるようになり、お昼時は賑やかです。新卒のメンバーなどが「今日アポ何件取れたよ」とか励まし合いながら食べていたり、コミュニケーションが生まれる空間ができたことが何よりありがたいです。
小島:ピザパーティーやボードゲームもやり始めたと聞きました。「こういう使い方があったんだ」というものを私たちも知ることができて嬉しいです。
――プロジェクト全体を振り返って、苦労したことや印象に残っていることはありますか。
小林: 私はオフィス移転を担当すること自体が初めてで、何もかも分からないまま走っていました。採用面接や人事業務、監査法人への対応など、他の業務も抱えながらでしたので、正直かなりギリギリでした。でも、小島さんや木幡さんが分からないことに都度答えてくださって、何度も助けていただいたおかげで走り切れました。みんなが楽しみにしてくれているのが伝わってきたので、その顔を見たくて頑張れた部分も大きいです。
木幡:居抜きの物件探しから内装まで、1年近く一緒に走ってきたプロジェクトでした。ご縁とタイミングが重なってようやく辿り着いた物件で、オフィスが出来上がったとき、この物件にして良かったな、と思いました。
吉田:本当にそう思います。これからこの場所を大事に育てていきたいと思います。またアイデアやご意見をぜひ聞かせていただきたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。

編集/ヒトカラメディア編集部
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