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2026/7/17

【仲介・内装デザイン事例】株式会社グリモア様
”悪だくみ”が加速する、グリモア社のコンセプトオフィス

スマートフォン向けソーシャルゲーム『リバースブルー×リバースエンド』などで知られる株式会社グリモアが、この度、本社オフィスを目黒へ移転しました。旧オフィスから約2.5倍の広さへと拡張した今回の移転を、ヒトカラメディアでは物件の選定から内装デザインまでサポートさせていただきました。プロジェクトマネージャーの佐々木、空間デザイナーの廣野も交え、拡大フェーズにおけるオフィス戦略と、新たな拠点に込めた思いをグリモア社の代表・神谷友輔様に伺いました。

1.グリモア社が出社スタイルを貫く理由

――本日はありがとうございます。まずは、今回のオフィス移転を決められた背景や経緯からお伺いできますでしょうか。

グリモア・神谷 友輔様(以下「神谷」):YES。説明しましょう。まず、我々グリモアは他社IP作品ではない自社オリジナル作品のゲームタイトルを、なるべく少数精鋭で開発し運営しようとして始まった会社です。「中二病を救う」をビジョンに、ソーシャルゲームと呼ばれる主にモバイル機器で遊ぶオンラインゲームを主軸に、いわゆる “中二病”ジャンルを、サービス終了させないように超長期で運営するスタイルを特徴としています。事実、当社の運営タイトルにはリリース10年を超えるものもあります。

そんな中、サービス終了の多いソーシャルゲーム業界においてユーザーの皆様にもっと安心して選んでもらうために、尖りに尖った作品性や中二病コンテンツに強みがあること、超長期運営を目指すスタイルであることをもっと多くの方々に知ってもらい、グリモアが「終わらないブランド」を持つ会社であるという認知を得たいと考えるようになりました。その解決方法のひとつがゲームタイトル数の増加です。増員と事業規模の拡大を目指してオフィス移転を決意しました。

実は、グリモアでは出社型の開発体制を敷いています。リモートワークは素晴らしい技術革新である一方、当社のような尖った作品制作においては出社型の方が適していると考えています。これは創業時から変わっていません。そのため、増員し、事業規模を拡大するなら面積を大きくすることは絶対条件だったのです。

――グリモアさんでは創業時から全員出社のスタイルを貫かれているのですね。ゲーム業界ではリモートで開発されている会社も多いイメージがありますが、そのあたりはいかがでしょうか。

 

神谷:Break。結論から言うと、我々はリモート開発が上手にできませんでした。コロナ禍の頃、当社もリモート開発体制に移行し「リモートでもゲームが作れる」という希望が見えていたのは事実です。ですが、出来上がったそれは”ゲーム”であり、”グリモアのゲーム”ではなかった。我々を選び、応援してくれるユーザーの皆様の期待に応えるには、出社スタイルでなければ実現できない要素が数多くあったのです。

当社の持ち味は尖った作品性―― それを我々は”悪ふざけ”と呼んでいます。この”悪ふざけ”は仕様書通りに作れば完成するものではありません。レシピ通りに作った料理は間違いのないおいしい料理ですが、誰かの心に残る唯一無二の一皿にはなりにくい、という話に似ていますね。この”悪ふざけ”というものは、関わる全員がその価値を信じ、スベったり嫌われる恐怖を乗り越える “挑戦心” がなければ得られません。また、当社の”悪ふざけ”は「ちょっと隣の人を笑かそう」という、刹那的で瞬発力的な “いたずら心” の積み重ねから生まれます。この挑戦心といたずら心が、ユーザーの皆様が期待する ”グリモア味” としてゲームに反映されているのです。

これがリモート環境だとかなり難しい。瞬間的に湧いたいたずら心も、リモートでやろうとするとハードルが高くなります。開発用のチャットツールであるSlackに書いても、その瞬間に見てもらえるわけではありませんし、Google MeetやZoomをわざわざ繋いで...という労力に見合いません。次第にあったはずの挑戦心も折れてしまいます。いかに”今すぐ”のスピード感で「ちょっとこれ見て」が気軽にできるかどうか。これが、グリモアのゲーム開発において非常に重要で、だからこそ、それらが促進されるオフィスデザインにしたかったのです。

2.コンセプトは「悪の組織」。ファンが喜び”悪だくみ”が生まれる場所

――今回のオフィスは、黒を基調としたコンセプチュアルな空間に驚きました。デザインについては、当初から具体的なイメージがあったのでしょうか。

神谷:EVIL。”悪”です。ふっふっふ。ですが、悪いことをするという意味ではなく、まるで”悪の組織”の拠点のようにしたかったのです。今まで借りていたオフィスは居抜き入居でオフィスデザインの選択肢が少なく、また入居当時は私たち自身の”悪ふざけ”に対する解像度も今ほど高くありませんでした。次第にさまざまな課題と解決方法、希望、要望が生まれてくる中で、最も我々の価値を最大化し加速していけるオフィスデザインにしたいという思いがありました。それらを統合したコンセプトが”悪の組織”なのです。

グリモアでは自分たちを”悪の組織”と呼びます。”悪の組織”はなぜだか魅力的で、憧れられる。たとえば、オフィスの写真をユーザーの皆様が見たときに「自分の好きな作品は、こんな場所で作られているんだ!」とつい自慢したくなるような憧れの場所にしたかったのです。加えて開発メンバーもまた悪の組織の一員である自覚を持つことができ、当然ながら働きやすく、そして”悪ふざけ”しやすい環境にもしたかった。その中央値を探っていった結果として、”悪の組織”をコンセプトに言語化し、オフィスデザインに落とし込むことにしたのです。

わかりやすい部分でいうと、配色です。私の中では、”悪の組織”は表向き清廉潔白なガワを被っていつつも、奥深い地下施設では黒い研究をしていて...というイメージがありました。そこで、全体のテーマカラーは黒に設定しつつも、すべてを黒にするのではなく、エントランスは清廉潔白の”白”として一見クリーンな企業の顔をし、中へ進むとグレーになり、開発メンバーが働くエリアは”黒”に染まっているようにしました。この色の白から黒へのグラデーションで、「裏では悪だくみをしているらしい」と噂されるような”悪の組織”というコンセプトを表現しようと思いました。

――この明確なコンセプトを、空間デザイナーとしてどのように空間に落とし込んでいったのでしょうか。大変だった部分などあれば教えてください。

 

ヒトカラメディア・廣野雄太(以下「廣野」):ひと言で黒と言っても、素材によって見え方がかなり違ってくるので、1つ1つのパーツや素材を決定するまでが大変でした。まずはCGで提案をさせていただき、最終的には、床や天井の素材サンプルを実際に神谷さんに見ていただきながら、細部まで作り上げていきました。

――会議室も、それぞれに世界観があって非常に印象的です。

 

神谷:Love。愛を込めました。これは表面的な話ではなく、我々のコンテンツ作りとは結論すれば愛を込める作業であるからです。登場キャラはもちろん、ゲームシステムから世界設定まで全て愛を込めて作ります。作り手が愛さないものをユーザーの皆様に愛してもらおうなんて虫の良い話はありません。会議室で生まれるアイデアもそのひとつです。
ロマンティックな言い方になりますが、会議室は愛を生み出す場所でもあるのです。愛が込められた会議室だからこそ作品愛が生みだせると考え、会議室の設計にはこだわりました。例をあげると、各会議室には、今までに我々が生み出してきたシリーズ作品の登場人物の名を付けています。他にも、壁の材質、書かれた文字のひとつひとつに至るまで、グリモアのコンテンツに対する愛情や情熱が表現されています。こういった愛あるこだわりが、その場を使用する開発メンバーに影響し、発する言葉や行動にも伝播し、コンテンツ愛やキャラクター愛が増幅していってほしいと考えています。

 

廣野:会議室のデザインについては、神谷さんから名称やキーワード、例えば一番大きい会議室は真っ黒な”鉄””黒く重厚”といったイメージをいただき、具体的な空間デザインに落とし込んでいきました。

ヒトカラメディア・佐々木 直人(以下「佐々木」):会議室もそうですが、このオフィスでは、あらゆるところに神谷さんが新オフィスのために書き下ろしたキャッチコピーやキーワード、メッセージがデザインされています。ひとつのオフィスでこれだけたくさんのカッティングシートを作成したのは初めてでした(笑)。これを読んで感じるだけでもすごく面白いオフィスです。

廣野:字間や配置にもかなりこだわりましたよね。1ミリ2ミリの調整をしながら神谷さんが書かれたテキストを読ませていただきましたが、何というか、意訳すればするほど深い意味がどんどん分かってきて面白かったです。

神谷:Appreciate。そこまで読みこんでいただけて恐れ入ります。パッと見では意味がわかりにくいものも、当社の美学や信念、あるいはコンテンツやキャラクターを知っていると納得できる仕掛けになっています。開発メンバーにとって、働きながら理解が深まっていくオフィスになってほしい、という狙いもあります。

 

――働き方の面で、新しいオフィスで実現したいと思っているのはどんなことですか?

 

神谷:PLOT ROOM。ずばり ”悪だくみ” ですね。出社型であるメリットを最大限に活用し、開発メンバー同士が思いついたことをすぐに相談したり会話できる環境として、コミュニケーションが取りやすい場所を用意しました。名前は「プロットルーム」と言います。和訳すると “悪だくみする部屋” です。密室で内緒の作戦や仕掛けを考える場所です。我々は”悪の組織”ですから、ここで ”悪だくみ” をどんどんやっていってほしいと願っています。

3.「ハンバーグとみそ汁」で考える、毎日来たくなるオフィス体験 

――ゲームというデジタルの空間と、オフィスというリアルの空間、それぞれのものづくりを経験されて、面白さや難しさを感じた部分はありましたか?

 

神谷:Umm。一番難しくて、でも、一番面白かったのはユーザーの皆様との関わり方の違いです。ゲームの場合、プレイヤーは能動的に遊びに来てくれます。しかし、オフィスの場合のユーザー、つまり従業員は、強制的にオフィスに来なければいけない側面があります。ちょっと体調が悪い日、モチベーションが上がらない日、雨が降って靴がぐしょぐしょの日、それぞれに事情やコンディションがあって、きっと「オフィスへ行きたくないな」と思う瞬間があると思うのですね。そんな日でもオフィスに来たくなるような仕掛けが必要です。ゲームにもログインしてもらうための仕掛けや仕組みはたくさんある点は似ているのですが、「今日は出社しなくていいや」が容易にできない点がゲーム空間とは異なる部分ですね。

当社ではゲーム開発においてよく「ハンバーグとみそ汁理論」を用います。ハンバーグは一度食べるとすごく美味しいけれど、毎日だとしんどい。みそ汁はハンバーグほどのインパクトはないけれど、毎日でも飽きない。オフィス空間も同じことが言えます。毎日利用するスペースにはみそ汁のような心地よさが必要でありながら、エントランスのように印象を決定づける場所にはハンバーグのようなインパクトが必要。そのバランスを取るのが非常に難しかったですね。

廣野:毎日使うスペースが派手すぎると、最初は感動してもだんだん疲れてしまいますからね。日常と非日常のさじ加減は、私たちデザイナーにとっても非常に重要なポイントでした。

――今回の移転には、採用を強化したいという目的もあったと伺いました。

 

神谷:YES!YES!YES!! 冒頭でお話したとおり、開発タイトルの増加や事業拡大のための増員をするにあたり、このオフィスは重要な要素になると考えています。昨今のゲーム業界は統合や再編、開発の大規模化、そしてAI技術の台頭などにより開発のあり方が大きく変わってきています。ゲーム業界に限りませんが、昨日まで重宝された技術価値が暴落し、明日には意外な能力が重要になる、といった日々激しい変化と向き合っています。このようなエキサイティングな環境では、いかに柔軟に、変化を楽しみながら、我々が掲げるビジョンを実現できるかが鍵になります。そこで重要になるのが、私たちのビジョンや考え、そこからブレイクダウンする行動指針や美学を候補者の方に肌で感じてもらい、知ってもらうことです。そういった意味で、オフィスは候補者の方と当社の共鳴を測る大事な装置として位置づけています。

 

――採用候補者ともオフィスを通してコミュニケーションを取りたい、ということですね。

 

神谷:MATCH!! まさに相性。私たちが何をかっこいいと思い、何を大切にしているかが一目でわかるようなオフィスにしたかったのです。「この会社はキャラクターやコンテンツを大事にしているんだな」と感じてほしいですし、それが表面的なものではなく本物である深さも伝わってほしいのです。このこだわり抜いたオフィスを通して文化的なマッチ度を確認し合い、お互いにとって良い採用につなげたいと考えています。

 

――いよいよ新オフィスでの稼働が始まりますが、従業員の皆さんには、この場所をどのように使ってほしいですか?

 

神谷:New Page!まずは「プロットルーム」を存分に活用してほしいです。そして、”悪だくみ” を通じて各コンテンツの新しい1ページを綴ってほしいと願っています。グリモアという社名は、フランス語の魔導書に由来しています。このオフィスで積み重ねた ”悪ふざけ” という魔法がグリモアという魔導書の新たな1行、1ページになり、ユーザーの皆様の中二病を救うことができればと思っています。

その意味で、このオフィスは魔導書であり魔法の一部です。ゲーム開発を通じて、自分たちがその一部を担っているのだということを実感し、オフィスのさまざまな機能をガンガン使い倒しながら、もっともっと面白い世界を生み出していってくれたならこれ以上ない喜びです。


編集/ヒトカラメディア編集部