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2025/4/7

クロスセクターで社会課題解決を目指す拠点「Glass Rock ~Social Action Community〜」が虎ノ門ヒルズに開業。官・企業・公共・市民等が領域を越えて協力する共創プラットフォームを目指す

官民連携による都市再生のモデル事業として2014年に誕生した虎ノ門ヒルズ。その後、この場所にはビジネスタワーをはじめ、続々と強いタワーが竣工し、2020年には新駅・虎ノ門ヒルズ駅も開業しました。そして、この4月9日、エリアのほぼ中央で開業するのが、虎ノ門ヒルズの最後のピースである「グラスロック」。ヒトカラメディアが運営とコミュニティ醸成支援を担う会員制施設「Glass Rock ~Social Action Community〜」は、その地下1階と地上4階に開設されます。森ビルがこれまで100年単位で取り組んできた街づくりにおいて、この拠点はどのような背景から計画され、生まれたのでしょうか。開業準備に追われる現場からこの拠点のリーダーである森ビル株式会社・大橋 康太様と、ヒトカラメディアのコミュニティサクセスチームのマネージャー・影山の対談をお届けします。

1.官・民・NPO/NGO、個人の”連携”と”協働”による共創プラットフォーム

━━はじめに、虎ノ門ヒルズにおける「グラスロック」について教えてください。どんな役割や目的を担っているのでしょうか。

森ビル・大橋 康太 様(以下「大橋」):「グラスロック」の位置するここ、虎ノ門ヒルズの始まりは2014年に遡ります。隣には霞が関があり、官公庁や行政とも連携しやすいこの場所に、虎ノ門ヒルズは「グローバルビジネスセンター」として計画され、最初に「森タワー」が竣工しました。その後、ビジネスタワーやステーションタワーなどが竣工し、最後の1ピースとしてこの春開業するのがここ「グラスロック」になります。会員制施設「Glass Rock ~Social Action Community〜(※以下「Glass Rock」)」は「グラスロック」の中、地下1階と地上4階に森ビルが開業する会員制の拠点で、クロスセクターで社会課題解決に取り組むための拠点となります。
近年、気候変動、貧困・格差、ジェンダー平等など、単独の組織では解決できない社会課題が増加していますが、この「Glass Rock」ではそういった課題に向き合う企業・個人だけでなく、行政機関やNPO、学生も参加することができ、具体的には、ワークスペース、シェアキッチン、ギャラリーなどの利用のほか、メンバー限定のイベントやワークショップに参加することが出来ます。

━━「Glass Rock」を、なぜ、社会課題解決に取り組む個人・企業・NPO等に特化した拠点にされたのでしょうか?

大橋: 森ビルはこれまで、日本最大級のイノベーションコミュニティを有する拠点(=「CIC TOKYO」)を誘致したり、大企業の新規事業創出のための拠点(=「ARCH Toranomon Hills」)などを通して、新しい産業や事業の創出を後押ししてきました。一方で、イノベーションの源になり、切っても切り離せない関係にある社会課題は幅広く、一企業だけでの解決は難しいという現状も感じていました。改めて社会課題の領域に目を向けてみた時、現場の最前線に立つNPO・NGO、本業とは別に取り組まれている個人や学生がたくさんいることに気付いたんです。
そこで、これまで以上に多様なプレイヤーが交わる場所があれば、既存の「ARCH Toranomon Hills」 や「CIC TOKYO」なども巻き込みながら社会的価値・経済的価値の両立がベースとなる新たなイノベーションを起こすことができる。各々の業界のことだけでなく「持続可能な未来をともに考えようよ」という役割を持つ拠点が必要だと考えました。
その際にキーワードになるのが”100年先”を見据える視点です。100年って、自分の欲や利害が外れ、自己の範囲を超えた活動をどうするか考えたり、広い視野を持ったりするために必要な数字だと言われているんですね。これが50年後だと、例えば「2歳の娘は老後だよな・・・」とか自分事になってしまいますが・・・。
おそらく、100年前の人たちは100年後の今がこうなるなんて想像していなかったと思うし、僕たちも100年後のことなんてAIに聞いても明確には分かりません。ただ、100年前に築かれたものが今、花開いている側面もあるように、現時点の行動が未来に影響を与えることは確かだと。
そうして魚の目になって未来を見ると”連携”や”共創”はやっぱり大前提になると思ったんです。というのも、どの社会課題も社会システムとの関係は根深く、一人や一企業/組織じゃ解決できない課題ばかりです。もちろん今も、企業や個人は多くの人と連携しながら解決の糸口を見つけていこうというマインドを持ってはいますが、もっとそれを加速させるべく、異なる立場の人たちが足りない部分を補い合う風土の根付く、開けたコミュニティを作りたいと思いました。

2.ヒトカラメディアとの協働へ

━━「Glass Rock」の運営は、まさに”連携”と”協働”の架け橋を担う役割があると思いますが、ヒトカラメディアはいつからこの拠点に関わっているのでしょうか?

ヒトカラメディア・影山 直毅(以下「影山」):正式にジョインしたのは2023年の夏頃でした。最初にお聞きした時は今のように明確なコンセプトもなかったので、正直なところ、葛藤から始まりました(笑)。

大橋:構想初期ではまだ「Social Action Community」というタグラインや「社会課題解決」といった言葉もなく、「social good」という言い方でしたし、今ほどの解像度もなかったので、ヒトカラさんにご相談した時には随分戸惑わせたのでは?と思います(笑)。

影山:僕はさまざまな施設のコミュニティマネージャーが交流する場を個人的に企画・開催しているのですが、そこで森ビルさんの他の拠点の方々とお会いする機会があったんですね。お話を聞く度、みなさん口を揃えて「拠点がどう街ににじみ出していくか」について話されていて、僕はめちゃめちゃ痺れたんです。拠点のなかをどう盛り上げるかはよくフォーカスされるけれど、一言目から”街”というキーワードが出てくるみなさんの姿勢や思いに共鳴していたこともあり、ご一緒できてすごく嬉しかったですね。

大橋:自分たちこそが最も街について考えているし、誰よりも他施設と円滑に連携が取れるという自負があるからこそ、拠点の企画から運営まで自前でやることにこだわってきました。しかし、「Grass Rock」はもちろん森ビルも運営に参画しますが、日々の運営サービスの企画や顧客コミュニケーションの大半をヒトカラメディアさんへお願いすることになりました。
最初こそ不安もありましたが、影山さんはじめメンバーの方々にお会いした時に「なるほど」と思いましたね。コミュニティマネージャーの中には、自らが社会課題に対してアクションを起こす起業家としての顔を持っている方もいて、多様性あふれる働き方をしているんです。僕はヒトカラさんのそういう人材を集める能力がすごいと思っていて、ひそかに”タレントハント力”と呼んでいますが、この施設のために森ビルでは見つからないであろう人材をハントしてくれました。

━━今回ヒトカラメディアではどんな工夫をしているのでしょうか?

影山:今回、ヒトカラメディアとしては、運営やコミュニティマネージャーの経験があり、かつ社会課題の領域で自分でも実践的に携わっている現役プレイヤー、過去にスタートアップ支援をしていた人など、他のコミュニティとのつながりがあり専門性の高い精鋭を集めています。コミュニティマネージャーそれぞれが持つ強みやつながりを、この拠点とも掛け合わせることができればと思っています。

大橋:ヒトカラさんは、ウェブサイト等でも書かれている「熱源を、ともにつくる」という言葉をまさに体現されているなと思います。僕は常々、コミュニティって、単に場があるだけ、人が集まっただけでそう呼べるわけでもないと感じていて。場に集まる人やコトがぐるぐると動き、摩擦が起きてはじめてエネルギーが生まれ、コミュニティとしての価値が創造されるものだと思っています。ここの価値観のベースが同じだったので、ご一緒できると確信したんです。

影山:ありがとうございます。僕らも、森ビルさんの「自分たちも加わって一緒にやっていくぞ」というスタンスが嬉しいです。実際、お互いにどこまでどう入ろうかと読み合う難しさもありつつも、同じ熱量で共創していると強く感じているところです。

3.発信を通じて広がる理解と共感

━━拠点内でのサービスや支援については、現状どのような構想があるのでしょうか?

大橋:”実践と学びを重ねる共創プラットフォーム”を作るべく、現在は6名の講師と約30団体の共創パートナーに参画いただくことになっています。みなさん社会課題の最前線で活躍されている講師や団体ばかりなので、最前線の情報やデスクトップリサーチだけでは分からない現場の手触り感など、メンバーに対して価値提供できるものが大きいと期待しています。
また、お互いの「ここが知りたかった」を補い合える場になるよう、共創パートナーは幅広い業種・分野をカバーし、ミクロとマクロ、両方の視点から社会課題にアプローチできるバランスも考えています。たとえば、事業拡大に苦手意識を持っているNPOにはコンサルティングができる人を。社会構造が影響をしている分野には、政策提言ができる人を連携できるようサポートしたり・・・。
とはいえ「さあ共創しましょう!」となっても、いきなりは難しいと思うんです。そこで、学びの場として4ヶ月のオリジナルプログラムを用意したり、実践の場としてワークショップやイベントを開催したりと、コミュニティが醸成できる仕掛けも考えています。さらにはメンバーの取り組みを地下一階のギャラリー展示スペースやラジオブースからポッドキャストで配信するなど、外へ向けた発信にも力を入れていく予定です。

▲森ビル株式会社 「Glass Rock」リーダー 大橋 康太 様(左)

━━コトを起こすだけでなく、アウトプットする場があるのも魅力ですね。

大橋:このようにコミュニティが開かれていることって、実は会員制の拠点としてはめずらしいんです。でも、社会課題を解決しようと言っているのに、内に閉じているだけでは誰も巻き込めないじゃないですか。コミュニティの内外を問わず「これをやりたい」「でもこれが叶わない」と発信することで「私は○○ができる」という人が集まるきっかけにもなる。活動が知られると、その企業の価値の向上やサスティナビリティにも繋がっていきますし、発信が得意ではないNPOや個人の方々にも、虎ノ門ヒルズという街への人々の信頼や愛着が下支えになり、陰に日向に応援者を増やすお手伝いができると思います。
ここで未来につながるロールモデルをひとつでも多く作りつつ「Glass Rock」が継続して活動を盛り上げていくという意味でも発信には力を入れていきたいですね。

影山:そうですね。発信するだけでなく、事業共創支援プログラムや、オープンイノベーションプログラムのような事もやっていきたいね、という話も運営メンバーとはしています。社会課題解決をテーマとしたアワードを我々がやってみるとか、そのピッチイベントを同じ虎ノ門ヒルズにあるイベントスペース「TOKYO NODE」で行うとか・・・。これも個人的な野望ですが(笑)。

大橋: 実際のところ、ヒトカラさんのコミュマネの方々が社会課題の領域に熱量がある人ばかりなので、積極的に仕掛けを提案してくださっていて。僕たちはそれをオーナーとしての責任を持ちながら街との間の架け橋となりドライブさせられるようにサポートしていきたいと思っています。

4.共創の土壌を耕して、そこから生まれていくコトの総量を増やす

大橋:森ビル は、よく”磁力”と言っていますが、国際都市競争が激化する中、都市に様々な人やモノ、情報、資金などをひきつける力が求められていると思います。
東京の”磁力”を高め、東京で生み出したモデルをローカライズして地方に還元することで、日本を牽引する流れを作っていきたいと考えています。
現状、日本の中で地域格差があることは課題意識としてありますが、東京が成長を止める理由にはならないと思います。むしろ東京が最先端を牽引しないと日本全体が沈んでしまう危機感もあるからこそ、東京で試した成果を地方に還元する流れを作り、東京の磁力を増したいと思っています。

━━発信拠点として重視される理由も、そこに繋がるのですね。

大橋:そうですね。発信をすることで東京に来る価値を見出してもらえるし、目先の利益という近視眼的なものではなく、理解と共感を広げて関係人口を増やしていく意味でも、社会的信用の強化という意味でも、想いを伝えることは大事だと思っています。

影山:先程の”磁力”と近しい言葉で、僕らも場においての”求心力”と”遠心力”という、ふたつの力の両立を大事にしています。人が場に向かっていく求心力には”ここだから”という魅力があり、そこに出会ったことで熱源が生まれ、新たなコトが波及していく。
最初はこちら側が発起人となって人を集め、コトを起こして情報を発信していきますが、次のサイクルでは他動詞から自動詞に変わり、自然と人が集まってコトが起こり、参加者自ら発信していくようになる。できれば早い段階でそんな流れを作れるよう仕掛けていきたいですね。自分で今めちゃめちゃハードルを上げてしまいましたが(笑)。

━━コミュニティマネージャーの腕の見せどころですね。

大橋:でも本当に、ヒトカラさんには人の熱量を上げていくところに期待をしています。コミュニティが大きくなり、集まる人が多様になればなるほど、個人が持つ背景もさまざまで、自分事として取り組みたくても出来ない、もしくはハードルのある局面が出てくる。そこの熱量を上げるってすごく難しいと思うので。

影山:難しいですよね。でも、そこは僕らがやるところだしやっていきたいところです。「共創の土壌を耕して、そこから生まれていくコトの総量を増やす」ことをチームミッションに掲げている僕らにとって、関わる人同士が応援し合える関係性をつくることは欠かせないと思っているので。
いかにお互いの活動の背景にある想いに共感しあい、応援しあえるかが共創において重要になってくるので、まずは僕たちコミュマネが第一の共感者、応援者として会員さんに関わっていき、会員同士、そして「Glass Rock ~Social Action Community〜」に関わる人とも応援し合える関係性を築くハブになる。それは初日からいきなり出来るものではないかもしれませんが、少しずつでも積み上げていきたいと思っています。


 取材・文/廣田 彩乃