PROJECT
2022/4/20
【3社インタビュー】すこやかに働くワークプレイス「Kant.」が実現する働き方とは?
2022年4月、六本木駅から徒歩1分の場所に、“すこやかに働く”をコンセプトにした複合施設「Kant.」がオープンします。
1Fは、街に開かれたカフェ&ミュージックバーラウンジ「Common」。 2Fと3Fは、個人単位で利用できるワークラウンジ「Kant. WORKLOUNGE」。 4Fと5Fは、企業向けシェアオフィス「Kant. co-office」。 7Fは、セットアップオフィスという構成。
ヒトカラメディアは、都市型ホテルなどを展開する株式会社Noumと、若者向けのローカルラウンジなどを手掛ける株式会社The Youthと共に、「Kant.」を企画・運営することになりました。この施設のキーワードとなる“すこやかに働く”の意味とは? 3社の代表に話を聞きました。
ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー
「今、この街にいる」と感じられる、有機的なワークスペース。

▲株式会社The Youth 佐藤 岳歩 様(左)、株式会社Noum 宮嶌 智子 様(右)
ー「Kant.」の施設コンセプトは、どのような背景で生まれたのでしょうか?
高井淳一郎(以下、高井):「Kant.」をずばり一言で表せるといいのですが、それが難しいんですよね。関係者同士では意思疎通できている状態なんですけど(笑)。
“すこやかに働く”というキーワードを、カフェ&バー、ワークラウンジ、オフィスのそれぞれの目線で形にした複合施設です。
宮嶌智子(以下、宮嶌):このプロジェクトで集った3社はそれぞれ強みがあります。
「都市に野を生む」をコンセプトにホテルをつくるNoum、カフェ・フード・バーを備えたローカルラウンジを手掛けるThe Youth、オフィスなどの「働く」の領域で事業を展開されているヒトカラメディア。
3社のメンバーでたくさん議論して、「コロナ渦を経て、都市の脆さが露わになった今だからこそ、あえて都市の可能性を照らし、これから人々が都市でどう働くか、どう生きていくかを見つけていくことが大切だよね」という話になったんです。
▲施設紹介フライヤーや公式HPからは、Kant.が目指す「すこやかに働く」というキーワードとその背景を読み取れる。| 公式HP
宮嶌:いろいろな言葉を集めて考えて、最後の最後で「これだ!」と意見が一致したのが“すこやかに働く”という言葉でした。
私も20代の頃はがむしゃらに働いてきたし、それが今に繋がっている実感はありますが、顔見知りの人たちと挨拶を交わしたり、美味しい食事やコーヒーを味わったりしながら働ける空間を生み出せたらいいなと思ったんです。
高井:“すこやかに働く”というキーワードを軸にして、カフェ&バー、ワークラウンジ、オフィスといった空間が、それぞれの目線でコンセプトを形にしている。
それが「Kant.」という複合施設なんですね。
ー3社で一棟のビルを企画・運営するプロジェクトって、めずらしいですよね。
宮嶌:これからの働き方を示せるような場所を企画してほしい。このような話を、オーナーである東京建物さんと、鹿島建設さんからお話をいただいたのがきっかけで、このプロジェクトがスタートしています。各分野の強みを持つみなさんにパートナーになっていただきました。
「Kant.」の特徴は、ビル一棟をみんなで作り上げているところです。
一般的なオフィスはフロアごとに完結することに対して、「Kant.」では、カフェ&バー、ワークラウンジ、オフィスの相互関係を考えながらみんなで作り上げています。どんな空間が生まれるのか楽しみです。
▲The Youth、Noum、ヒトカラメディアが運営を担うKant.のフロア構成。
佐藤岳歩(以下、佐藤):周辺の地域も含めてワークプレイスと捉えるような場所になるだろうと考えています。
都心のビルで働いていると、人との出会いや関わりって生まれにくいこともあるかと思います。Kant. では、1Fのカフェ&ミュージックバーラウンジ「Common」が街に開かれた場所なので、上のフロアで働く人が仕事の合間や仕事終わりに地域の人と話をしているような景色もつくりたいと考えています。
ここで思いがけない出来事や交流が生まれて、すこやかさに繋がったら嬉しいですね。
高井:オフィスのなかで過ごしていると「自分が今どの街にいるのか」ということを意識しづらくなりますからね。
顔なじみのカフェがあって、コーヒーが出てくるまでにちょっとした会話ができるだけでも、街やそこに居る人たちに対して意識が向き、愛着が湧くと思うんです。
特に、1Fの「Common」とワークラウンジや各オフィスフロアの“縦の繋がり”はポイントになりそうだなと考えています。
佐藤:確かに、オフィス内に余白があることで、普通のオフィスでは味わえない空気や会話が生まれそうですよね。
ーすこやか以外にも、候補になった言葉はあったのでしょうか?
宮嶌:いくつかありましたね。たとえば、有機的とか。
例えば、朝オフィスに出社して、機械に社員証をピッとかざして、誰とも会話せずにデスクに座るのってちょっと味気ないじゃないですか。
効率的で便利なスタイルを否定するわけじゃないけど、私たちは「Kant.」を有機的なワークプレイスにしたいと思ったんです。
のびやかに歌う「Kant.」、余白を耕す「Common」
ー「Kant.」という施設名はどうやって生まれたんですか?
宮嶌:これまで、「Hotel Noum」をはじめ「toco.」や「Nui.」などのホテル名を考えてきましたが、名付けのコツは少人数でたくさん候補を出すことかもしれません。
「Kant.」は2人で名付けたのですが、最初に「風通しがいい」とか「のびやか」とか、施設に当てはまりそうなキーワードを並べました。
私は学生時代に吹奏楽をやっていたので、途中でふと音楽記号が思い浮かんだんです。

宮嶌:音楽記号について調べるうちに、「歌うように」「表情豊かに」という意味を持つ発想記号の「カンタービレ」が目に留まりました。
「cant.」という表記がしっくりきたし、響きもよかったので、オリジナリティを出すために「c」を「k」に変えて「Kant.」に決めました。
ー“すこやかに働く”や“カンタービレ”を形にするために、どのような工夫をされていますか?
宮嶌:建築デザインの面では、2-3Fの「Kant. WORK LOUNGE」は風通しのいい空間にしたかったので、抜け感を大切にしました。


▲2Fはフリーアドレス(ドロップイン可)、3Fは固定デスク&ブース。
極端に言えば、すべての席をパーテーションで区切ることもできるし、プライベートな空間を望まれる方もいらっしゃるかもしれませんが、このワークラウンジはオープンな空間がマッチすると思いました。
空間の間仕切りに、木の温もりを感じられる木製ポールを繋げた大きな家具をしつらえることで、緩やかにゾーニングしました。
また、ワークラウンジにはグリーンをたっぷり配置します。パソコンから少し目を上げたときに元気な植物が見られると、心が和むのではと思います。
ーカンタービレといえば音楽ですよね。1Fのカフェ&ミュージックバー「Common」では、音響についてなにか工夫はされるのでしょうか?
佐藤:六本木にはクラブやライブをはじめとする音楽の文化が深く根づいていますが、「Common」はあえてジャンルを狭めずに、ディスコやR&B、ヒップホップやジャズなど、さまざまな音楽を楽しめる場にしたいと考えています。
街の文脈を汲み取りながらも、この場所で新たな音楽との出会いを生み出したいですね。

▲街にひらかれたカフェ&ミュージックバーラウンジ「Common」
ー「Common」という名前の由来は?
佐藤:「Common」は、“食と音楽とアート”がキーです。
3つのコンテンツを1つの場で成立させるのって、実はハードルが高くて。いろんな人が混ざり合って、モノやコトが起こり続けるためには、余白が必要だと考えました。
そこで、人々がいろんな動きをしても許される、街の広場のような空間にするために「Common」と名付けました。「コモンスペース」や「コモンルーム」のように、自由に過ごせる場所を目指しています。
また、「Common」という言葉の語源にもあるように、街の人々が共同で管理・運営をする土地や農地のような場になることを目指し、スタッフも訪れた人もともに「場を耕していく」というイメージがとてもしっくりきました。
これから時間をかけて、みんなでこの場所をつくりあげていきたいと考えています。

高井:「Common」では飲食だけにとどまらず、いろんなアクションが生まれそうですよね。
佐藤:若手アーティストの作品を展示したり、週4日くらいの頻度でDJイベントを実施したりする予定です。
そしてエントランス付近では、定期的に書店や花屋などのポップアップショップを開きたいと考えています。
訪れる理由が増えれば増えるほど多様な人々が集まりますし、コミュニケーションも生まれやすいんじゃないかなと思います。
人が集まり混ざる場所、「オフィスに行きたい」が生み出す価値
ー「Kant. co-office」はどんなワークスペースになりますか?
高井:ほっと一息つける場所や人との繋がり。
これを、ヒトカラメディアでは暫定的に「ビル入居UX」と呼んでいるんです。ビル周辺環境やビル内外で生まれているコミュニティって、オフィス移転の意思決定をするための情報として列挙しづらい要素です。なぜならば、「企業にとって本当に価値があるのか」と聞かれると担保しづらいからです。
ただ、そうした体験は「企業にとって本当に価値がない」とも言い切れないですよね。もしかしたら、人との出会いによってビジネスが加速するかもしれないし、ワーカーの満足度が高まることで、結果的にビジネスに還元されるかもしれない。
「Kant. co-office」では入居した企業が、ビル入居UXの向上を通して、プラスになったな、という体験をしてもらえるといいなと考えています。


▲4-5Fは入居企業、ワーカー同士のコミュニティを一緒に育むシェアオフィス「Kant. co-office」
宮嶌:そのためにも、全部のフロアを上手くかき混ぜたいですね。
忙しく働いていると、昼食の時間が取れなくて、「気付いたらもう15時だ」みたいなことってよくあるじゃないですか。そして、お店に入ってもランチが終わっていて、軽食やデザートしか食べられないとか。ショックですよね。
「Common」は、忙しく働く人の味方でもありたいので、いつでも美味しい食事を食べられる場所にしたいなと考えています。ここでランチミーティングをしていただいてもいいですし。
あとはカフェのスタッフともコミュニケーションを取れるような、あたたかな空気感をつくりたいです。
毎日おはようと挨拶をするなど些細なことですが、自分を認識してくれる人がワークプレイスにいることを、心地よいと思っていただけるように。
高井:ワーカーが行きたくなる、集まりたくなるような場所って、これからのオフィスのキーワードになる気がします。リモートワークで仕事ができると、「なぜ出社するのか?」という疑問が浮かびやすいじゃないですか。
でも、私も会社を経営しているからわかるのですが、会社側には出社することで社員同士がもっとコミュニケーションを円滑にとってほしいという気持ちも同時にあるはずなんですよね。

ー企業側で「集まる理由」をつくるのがむずかしくても、オフィスに「行きたい理由」があるなら、入居体験のプラスになりますね。
宮嶌:そうですね。自宅で作業もできますけど、メリハリや発見がなくなっていきますし、こういう地味なネガティブの積み重ねって、じわじわ効いてきます。
スタッフたちと一緒に「行きたい」と感じていただけるような場所にしたいです。
六本木という街の面白さ、新たな側面に気づいてもらいたい。
ー「Kant.」がオープンすることで、六本木の街にどのような変化が生まれそうでしょうか?
宮嶌:正直なところ、街を盛り上げたいとか、何かを変えたいとは思っていないんです。
これまで手掛けてきたHotel Noumなどの宿泊施設も、「課題を解決しよう」ではなくて、「いいものをつくろう」から始まっているんですよね。
もちろん、街のみなさまに“「Kant.」が六本木にできてよかった”と感じていただけるような空間にするということは、すごく意識しています。
来てよかった!という感動を持ち帰ってほしいなと。

宮嶌:私が主に担当している「Kant. WORK LOUNGE」の話をすると、ドロップイン(一時利用)ができます。
これをうまく活用していただいて、自転車で来れるような距離にお住まいの方が通ってくれると嬉しいですね。そういうワークスタイルこそが“すこやか”なんじゃないかなと。
美味しいコーヒーと食事があって、気軽に話せるスタッフがいるような、生活圏内のワークスペース。これって地方だけじゃなくて、六本木でも実現できると思うんです。
佐藤:僕たちも、宮嶌さんたちと同じく「街をこうしたい」とまでは考えていません。
でも、いまの六本木って「若い人が行く理由がない街」というイメージがあって。訪れるとしても、美術館や商業施設など、特定の場所に足を運ぶ感じでしょうか。「街に行く」とはちょっと違うんですよね。
高井:たしかに今、六本木というワードを聞いても、あまり「街歩き」と言う言葉と結びつかないですよね。
佐藤:「Common」は、年齢や性別を問わずいろんな人が集い交わる場所なので、街をたのしみながら歩くルートの一端を担えたら嬉しいですね。
そして、この街に親しみのない若い人たちが「Common」を訪れる中で、六本木という街を知り、楽しむことができたらいいなと思います。
宮嶌:大人の街というイメージがある六本木のなかでも、「Kant.」が位置するエリアは緑が多いので、想像以上に過ごしやすいんですよね。
たとえば、ご近所の東京ミッドタウンに隣接している檜町公園とか。小さなお子様が多くて、のびのびとした雰囲気に包まれているので、こういう新たな一面も発見してもらえたらいいですね。

▲HPには木の温もりと野山を思わせる豊かなグリーンのイメージがあしらわれている。
ステークホルダーの関係性のなかで、きっかけを投げかけていきたい
ーヒトカラメディアは「Kant.」のなかでどのような役割を担っていきたいですか?
高井:ヒトカラメディアも、いつもステークホルダーとのご縁で、特定の地域や街と出会い、様々なプロジェクトに携わらせていただいてきました。
Kant.では、オーナーの東京建物さん、鹿島建設さん、ともに運営を行っていくNoumさん、The Youthさん、そして利用いただく企業やワーカーの人たち、街の人たち、と多くのステークホルダーがいらっしゃいます。
ヒトカラメディアでは、いつも「伴走者」という表現を使うのですが、関係者の方々たち自身がイキイキとできる、オモシロいと感じられるよう、この多くの方々との関係性のなかで、「Kant.」自身をより面白い場所にする。
そして「Kant.」が起点となって関係者にどんなことを起こせるのか、きっかけを投げかけていきたいですね。

取材協力/株式会社Noum様、株式会社The Youth様
取材場所/CITAN Hostel
取材・文/馬場澄礼
編集/ヒトカラメディア編集部
ヒトカラメディア
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