オフィス市場現場をいち早くリポートする「オフィス移転 仲介フロント座談会」。 記念すべき第一回は、年度の締めくくりフェーズにも差し掛かっていることもあり。「2020年度の振り返り」をテーマに仲介フロントメンバーに自由に話しあってもらいました。 リアルな現場な声を前編/後編に分けてお送りします。なかには、「仲介マンの使い方」や「物件交渉の裏側」など、表に出づらい情報も紛れているかも。
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プロジェクトメンバー
「貸手優位市場から借手優位市場になりかかっている」

▲ オンラインで実施したZOOM座談会の図
― さっそくですが、ちなみにどうですか?コロナが2020年度の1番業界に影響を与えているものだとは思うんですけど、それを受けて市場ってどう変わりました?
木幡:ひとことで言うと貸手優位市場から借手優位市場になりかかっているな、っていう感じがしてる。今までは、条件交渉ができる土俵にあがることも難易度が高くて、まず土俵にあがるためにどうしようという状況が多かった。だけど今は、そんなスタンスだったのが逆転して、とりあえず条件はこれだけど、それより下の予算の人でもとりあえず連れてきてください、お願いしますみたいな状況が生まれていますね。少なくとも、自分が担当している80坪以上のレンジでは、この状況を体感してる。
上岡:80坪以下のレンジでも同じ状況を感じていますね。思い返せば、2019年までがバブル的な感じで異常だったとも言えるかも。去年から空いている物件を今一度確認すると、家賃が1・2割家賃が下がってたりとかも実際にある。
― 確認ですが、コロナがくるまでは逆に、めちゃめちゃ貸手優位市場だった。それが正常に戻りつつある、っていうのが今の状況でしょうか?
野田:うーん。正常って状態は、なかなか定義がしづらいですね。
木幡:具体的に言うと、オーナーさんとキャッチボールする機会が増えたんだよね。仲介としてテナントさんの代理というポジションで、オーナーさんと条件の話し合いがしやすくなった感じかな。
野田:ひとつ参考になる資料がありまして……。

▲ 神宮前エリアの空き物件マップ(2019年10月/2020年10月)作成:野田
野田:これは、2019年10月に神宮前のオフィスをプランニングした時にまとめたデータです。神宮前周辺エリアで40-60坪の空き物件をまとめたのですが、3か月前に同じエリア、同じ条件で集計すると、かなり状況に変化が起きてたんです。パッと見でもわかるようにたった1年で空き物件が倍ぐらい増えたんですよ。ちなみにピンの色は単価の違いです。
― ものすごいですね。去年は渋谷に空き物件はほとんどないって、よく耳にしていたのに。
上岡:今だと、渋谷でも物件を出せますね、普通に。
野田:そうです。コロナ以前は渋谷欲しい50坪って言われたら、ほぼほぼなかったんですけど、今は渋谷50坪欲しいって言うとだせる。実際の事例でいうと、デベロッパー物件でも「居抜でもいい、なんなら坪単価もディスカウントするから、ぜひうちに来てくれ」みたいな案件まで出てきている、全部が全部ではなく稀ですけど。
― となると、じゃあ今こそ渋谷が狙い目!って感じになるんでしょうか?
木幡:いや、そう単純な話にはならないのがリアルな話なんですよ。
「渋谷で50坪探して、とだけ仲介に伝えるのはけっこう機会損失生むんじゃないかな」
上岡:前提として、オフィスに対して何を求めているのか、が以前よりも重要になってきましたね。例えば、ここに腰を据えて移転したいのか、一時的なのか、など。それによっても変わってくるので一概には言えないですけど。
木幡:あと、渋谷も然ることながら、他のエリアも総じて賃料が下がっている状況なんだよね、実は。こういう状況があるからか、「どのエリアがマスト」っていう話をされなくなったなぁ、コロナ以降は。


▲ 首都圏のオフィス賃料マップ(2020年7月/2021年1月)作成:木幡 Yahoo!ニュースでも取り上げられました
上岡:そうですよね。わかります。コロナ前って週5出社が前提だったじゃないですか。コロナ後って週5出社の前提が必ずしも当たり前ではなくなってきたので、エリアのプラオリティは下がってるなってすごい思います。渋谷で坪2万円出すんだったら神田で坪1.5万円で借りたいみたいな。
野田:エリアより賃料のほうが優先度が高くなってるんですかね?
上岡:ですね。とはいえ、20坪くらいのお客様だと「一気に人を増やすフェーズで住所が渋谷だと採用しやすい」とか、「事業の急拡大中で出社しないといけないから、通勤に便利なのって渋谷がいい」という条件ももちろん無くなったわけではないんです。ただし、一方で「もうリモートワークで業務を回しているよ」みたいなお客様だと、人気エリアにわざわざ拠点をかまえる必要性がなくて、エリアの優先度が下がっている。以前のように、「絶対渋谷がいい」っていうのが減ってきたなって感じがします。
木幡:あと、現場で感じるのは、物件のポテンシャルとお客様との要件のマッチ具合が大事ってことかな。「絶対渋谷がいい」という企業も、「なぜ渋谷なのか?」と話を聞いて要件を整理した上で、「渋谷じゃないけどこんなポテンシャルが高い物件もあって、御社の要件にもばっちり当てはまりますよ」と提案すると、結構ハマったりする。
上岡:そうそう。
木幡:あと、必ずしも賃料が安いのが良いのか、「1年の短期期間で借りるプランがあるからどうか、そのあとにもっといい所いきませんか?」って2段階移転の提案がハマることもある。1つの物件からオフィス移転のストーリーを描いて提案することで、エリアへの固執を払拭していただけることがあるね。他にも「こういうお客さんがいてこういう風にニーズ変わっていったよ」という具体的な事例は、とても参考にしてくれている感じがする。けっこうみんなそんな感じですね、みたいな。
上岡:お問い合わせ時で頂いた内容や、初回ヒアリングでいただく条件が、必ずしもピントのあった条件ではないことがあるってことですね。
木幡:そう。今の市場だと、物件情報だけ集めても、判断材料として満足できる情報を網羅できるか難しいだろうなあ、と思うこともあるね。このコロナ渦で渋谷で50坪探して、とだけ仲介に伝えるのはけっこう機会損失生むんじゃないかな、と。
― なるほど。コロナ前の市況より、「交渉ができる状況が生まれている」、「オフィスに求める要件も変わってきている」。こういう状況だから、いろんな事例を参考にしながらまずは要件整理のところから物件探しをはじめるのがいいんじゃないってことですかね。
木幡:まさにそれ。移転しない方がいいんじゃないですか? と提案することも、割とあるよ。
― え!そんな提案もしちゃうの?それは仕事なくなるからあれなんじゃないの?ってツッコみたくなりますが……
木幡:でも珍しいことじゃないんだよね。こういう提案をすると、案件自体はペンディングになっちゃうんだけど。具体的な事例だと、拡張するかリモートでしのぐか、分室出すかっていう3パターンがあって悩んでます、という案件があって。話を整理すると、リモートワークによる事業へのクリティカルな影響もなく、入居しているオフィスがコスパも条件もとても良かった。エリア相場を知っているプロ視点からみると、いまのオフィスを手放すのは惜しいですよ、と。だから、しばらく様子見というのも含めて、今の所に残ることが1番ベストですよって整理がついた。
― 仮に、移転メリットが今そんなにないって結論がでて、お客様自体は納得できるものなんでしょうか?
木幡:
もちろん、条件整理のときにいろんな検証した上での結論だからかな。入居しているオフィスで、レイアウト変更だったり内装変更だったり、そのあたりも視野に入れて検討すると、かなり状況整理ができるからね。
「要件整理の難易度が高いんですよね、お客様にとっても。」
野田:移転の要件整理について、木幡さんと上岡さんにちょっと聞きたいです。大型オフィスのレンジになってくると、移転の判断をする際にも関係者が多いと思うんですよ。関係者が多いということは、それぞれの意見をまとめるのが大変ってことがありそうな気がします。立場によって現場はオフィスに来させたいけど、バックオフィス側は別にいいんじゃない。といった具合に。
木幡:こればかりは、「これは決めの問題だから決めて下さい」って判断を促すかな。野田さんが言ったように関係者が多いと意見が錯綜することもある。ただ、実際のところは、ちゃんとリレーションシップがとれていて「以前の判断から変わった理由はなんですか?」「こういう情報を見落としていませんか?」といった具合に、理路整然とリードすることで要件が大きくブレることは減るんだよね。ちょっとドライに聞こえるけど、一緒に話を整理していくってのがリアルな現場感だね。
野田:なるほどですね。あと、コロナ前は対応人数の想定×2坪でだいたい物件探して、あとは居抜か内装どう作るか引き継ぐ。というようなフローがあったと思うんですけど、今はプロジェクトを進めるうちに「1ヶ月前と言ってることが全然違う」というケースもしばしばあると思うんです。これって、ずばりプロジェクト自体が難しくなったんじゃないかって聞いてて思ったんですけど、現場感的にどうなんでしょう?
上岡:マストな条件を見極める、という難易度は上がりましたね。例えば、コロナ前と確実にヒアリングが変わったところ、「出社率」と「在社率」は必ず聞くようになりました。
野田:「出社率」と「在社率」。
上岡:実際の現場だとスタート時点では「次、2年以内に社員が30人になるから60坪欲しいんです」、みたいな話から始まることがまだまだ多いんです。ここに、「出社率と在社率ってどうなんですか?」っという質問をして整理していくと、「じゃあ40坪でいいですね」という話になることが多い。
野田:今って有事だから「出社率」「在社率」も、それすらも適正なのかっていう話も途中で出てくるような気もしてて。途中で「やっぱり20坪でいいです」とか「やっぱり50坪広くみといた方がいいかな」といった風に、話の方向がすごいコロコロ変わるんだろうなって聞いてて思いました。
―最初にヒアリングしたものがアテにしちゃいけない、アテにしすぎちゃけないっていうことですか?
上岡:最初にヒアリングしたものをアテにしちゃいけない、というのは大前提になってきましたね。そして、複雑な状況だからこそ、オフィス移転のストーリーだったり、判断の選択肢を提案しても、それでもやっぱり判断しきれいない状況っていうのもリアルにでてくることはあります。難易度が高いんですよね、お客様にとっても。
野田:悩んでる、悩める子羊がいっぱいいそうな気がする。
上岡:一例ですが、「今、計画が正直ふわふわしてて、2年後のビジョンが明確でない。ただ、2.3カ月後の採用とか働き方とかある程度固まってるから移転しないといけない」、こういう最終的にお客さんも判断しか寝ているような場合は、フレキシブルに動けるWeworkなどの空間を提案することもあります。
― ここでWeworkという選択肢が出てくるんですね・・・!
後編につづきます!
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