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2024/6/25

【前編〜WAW 赤坂第35興和ビルPJ】 開業前にほぼ満床を実現した、築古ビルの開発PJ。物件の個性を引き継ぎながら働きやすさを実現するシェアオフィスへ。

都内を中心に、オフィスビル・マンション・外国人向け高級賃貸住宅・物流施設開発などを手掛ける総合デベロッパー、日鉄興和不動産株式会社。今回、ヒトカラメディアが手掛けたのは、同社のシェアオフィスシリーズ「WAW」の1つである「WAW 赤坂第35興和ビル」。元々「WAW」として開発する計画のなかった築古ビルを、いかにして”オープン前からほぼ満床”の物件へ生まれ変わらせたのか。約2年間にわたるこの開発プロジェクトを前編/後編にわたってご紹介していきます。この前編では、ビル全体の利活用や開発、空間設計の背景について、後編ではオフィスの商品企画やプロパティマネジメントについて、同社の小松様と石森様、ヒトカラメディアのPJメンバーと共に振り返ります。

ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー

  • 伊藤 陵

  • 亀井 一帆

1. 赤坂エリアがもつ、歴史と雰囲気を生かした設計を意識

――今回のプロジェクトは、最初の段階では日鉄興和さんのシェアオフィスシリーズ「WAW」にする予定ではなく、まずは「第35興和ビルを有効活用したい」というところから始まったとお聞きました。どのような背景があったのでしょうか。

日鉄興和不動産・小松洋平 様(以下「小松」):第35興和ビルは、1980年1月に竣工した歴史ある物件で、今までさまざまな企業に入居いただいていました。長く入居いただいていた企業さんの退去が決まり、通常であればそのまま企業を誘致するところですが、築古ビルで且つ再開発を予定しているエリアということもあり、であれば、通常の賃貸形態ではなく、社内で何か有効活用する道を探ってみようという話になったんです。

日鉄興和不動産・石森嵩彬 様(以下「石森」):私たちにとって、第35興和ビルがある赤坂周辺は重要なエリアです。そこで、有効活用と言っても、当社のメイン事業であるオフィスビル事業に活きるような仕掛けができないかと考えていました。今後のリーシング、当社の新しい賃貸モデルを作りたいな、と。

また、第35興和ビルの周辺は、当社が古くから開発を行ってきた、特殊な雰囲気のあるエリアだと思っています。各国の大使館やオフィス、住宅が混在するエリアで、外国のような雰囲気があります。同時に歴史を遡れば武家屋敷があった場所でもあり、日本的な雰囲気もあります。そうした和洋折衷の歴史・雰囲気を生かせないかということも最初から考えていました。

▲日鉄興和不動産株式会社 賃貸事業本部 リーシング推進部 事業創造グループ グループリーダー 石森嵩彬 様

――そうした中、ヒトカラメディアにいち早くお声がけいただきました。その理由は何だったのでしょうか。

石森:ヒトカラメディアさんには、以前、WAW神田の物件を仲介してもらっていたので、すでにお付き合いはありました。その際、シェアオフィスの課題感等、最初から腹を割って話ができ、ずっと心に残っていました。そこで、第35興和ビルについて、まずはざっくばらんにご相談してみたところ、ヒトカラメディアが手掛けた「Kant.」の事例を紹介してもらいました。そこで、ヒトカラメディアはオフィス開発にも強みを持っていることを知り、改めて2022年10月ごろから具体的にご相談し始めたんです。

ヒトカラメディア・伊藤 陵(以下「伊藤」):今回の物件は、日鉄興和さんのシェアオフィスシリーズ「WAW」として開発することが最初から決まっていたわけではないので、小松さん石森さんとは、プロジェクトの目的の整理から始まり、さまざまなオフィスの活用パターンのゾーニングとフィジビリ・スタディを行ったり、いろいろな可能性を探っていきました。

小松:それと並行して、社内でも有効活用のアイデアを募集しました。実験ライブオフィス、モデルルーム、災害体験施設など、多くのアイデアが出されましたが、結果的に6階建ての建物のうち、1階部分は社内4つの各部門が利用する新たなチャレンジのための場所、2階を貸会議室、3階・4階をWAW(のちに5階もWAW)など、複数の用途を組み合わせ、各用途が相互にシナジーを生みつつ付加価値を創出するような実験的な施設にすることにしたんです。

2. 開放的な屋外テラスを有効活用し、他のシェアオフィスとの差別化に成功

――WAW 赤坂第35興和ビルで一番印象的なのは、何と言っても解放感のある屋外テラスです。どのような意図があって設計されたのでしょう。

ヒトカラメディア・亀井一帆(以下、「亀井」):第35興和ビルに一度内覧に行った際に、3階の屋外テラスが非常に魅力的に映ったんです。そのため、まだWAWとして開発することが決まる前でしたが、ヒトカラメディア内では「3階をどう使うか」という議論がすでに行われていました(笑)。屋外テラスをうまく活用できれば、他のシェアオフィスと決定的な差別化ができると考えたんです。

ただ、屋外テラスにアクセスできる部分は一部分のみだったので、解放感の創出に課題がありました。そこで、構造設計の方と協力して、外壁の一部を壊せないかと考えました。結果的に、建物構造を変えることなく屋内外のつながりを強め、解放感を演出することに成功しました。

――手前はテラス席で、奥に日本庭園がありますね。これは何か意図があったのでしょうか。

亀井:あえて半分残しています。元々の屋外テラスは全面が奥にある日本庭園風の庭で、利用者が休憩するようなシーンは生まれづらい状況でした。そこで植栽を撤去し活用できる面積を増やすことが求められました。また屋内はアメリカンダイナー風の、日本庭園とはマッチしないテイストにする予定でしたしね。そこで全てを撤去するのではなく、もとの日本庭園を半分残し前面に見える植栽は洋風にする方針にしました。ただ改修すると殺風景なテラスになってしまうところを、日本庭園を背景として利用することで”借景的に”コーディネートし、地上階でないのに緑豊かなテラスを演出したかったのです。

石森:私たちは従来から屋上緑化をはじめとした緑化を行って参りました。ヒトカラメディアさんには、私たちが大事に育んできた屋上緑化の部分、そして、この物件がもつ歴史・雰囲気を残しつつアップデートしてもらえたので非常に良かったですね。ラウンジと開放的な屋外テラスのおかげで、赤坂エリア以外にオフィスを構えていた企業も多く入居してもらえました。

また、どうしてもオフィスビルを営業する際は、募集資料の中にある立地、規模、築年数で判断されてしまうことが多いのですが、私は、そうではない“付加価値”の部分を大事にしたいとずっと考えていました。また、付加価値を物件の元々持つ魅力と合わせて、どのように1つのストーリーにしてお客様に届けることができるのか、が重要だと思っており、今回はその部分で物件を評価していただくことが多く、とても嬉しかったです。

▲日鉄興和不動産株式会社 賃貸事業本部 賃貸営業第二部 第二グループ グループリーダー 小松洋平 様

3. 「WAW」で得た知見を活かし、さらに付加価値のある建物を増やす

――ほかにも今回のオフィス設計では、“働きやすさ”にも重点が置かれていますね。

亀井:そうですね。先ほどからお話に出ているアメリカンダイナー風のラウンジは、入居者は誰でも使用できますし、社外のお客様との打ち合わせにも活用できます。また、セミナーや研修ができる広めのレンタルルームを設置したり、リモートワークが常態化していることを踏まえ、テレブースも通常より多く配置したりと随所に工夫を凝らしています。

そのほかに特長的な部分としては、貸室を会議スペースとセットにしてお貸ししているところです。これは、既存ビルの構造上、どうしても窓のない小部屋があったのですが、「この部屋をデザインでどう生かすか」を考えた際に、会議スペースにすればいいのでは、と考えました。入居者様からは、専用の会議室があることがとても喜ばれているようなので良かったです。

石森:貸室と会議室をセットにしてお貸しするアイデアは素晴らしいと思いました。基本的に、改修前の間仕切りをそのまま生かしたデザインにしてもらったので、工事費が大分抑えられ、その分で賃料を相場より低価格の料金に設定することもできています。オープン前に内覧会を開催したのですが、すでにほぼ満床ということもあり、社内でも話題になっており、メディアやお客様からも評価いただいた物件になっています。

小松:もともと3〜4階を「WAW」にする予定していましたが、オープン前にほぼ満床になったのですぐに5階も「WAW」にすることが決まったほどです(笑)。5階もお陰様で満床間近になっています。

――「WAW」は、今後どのように展開していこうとお考えでしょうか。

石森:今回の「WAW 赤坂第35興和ビル」もそうなのですが、「WAW」は毎回、そのスペースをどう有効活用していこうか、その物件のもつポテンシャルをどう生かせばいいのか、という思いで開発してきました。そうして試行錯誤して開発してきた結果、「WAW」はそれぞれのエリアで特徴が異なり、個性豊かなシェアオフィスを数多く作ることができたんです。

とはいっても、私たちの本業はあくまでオフィスビルの開発・賃貸業です。そのため、この「WAW」で得た知見を活かして、入居者様が魅力的に感じるような“付加価値”がある建物を増やしていければと考えています。

  • 【後編記事はコチラ】 ”駅チカ優位”を覆す商品企画とリーシング、非常駐でも良好な関係性を築くプロパティマネジメントのひみつ


取材・文/太田祐一