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2025/7/9

「オルガテック東京2025」レポート〜効率性を超えた先で”選ばれるオフィス”とは?

2025年6月3日から5日にかけて東京ビッグサイトで開催された『オルガテック東京2025』は、昨年に引き続き「SHIFT DESIGN」をテーマに開催されました。ヒトカラメディアでは今年も空間プランニングを担当するメンバー5名で会場を訪問。ワーカーひとりひとりの”心地よさ”や”集中”をキーワードに、各ブースが提案する空間やプロダクトには“自宅以上に快適なオフィス”という新たな視点が色濃く反映されていました。オフィスの未来を考える上でのヒントが詰まった展示会の様子を、プランニングチームのマネージャー・小島がレポートします。

ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー

1. 全体レポート〜オフィスならではの生産性やエンゲージメント向上に向き合う

コロナ禍を経て多様化した働き方に対応するオフィスのあり方を模索する場として、『オルガテック東京2025』は今年も多くの注目を集めました。中でも特別展示『BORDERLESS〜オフィスは私へ〜』では、リモートワークと出社のハイブリッドな働き方が定着する中で、オフィスが個人の快適性や自宅のような居心地を提供する空間へと進化していることが強調されていたと感じます。

出展各社のブースでは製品の展示にとどまらず、働く人々のさまざまなニーズに応える空間設計やICT、素材などを組み合わせた統合的な提案が印象的でした。オフィスが仕事をこなすための場所である以上に、オフィスならではの生産性やエンゲージメントの向上、加えて、働く個々人に良い影響をどう与えていくか、ということに各社が真剣に向き合っているように感じました。ここからは、そんなメッセージを特に強く感じた出展をいくつかご紹介していきたいと思います。

 

2. 内田洋行:ICTによるスマートオフィスの可視化と進化

株式会社内田洋行の今年のテーマは「人が主人公のハイブリッド・ワークプレイス」。目を引いたのは「働くを快適にするためのICT」として紹介されていたエリアです。予約なしで利用される会議ブースの利用状況を可視化するシステム「RoomSense」や、主要なグループウェアとリアルタイムに連携する会議室予約・運用システム「SmartRooms」、そして、それぞれデータを集めて見ることのできる「SmartOfficeNavigator」など、どれも直感的なUIで可視化されていました。

会議室の平均滞在時間や予約率、稼働率といったデータが見えると、働き方の最適化にとどまらず、組織全体の生産性向上に資する仕組みになり、実務的にも非常に魅力的なのではないでしょうか。

また、「リアルサイズプレゼンテーション」というブースでは、壁一面が大きなスクリーンとなり、資料や図面を実寸大で表示できるようになっていました。さらにスクリーン自体がタッチパネルになり、表示コンテンツを動かしたり、書き込んだりすることも可能。こういった工夫で、これまでのサイズでは味わえなかったライブ感や”共にいる”感覚が強く演出されていました。

 

3. イトーキ:未完成だからこそ、進化し続ける空間デザイン

株式会社イトーキが今年掲げたのは、“進化し続ける空間”というコンセプトです。「ITOKI DESIGN HOUSE」と名付けられたブースは変化をポジティブに受け入れ、次世代のワークスタイルを実験・体験できる”未完成な場”として設計されていました。

特筆すべきは、新オフィスファニチャーブランド「NII(ニー)」の発表です。グローバルに活躍するデザイナーとの協業によって誕生したこのシリーズは、クラフトマンシップを感じさせる丁寧な造りと独創的なフォルムを特長としているとのこと。展示された家具は、直線的な従来のオフィス什器とは異なり、曲線を活かした柔らかく有機的なデザインです。まるで自宅にあるかのような佇まいで、オフィス空間に心地よい”動き”と”余白”をもたらしていました。

配色は北欧インテリアを思わせる配色が中心で、従来の日本的な事務感を良い意味で裏切るものでした。今後、オフィスは仕事の場から創造と交流の場へと変わっていく、という未来像を、家具という切り口から提案していた印象です。


4.  コクヨ:座ることが、ワークスタイルを変える

同じくオフィスチェアに焦点を絞ったコクヨは、新型オフィスチェア『ing Cloud』のみを展示するというストイックなプレゼンテーションを行っていました。

”働きがい”が経営の重要なキーワードとなっているいま、コクヨは働く人一人ひとりの快適性や集中力を高めることで、その実現を支える取り組みを続けてきました。新型オフィスチェア『ing Cloud』は、そんな取り組みの中で”座る”という行為に真正面から向き合って開発されたものです。

会場ではこのチェアの浮遊感や包まれるような座り心地を実際に体感できるスペースに、来場者が列をなしていました。オフィス回帰が進む中で、エンジニアなど長時間座り続ける職種の快適性をどう担保するかが、企業にとって大きな課題になりつつあります。

コクヨの提案は単なる“椅子”にとどまらず、オフィスに出社する意味そのものを問い直すものでした。家庭よりも魅力的な作業環境をオフィスで提供する、といった発想が、まさに今の時代に求められているのかもしれません。

5.  オカムラ:座るという行為を100脚で問い直す


そして、なんと、オカムラもオフィスチェアだけのプレゼンテーションを行っていました。約100脚のチェアを高く積み上げたブースデザインは圧巻。オフィスはもちろん、図書館や空港、大学、病院といったあらゆる生活空間を支えてきた同社の実績が、その100脚のチェアに集結されていて、“座る”という行為に向き合い続けてきたオカムラならではの世界観が伝わる空間でした。

来場者は一部の椅子の座り心地を試すことができ、それぞれの椅子には”チェアマスター”がつき、機能性や背景を丁寧に紐解いてくれるのも興味深かったです。

オカムラは日本の家具メーカーとして初めて「LEVEL認証」や「Declare Label」といった国際的な環境認証を取得しています。展示構造体には転用可能な素材が使われており、会期終了後も製品はそれぞれの場所へと“還っていく”という姿勢に、サステナブルな未来への視点が感じられました。

ユニークだったのは”座りながら歩ける椅子”の紹介。高齢化社会や共創スペースでの利用を想定しており、働く場を越えて座ることを再設計する意志が伝わってきます。

コクヨが個の快適性に焦点を当てた展示だったのに対し、オカムラは公共性や多様性の観点から、座ることの本質にアプローチしていたのが対照的でした。

6.  関家具:多様な働き方に応える、5つの”働く場”の提案

 「すべての働く人に、最適な空間を。」そんな思いがにじむ関家具のブースは、機能性・快適性・創造性をテーマに、5つの異なるワークシーンを表現。それぞれの空間に、同社ならではの素材使いやレイアウトの工夫が凝縮されていました。

たとえば、重厚な一枚板と人間工学チェアで構成されたエグゼクティブフロアは、「従来の重厚さだけではなく、洗礼されたデザインを用いてどう品格を出していくのかという空間に。天然素材の家具で統一されたカフェエリアは、部署や役職を超えた“交流の場”として機能し、ワーカー同士の偶発的なつながりを促していました。

中でも目を引いた、防音ブースとゲーミング家具を組み合わせたストリーマールーム。高い遮音性と視覚的インパクトが融合し、新しい職種や広報活動にフィットする空間となっていました。

単なる家具展示にとどまらず、“空間の多様性”そのものを伝えるような構成が、関家具の提案する未来のオフィス像を描き出していると感じました。

8.  無印良品:ぜんぶ、無印でつくる。シンプルな働く場の原点

会場でも非常に注目を集めていたのが、今回が初出展となる無印良品です。「ぜんぶ無印良品で作るオフィス」というコピーが象徴するように、展示のすべてのプロダクトが無印良品製。ブース内では製品を組み合わせることでスペースにぴたりと収まる“シンデレラフィット”の構成が随所に見られ、買い足しや再配置がしやすいことが実感できます。

段ボール素材で構成された会議室の展示は耐久性の高さを示しつつ、ぬくもりやどこか懐かしさを感じる空間に。さらにユニフォームも無印製で、空間全体が“無印らしさ”に貫かれていた点もインパクトがありました。

9.まとめ:”快適さ”を超えるオフィスへ〜しぼり込まれた展示から見えた潮流

今年の『オルガテック東京2025』では、昨年に比べて各社の展示がよりテーマ性を持ってしぼり込まれていたと感じました。その多くが訴求していたのは、「自宅より快適なオフィス空間」の実現。働き方の選択肢が増えた一方で、オフィス回帰の流れにある今、ワーカーにとって心地よく、居場所として選ばれるオフィスづくりが各社の共通テーマとなっていました。

この流れを受けて展示に登場した家具や空間は、いかにもオフィス備品らしからぬ色合いやフォルム、空間構成が目立ちました。やわらかな色彩やパーソナル感のあるデザインが、自宅のような安心感と仕事に向き合うための集中力の両立を図っていたと感じます。

また、オフィスチェアをはじめとする多くのプロダクトは、人体の構造や自然な動きに寄り添う設計が進んでおり、”座る”という日常動作の見直しが、いかにパフォーマンスや健康に直結するかが示されていました。

さらに、エンジニアやクリエイター、ネットを活用した職種など、従来のオフィスワーカー像から外れる新しい働き手の広がりにも応じた提案がなされていたことも見逃せません。多様な職種、多様な働き方に合わせた”選べる快適さ”が、これからのオフィスに求められていくことを、今年の展示が物語っていたように感じられました。



構成/鈴木はる奈