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2022/6/30

OKAN流ABW設計を生み出した、組織に対するオフィス最適化の考え方

“働く人のライフスタイルを豊かにする”をミッションに、置き型社食®サービス『オフィスおかん』や組織課題解決サービス『ハタラクカルテ』を手掛ける、株式会社OKAN様。

今回お話をお伺いするのは、2022年3月に移転が完了したオフィス移転プロジェクトについて。前オフィスのすぐ近く、オフィス仲介とプロジェクト管理に携わらせていただきました。ヒトカラメディアとのお付き合いもこれで3度目です。

新オフィスは「OKAN流ABW」と「リユース型移転」がキーワード。コロナを経た働き方の変化と、新オフィスでの挑戦とは?

設計者である株式会社WIZU(ワイズ)さんも交えた、プロジェクトの振り返りインタビューをお届けします。

ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー

    働き方に合わせて、オフィス環境もチューニングが必要

    ▲2022年3月に移転完了したOKAN様の新オフィス。

    ー前のオフィスからは徒歩2分ほどの近距離に移転されました。移転のキッカケはなんだったんですか?

    沢木

    働き続けるためには、人それぞれの考え方や価値観が違っていて、企業も順応できる限りは積極的に個別の最適化をしていくことが必要だと考えています。

    働き方やオフィスのあり方も適宜チューニングするべきとなるわけです。

    前のオフィスはコロナ前に設計されているので、全員出社が前提でした。外部の方を招いてのイベントをするようなスペースもあり、リモートワークに移行し、使い方の前提が変わってきていたんですね。

    オンライン主体になると、偶発的なコミュニケーションは生まれません。「みんなでZoomを繋ごう」は、もはや偶発的ではないですよね。

    結果、社内のチームメンバーがどんな仕事をしているのかわからない、どんなことに悩んでいるのかがわからない、という状態になってしまいました。

    基本は自由出社に切り替えましたが、一部のメンバーには出社してもらっていました。ただ、約150名が出社するのを前提にした200坪超えのオフィスに、出社しているメンバーは多くても20名という状況が続いたんです。

    出社したメンバーからは「体育館にぽつんといるみたい」なんて声も上がりました。

    ーそれは寂しいですね…!

    沢木

    人数に対して広すぎても、偶発的なコミュニケーションは生まれない。今後出社する人が増えるとしても、人数に合わせた最適化をしないとオフィスも機能しない、と分かったんです。

    また、前のオフィスでは初めてABWの考え方を取り入れたのですが、実際に使ってみて、自分たちの働き方に合うところ、合わないところが見えました。その点もチューニングしながらリビルドしようという狙いも、新しいオフィスへの移転につながりました。

    ▲株式会社OKAN 代表取締役 沢木 恵太 様(中央)、WIZU Inc. 代表 土屋 匡生 様(右)

    今井

    社員さん向けのワークショップを設計するタイミングで、「変化をし続ける組織でいたい」「現状を維持するな」とメッセージを出したいと仰っていたのが印象的でした。

    その上で、ワークショップのテーマを「変化の総量を増やすためには」に決めたんですよね。

    沢木

    なにもしなければ変化は起きません。

    変化するには、会社としての熱量の共有が必要だと思うんです。それが、オンライン+”体育館にぽつん”の状態のオフィスだと、熱量は作りづらかったんですね。

    結果、今のオフィスでは隣の人が頑張っている姿が見えて、身近に捉えられるようになりました。熱量の共有、他の人の熱意を感じやすくなったなと思っています。

    OKANが目指すハーフ&ハーフの働き方

    ▲ブレストなどのコミュニケーションを目的とした「緑」と呼ばれているスペースには、植物がたくさん。

    ー現在、一部出社の方もいるとのことですが、今後はどのような働き方になる予定ですか?

    沢木

    OKANは、オフィス出勤とリモートワークのハーフ&ハーフを目指しています。

    それぞれの働き方にメリットがありますが、個人の視点からするとリモートワークのメリットが見えやすい。移動時間も削減できるし、環境さえ整えられれば目の前の作業に集中しやすい。ただ、企業として見ると、個の仕事だけではなくチームワークやコラボレーションも必要です。

    対面がすべて正義ではありませんが、対面だからこそできることはあると思っています。帰属意識や求心力を高めていくことや、エンゲージメントの最適化を考えると、対面でのコミュニケーションを一定担保したいというニーズが出てくるんですよね。

    もちろん、メンバーごとにしやすい人、しにくい人がいるのは事実です。

    なので、会社として出社を強制するつもりはないですが、メリット・デメリットを理解してもらって、可能な範囲で出社を要請することはあると思います。現時点ではルール化されているわけではないので、チームごとに設定していますね。

    なので、自宅も働く場所のひとつであると捉えています。

    土屋

    他の企業様の案件でよく聞くのは、出社はしたもののオンラインミーティングばかりで、結局ブースに閉じこもってしまう…という話。

    であれば、ミーティングの多い日は自宅作業にして、出社したらコミュニケーションを重視する、など使い分けもできます。そういう意味でも自宅は働く場所のひとつ、と考えられますね。

    元来のABW思想から、OKAN流ABW設計へ

    ▲オフィスフロアマップは、ABW設計に基づいて色分けされています。右下に「自宅」があるのがポイント。

    ー前のオフィスから、ABW(Activity Based Working/目的に合わせて働く場所を選べるワークスタイル)のシステムを採用しているんですよね?

    沢木

    前のオフィスでは、オランダ発祥のABWの考え方をほぼそのまま取り入れました。

    元来のABW思想では10のカテゴリにワークポイントが整理されていたのですが、振り返ると、結果的にこの10個のカテゴリに引っ張られてしまったと思います。

    実際に運用してみると、我々の働き方にはない活動や違いが分かりにくい分類がありましたね。

    土屋

    前回は、一旦ゼロから取り入れて、そのまま当てはめたスペースを作ったほうがいいな、というベースで設計しましたよね。

    それが、「目的通りに使って良いのか」という現場の迷いを生んだのかもしれません。

    沢木

    10個も分類があると、使う側も意識しきれない部分がありました。

    ABWで重要なのはカテゴリではなく、各組織ごとに適切な業務分類が作られていること。なので、今回のオフィスでは、我々の実態ベースで活動のグルーピングをして、10→6個まで減らしました。

    前回はグルーピング・人数・音の大きさに意識が向いていたんですが、今回それらはあまり気にせず、業務による分類を重視しました。

    そちらのほうが機能しているし、しっくりきています。メンバーにも自然に受け入れられていると思います。

    ▲電話ブースは「1人で作業する場だが、周りとのコミュニケーションもOK」というエリアに分類されています。

    ー「企て」「眺め」「緑」と、ABWに対応した場所のネーミングもユニークですよね。

    沢木

    覚えやすいようにこだわりました。

    オフィスはただ作るだけでは、メンバーに浸透しません。だからこそ、ひとつひとつに意味をつけることがとても重要です。

    会議室には和柄の名前を採用していますが、例えば「麻の葉」には「成長」だったりと、それぞれに意味を持っています。

    土屋

    以前のオフィスから議論されていたものが、今回も自然と継承されましたね。

    ▲取材を行った大会議室の名前は「麻の葉」。ほかに、「七宝」や「紗綾形」といった会議室があります。

    木材や設備を再利用、歴史を紡ぐ「リユース型移転」

    ▲社員の利用頻度が高い「企て」は、階段状のスペース。壁面には再利用した床材が貼られてます。

    ー前のオフィスで使用していた部材を再活用する「リユース型移転」を実現しました。オフィス移転において、”前の部材を活用する”というのは大変だと思いますが、どうでしたか?

    土屋

    そう、大変なんですよ(笑)

    新しいオフィスへ部材を持っていくというのは、社員の方が働いている状態のまま取り壊す必要があるということ。当然働けなくなってしまって成立しないので、本来はできないことです。

    今回はコロナ禍でオフィスへの出社率がかなり下がっていたことと、面積が広大だったという条件が相まって、リユースが実現しました。

    また、僕たちは2つ前のオフィスから移転時のデザインを担当していますが、突然ガラッと変えたことはありません。見た目の雰囲気だけでなく、材料や家具なども引き継いで、つながっていくデザインを意識しています。

    通常、オフィスを移転すると全部リフレッシュせざるを得ない。

    毎回オフィスをスクラップ&ビルドする違和感への解消として、どこまで再利用できるかやってみよう、というのが僕たちの裏テーマであり、挑戦でもありました。

    ー実際にどの部材をリユースしているのでしょう?

    土屋

    新オフィスの床や壁に使っている木材は、91.2%を再利用で賄っています。1本1本木材の活用位置、向き、に拘って現場で考えながら配置しました。

    床材に至っては、張り替えた部分は100%再利用しました。170平米以上を張り替えましたが、新しく買った床材はありません。OKANさんのオフィスは以前から靴を脱ぐ文化なので、かなりキレイな状態だったというのも再利用できた要因ですね。

    天井照明のレールやスポットライトも新たに設置したものに関しては100%再利用。前のオフィスが広かったので、レールとライトの再利用率は50%、床材は36%ほどを活かしています。

    それでも余った照明器具などの設備は僕たちが引き取らせていただいて、他の場所でリユースしているものもあります。

    ステージに吊っていたのれんはもともと京都の老舗業者さんに頼んで制作しており、同じ業者さんに送付してサイズを変えて作り直してもらいました。ただ流用するだけではなく、かけるべきところにはちゃんと手間暇をかけました。

    ▲会議室内の意匠にも、前オフィスから引き継いだ木材が活用されています。

    ー調整ごとや手間を考えると、逆にプロジェクト費用が高くなりませんでしたか?

    土屋

    どちらにせよ前のオフィスの原状回復は必要だったので、材料費だけでなく人件費も含めてコストカットもできましたね。

    沢木

    コロナ禍におけるオフィス移転で、リユース型はすごく良いと思います。

    デメリットがない。コスト面のメリットはもちろん、SDGsの流れにもフィットするし、会社のストーリーを紡いでいくという点も実現できますから。

    今井

    OKANさんの想いを、WIZUさんが汲み取れるパートナーであることだからこそ、できることですよね。

    普通の内装会社なら「面倒だからできない」と言われるはず。目指す方向が同じだから実現できたんだと思います。

    OKANが考える、働き続けるためのこれからの働き方

    ー 広いオフィスから縮小する移転となると、社員さんたちへの説明に気を遣ったり、モチベーションへの影響を心配する声をよく聞きます。今回の移転では、社員の皆さんへはどういった説明をしましたか?

    沢木

    なぜやるのか。この説明を尽くしていれば理解はできると思います。

    今回のプロジェクトについても、なぜこのタイミングなのか、移転することによって実現したいことはなにか、ビジネスにどんなインパクトがあるのかといった話を、全社に対してしっかりと説明しました。

    目的は、縮小することではなく、働き方の最適化をすること。実態としても気持ちとしても「縮小移転」という言葉はあまり使っていません。

    移転後の方がポジティブな声が多く聞こえるのは、いい結果だったなと思います。

    ー 新しいオフィスに移転して、なにか変化はありましたか? 

    沢木

    実は、いい意味で大きな変化はないんです。

    元々オフィスでしかできない業務もないし、電話が取れないこともない。前のオフィスの頃からリモートワークはすごくしやすかった。

    土屋

    代々木のオフィス(2つ前)から、前のオフィスの方が変化は大きかったかもしれないですね。

    沢木

    そうですね、今回の移転プロジェクトは、やはり最適化という感じが強いです。

    それでいうと、前の移転のときのほうが、ABWを取り入れたばかりで、最初のうちはメンバーが慣れていなかった。

    でも、会社として意思を持ってやるABWと、なんとなくやるABWでは全然違います。決定事項として、浸透させるぞという意思がある。

    「なぜこの場所があるのか」「なぜここに緑を置くのか」といった物事のすべてに意味があるので、社内でも説明がしやすいんですね。

    もちろんすぐに浸透するわけではないですが、一定期間を経て、空間に慣れて貰えれば、期待通り機能し始めますからね。

    ▲OKAN様が手掛ける、組織課題解決サービス「ハタラクカルテ」。

    ー コロナを経て、働き方についてブラッシュアップされた知見を教えてください。

    沢木

    OKANが手掛けている、組織課題解決サービス『ハタラクカルテは様々な企業に使っていただいていますが、コロナのタイミングでほとんどの企業にスコア変動がありました。

    つまり、働き方が変わると、我々のエンゲージメントに対しても、なんらかの変化があるのは明らかということです。

    そこにどうやって企業が一致させに行くか考えると、フレックスタイム制やリモートワークなどの制度や、手続きのオンライン化などのソフトウェア的な最適化に加えて、オフィスというハードウェア的な最適化はやっぱり必要なんだと思います。

    オフィスにおけるゾーンのあり方、デザインのあり方はまだこれからも変わっていきそうな気がします。

    目的ありきで設計されるのが望ましいと考えると、働き方が変われば当然設計も変わりますよね。

    ▲新オフィスの顔になる「台所」スペースには、代々引き継がれている建具を活かした大テーブルが設置されています。

    ー 働き方に変化が起きれば、最適化は自ずと必要になると。

    沢木

    なので、今のオフィスもまだまだ「机」ゾーン(フリーアドレスデスク)が広いのは、まだまだ過渡期だなと感じるところです。

    本当は、もっとコラボレーションを仕掛ける場所やコンテンツが増えていく必要があるし、それを魅力に感じてメンバーが出社するように目指していかなければいけない。

    オフィスは事業を推進するためのツールのひとつ。オフィスの強みや魅力に対する効果を期待して考えていくことが必要になるんだろうなと思います。

    土屋

    コロナ禍を経て、各企業がそれぞれの方向性に進んでいますよね。

    今後もリモートワークを基本とする企業もあれば、100%出社に戻す企業もある。

    OKANさんのようにABWを取り入れた働き方は、固定席に比べて、社員の方ひとりひとりに自律性や働く意識、モチベーションをより求められると思います。

    今回のプロジェクトのように、組織の新しい働き方への取り組みを解釈して実現するためのオフィス設計は、設計者として面白さを感じますね。

    今井

    20年前のオフィス設計思想なら、AIが算出したレイアウトパターンから選ぶことで事足りる時代になりつつありますもんね。

    そして、スタッフが今よりも働き方の境界線を意識しなくなったときは、つぎのチューニングが必要になるんでしょうね。

    沢木

    そうですね。さらに、価値観が多様化して、働き方や出社してからの行動も画一的ではなくなってきた。

    そういった多様性に対応できるフレキシブルさもオフィスに求められていくだろうし、今後加速していくべきだろうなと僕は思っています。


    参考リンク/

    ・組織課題解決サービス「ハタラクカルテ

    note「オフィス移転|「働く」をテーマに活動するOKANの「働く」と「オフィス」の考え方」

    取材協力/

    株式会社OKAN 様

    WIZU Inc. 様

    取材・文/照屋有理子

    編集/ヒトカラメディア編集部