「レイアウトによってオフィスの意味は180°変わり、オフィスへ行く動機すら違ってくる」と話すのは、ヒトカラメディアで、オフィスの方針作りから細かな内装設計まで、規模もさまざまな案件に多数携わる八塚裕太郎と松原大藏のふたり。 ここでは、あるプロジェクトで実際に提案した複数のゾーニング案を比較しながら、いかに配置やゾーニングによって働く人の行動や意識に変化を与えることができるのか? 企業の現在地だけでなく、”半歩先の未来”もイメージしながら組み上げていくという、そのレイアウトバリーションのプランニング術に迫ります。
ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー
1. チャレンジの種”を仕込んでおく

――2つの内装プランを伺う前に、まず、プロジェクトの背景について簡単に教えていただけますか。
八塚裕太郎(以下「八塚」):もともと、2つのビルで7フロア借りていたところから、1つのビルで2フロアに縮小するというのが今回のミッションでした。いくつも事業部がある会社で、これまでは1フロア1事業部、といった使い方をしていたのですが、それを抜本的に見直して再編していく必要がありました。
松原大藏(以下「松原」):コロナ禍で業界全体が向かい風の中で、企業運営の過不足を定義しなおす必要性が出てきたんです。床面積は縮小だけど、今回これをやってみて「結果、良かったよね」と思ってもらうものでないとダメだな、というのは最初に強く思いました。
八塚:次の“チャレンジの種”を埋め込んでおくことが必要なんですよね。オフィスの規模としては一旦は縮小かもしれないですが、事業を盛り返すキッカケや次に挑戦する場をどこに想定しておくのか。それを踏まえて“チャレンジの種”を空間にも仕込んでおかないと、ただ縮小しただけのオフィスになってしまいます。
松原:ですね。なので、今回は八塚さん主導のワークショップを最初に3回ほど実施して、会社のビジョンや中長期目標をもとに「そのためにどんなことが起こると良いのか?」とか「それを起こすにはどんな機能がオフィスに必要なのか?」などについて事業部を横断しながら有志メンバーと考えたり話し合ったり投票したりして新しいオフィスに必要なものを探っていきました。
ワークショップを通して見えてきたものを整理して、新しいオフィスに必要だと思われたのが以下の5つの要素で、この5つの要素の配置やバランスを変えたバリエーションをA案からC案まで3つ作成しました。
八塚:今回は2フロアに分かれることが最初から決まっていたので、必要である5つの要素に対して何を3階にして何を5階にした方がいいのか?というのを検証していった感じです。作業を優先して働いている人の横にモノがあった方がいいのか、それともコミュニケーションを重視して他部署の人が混在している方がいいのか・・・。それを詰めていく段階でB案の可能性が消滅したので、ここからは最後まで残った2つの案(A案&C案)について話しますね。
● [MAKE] 手を動かしつくるラボ
● [SHARE] ブランドの価値観をシェアするショールーム・スタジオ
● [CONNECT/FOCUS] 人をつなぐオフィス/集中作業のブース
● [SENSE] リフレッシュ、感性を磨く
● [FUNCTIONAL] 機能性の高い倉庫
2. 【A案】ワーク中心
八塚:外へ向けて発信したり(SHARE)、そのための作業をしたりする場所(MAKE)を5階に集約させることで、3階は仕事に集中できるよう考えたのがこのA案です。これまでは事業部ごとにフロアが分かれ成績を競っていて、それはそれで良い面もあったかもしれないのですが、今の逆風の中では“いかにシェアしていくか”を考えないといけない。そのためには事業部の枠を超えて手の内を明かす関係になることが必要という考えがこのA案のベースにはあります。
[ 3階 ]
松原:2つのFOCUS(集中スペース)に挟まれているSENSEという場所(図面①)は、ソファなどがありラウンジ的な雰囲気があります。モノを見ながら話せたり、ディスカッションできる場所。こういう場所が3階にあることで集中して働きながらも発散でき、人が集まりやすいフローも作れて、一人ではなく、複数名で働くことの良さを発揮することができます。

[ 5階 ]
松原:SHAREの中にある「半歩先ゾーン」というのは(図面②)、完成した商品や開発中のアイテムを置くところで“他の人の仕事を知れる場所”として設定しました。もうひとつのSHAREは撮影などができるスタジオ(図面③)。
内向けに発信して「あの人たち、こんな仕事してたんだ」というのが見えながら、これまでなかなか出来ていなかった自分たちの商品を外へ発信していくこともスタジオを使ってやりましょう、ということですね。

3. 【C案】ワークブランド共存
[ 3階 ]
松原:A案では5階にあったSHAREが3階へ降りてきて、一箇所にまとまっています(図面④)。C案の考え方として、3階はメンバーが集まる場所でもあるけれど、お客さんが来た時に自分たちの仕事や商品を知ってもらえる場所である、というのを据えています。シェアに比重を置くことで人がより動き回るようになるのがC案です。そう言った意味でここの3階には“MIX”という名前をつけました。

[ 5階 ]
松原:逆に5階は「機能集中」というその名前の通り、仕事に集中するための機能を集めました。倉庫(FUNCTIONAL)が働く人の近くにあるのでモノを手に取りながらの仕事がスムーズです(図面⑤)。個人ブースや会議室もここに集中させています(図面⑥)。

4. 【配置によって、オフィスの意味は180°変わる
[A案:ワーク中心]

[B案:ワークブランド共存]

――2つのプランで、大きく違うのはどんなところですか?
松原:そうですね、まず、オフィスに行く動機が違ってくると思います。自分の仕事をこなすために普通に出社しつつ、ちょっとチームで集まろうと思えば集まれる機能的な感じがA案。他の人の仕事に刺激をもらいに行くとか、他の人と話しながら考えたい、みたいなのがC案です。
――異なるプランを作っていく時、どんなことに気をつけていますか?
八塚:まず、席数などの機能やスペックを同じにすることがすごく大事なんです。そうでないと「席数が多い方がいいのでは?」とか「コレがあるこっちのプランがいいよね?」という必要な要素の議論になってしまって、要点がずれてしまう。あくまで“配置次第で生まれる意味”について議論したいし、それを決めることが一番重要なので、席数や会議室の数などのスペックは揃えた上でプランを練るようにしています。
松原:どの配置にするかを決める作業は、要は「半歩先の未来を作っていくために、どちらを実現できるといいのか?」をチームで決定していくような作業だと思うんですよね。それを決めるためのレイアウトバリエーションだと思っていつも作っています。

――ここからどうやって1つのプランに絞り込んでいくんですか?
八塚:さっき松原も言っていましたが、レイアウトによってオフィスの意味が180°変わってくるんですよね。「モノの隣で働くっていいよね」と「発信しているのをみんなが知ってる方がいいよね」の、どちらの“いいね”をより良いとするのか・・・。
あとは、ひと言で“生産性”と言っても、その源泉が何か?というのも共有した上で決めないといけないですよね。移動効率が生産性なのか、お客さんの反応をより間近で見られることが生産性なのか・・・。そのあたりが絞り込んでいく時に大切にすべきところだと思いますね。
松原:今回の場合は、ワークショップで吸い上げた社員の方々のコメントや投票の入り具合、経営陣の意見を統合させて、最終的にはA案に決まりました。A案をもとに実際に動き出してみると倉庫のスペースがこれだと足りない等いろんな問題が出て、「半歩先ゾーン」を他のところへ移動したり他のゾーンも縮小したり、この図面から変更した部分もありますが、考え方は共有できていたのでA案の意図と狙いはしっかり残せたと思いますね。
八塚:プランを練っていく時、「必要な席数はいくつですか?」とか「会議室はどのくらい必要ですか?」みたいなことしかヒアリングできていないと、場所と場所の相互関係のことはほぼ論点にしないままプランが出来上がってしまう。それってすごくもったいないことだと思うんですよね。
ヒトカラが大切にしたいのは相互関係とか関係性をデザインするところ。なので、プランごとにゾーニングの違いをしっかり提示するし、プランによって、もしくはゾーニングによって生まれる状況にどう違いがあるのかもじっくり説明するようにしています。そうすることで、組み込んでいるオフィスの要素は同じでも、正しいジャッジができるし、意味のあるものが作れると思っています。


編集/ヒトカラメディア編集部
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