• HOME
  • navigate_next
  • ヒトマガ
  • navigate_next
  • 組織を分断せず、新たな価値につなげるサテライト/分室を使ったオフィス戦略

  • PROJECT

access_time

2025/2/12

組織を分断せず、新たな価値につなげるサテライト/分室を使ったオフィス戦略

コロナ禍を経てオフィス回帰が進む中、本社や本拠地を拡張するのではなく、サテライトを持つことで補填したり、新規事業を推進するために分室を構えるケースが増えてきているようです。組織の分断を生まず、複数の拠点を上手く活用するにはどんな物件やどんな空間づくりが必要なのでしょうか? ヒトカラメディアでオフィス物件の仲介業を担う上岡と、空間プラニングを担当する小島・廣野の3名に、サテライトや分室を使ったオフィス戦略について訊きました。

1. オフィス物件のプロに聞く、サテライト/分室に適した物件の選び方

――オフィス物件をサテライトや分室として借りられるお客様の支援もたくさんやられてきたと思うのですが、まずはどんなことに気を付けるべきですか?

 

上岡貴弓(以下「上岡」):大前提として、本社とサテライトで“組織の分断が生まれないようにする”ということがまずは大切になってきます。
サテライトとなるオフィス物件は、大抵の場合、本社より小さい物件になると思うのですが、ビルのグレードや内装にあまりに差が出てしまうと、サテライトで勤務を行うメンバーの士気を下げてしまうかもしれない。そのリスクをまずは気をつけないといけないですね。

 

――では、どのように物件を選ぶと良いですか?

 

上岡:そうですね。たとえば、広くはないオフィスながらも、デザイン性が高かったりとか、共用ラウンジやテレカンブースが利用できる等、機能が充実している物件はすごく良いと思いますね。
“組織の分断が生まれないようにする”という観点で言うと、部署や事業部単位で本社/サテライトを分けるのではなく“用途で分ける”という方法もぜひ視野に入れて欲しいですね。この部署は本社、こっちの部署はサテライト・・・ではなく、チーム全体のミーティングはサテライトでとか、仕事の内容によって本社/サテライトを使い分けるのは、業務効率も上がる良い方法だと思います。曜日で利用するメンバーや部署を振り分けたり、部門をかき混ぜたメンバーで使う、という企業さんもいらっしゃいます。といったことを踏まえると、本社とサテライトオフィスの距離も大事で、近い位置もしくは移動しやすい場所に構えるのも大切なポイントのひとつです。

――オフィスを拡張するという意味で言うと、サテライト/分室を持つ以外にも同ビルもしくは同フロア内で“増床する”という選択肢もありますよね。増床と比べてみた時に、サテライト/分室のメリットはどんなところにあるのでしょうか。

 

上岡:端的に言うと、サテライトや分室の方が“チャレンジしやすい”というのが特徴かと思います。同ビル内でフロアを拡張し増床する場合ですと、坪数の融通が効かなかったり、内装に一度手を入れてしまうと、あとから引っ込めるのが難しくなったりしてしまいます。事業拡大のために増床したけど軌道に乗らなかったとか、採用があまり伸びなかったとか・・・。逆に増床したけど結局すぐに席が足りなくなって本社ごと移転しなければいけないという場合も考えられます。
それに比べると、サテライトや分室は2、30坪くらいの小さい規模のものから設ける場合が多いので、会社が新しいことにチャレンジするのに適していると言えると思います。サテライト/分室としてフレキシブルオフィスやセットアップオフィスをまずは借りて始めてみて、手応えを感じたらそこから本社に吸収するなり、通常オフィスに移転するなどして拡張していく。フレキシブルオフィスもセットアップオフィスも今はすごく種類も増えているので、サテライトや分室を考えるのであれば、まずはそこから検討すると良いと思います。

2. 空間プランナーの視点から見る、サテライト/分室の作り方

――続いて、空間プランナーのお二方にもお伺いしたいのですが、プランナーの立場から見ると、サテライトオフィスや分室を持たれる企業は増えているように感じますか?

廣野 雄太(以下「廣野」):そうですね。コロナ禍でオフィスを縮小したりしていたところから、出社傾向になってきた時に単純に「席が足りない」「でも、すぐにオフィスを拡張できないから、一旦サテライトや分室で様子を見よう」という会社が多いように思います。特にベンチャー、スタートアップの従業員数の少ない会社だと、出社率10%程度で予測していたところが急に30%になると、常にオフィスがパンパンで、業務効率が落ちて困っているという話をよく耳にします。

小島 亮(以下「小島」):本拠地の席が足りなくなったことをきっかけに別の場所をサテライトや分室として借りて、単にスペースを分けるのではなく、新しいオフィスのあり方や新規の事業展開と紐付ける、というケースはオフィス戦略としてとても良いと思いますね。
少し前に担当させていただいたエレファントストーンさんは、本社から徒歩圏内のところにサテライトオフィスを新たに設置して“ラボ”のような用途で、チームやプロジェクトメンバーで集まって集中作業をしたり、新しい事業を構想する場所として位置付けていました。オフィスの役割をしっかり明確化させることで離れていても2つの場所がうまく機能していたように思います。

廣野:僕が最近担当させていただいたケップルさんの場合は、出社率が上がり座席が不足していたため、本社の近くにエンジニアさんやデザイナーさん、プロダクトビジネスに関わる方達の新たな拠点をつくるという目的でした。物件探しからご一緒して、本社の近くの内装付きオフィスにサテライトを開設しました。業務で特に関わりの深い部署をひとつのオフィスに集めることで、効率の良い使い方ができているようです。本社の拡張が可能だとしても、必ずしもそれが正解ではない、というのを改めて感じました。

――サテライト/分室のメリットはいろいろあるんですね。

廣野:そうですね。本拠地が必要とする機能とプロダクト開発に関わる方々が必要とするものは違ったりしますよね。たとえば、本社だと会議やミーティングなどコミュニケーションのための場所が重視されますが、エンジニアさんなど専門職の方の場合はそれよりも個々の作業スペースの環境の方が大切な場合も多くあります。スペースに余裕のあるオフィスだったら、一箇所でそれをまかなえる場合もあるかもしれませんが、都心部の坪単価が高いエリアだとそれはなかなか難しい。
となると、オフィスを分けることを前提として、でも、必要な時にすぐに集まれる距離感にいる、というのが先ほどのケップルさんの場合は最適解だったと思います。 

 

3. サテライト/分室の空間づくりは、機能も用途もデザインも”一点集中”が正解 

――本拠地とサテライトでは、空間デザインはどのように区別していますか?それとも統一感を持たせることが多いのでしょうか?

廣野:先ほどお話したケップルさんの場合は、どちらの案もご提案しました。本社の方と統一感を持たせたシンプルでシックなデザインのものと、それとはテンションを変えてカラフルで少し遊びをきかせたもの。相談を重ねた結果、結局後者のものになりました。
サテライトの方は、主にプロダクト開発に携わるメンバーが業務や社内コミュニケーションに使用するオフィスで、来客対応には使われないことが想定されたので、そこを使うメンバーのカラーを重視して、クリエイティブな方へ寄せた方が良いのでは?という結論になったんです。
細かいところで言うと、デスクで長時間作業される方が多いので椅子はちょっと良いものを選択して、全席に大きなモニターをセットしました。 

――エレファントストーンさんのサテライトも、同じように本社とはかなり差別化された空間デザインですよね。壁一面に描かれたアートが空間の象徴になっています。

小島:そうですね。あのウォールアートがこのサテライトの役割や、本拠地との違いをすべて説明してくれていると思います。
あまり広くない空間で制限のあるなか、どうやってサテライトの方に役割を持たせ、機能させるか・・・と考えたとき、“一点集中”ではないけど、何かひとつインパクトが大きいものを据えることにして、けっこう大胆なウォールアートにすることにしました。それと、このサテライトは本社とは違ってチームやプロジェクトメンバーで集まってひとつのものを作る業務を想定していたので、デスクに関してもこのサテライトでは振り切ったかたちにして、125cmの大きなブーメラン型のデスクを空間の真ん中に置きました。この2つがあることで、当初イメージしていた“ラボ”としての役割を担うことができるようになったと思います。


廣野:余計なものを置かない、というのはまずある気がします。「オフィスだから来客用の会議室がいるよね」という固定概念で作ってしまうと、意外と使われないこともあります。機能も用途もデザインも絞る。一点に集中させる。それがサテライトや分室では上手くいくコツかもしれません。
あとは、ちょっと文脈から外れてしまうかもしれませんが、基本的に“持っていけるようにする”というのも大事だと思っています。サテライトや分室って、いずれは本社と一緒になったり、新規事業の拠点として使っていた場合は、事業が軌道に乗って移転するという話がすぐ出てくるかもしれない。といったことを想定すると、会議室を作るのではなく、移転先に持っていけるフォンブースにするなどの工夫が必要だと思います。

小島:そうですね、そういった空間づくりのポイントもあると思いますが、作ったら終わりではなく“運用をどうするか”も、サテライトや分室ではすごく大事だと思います。本社/本拠地と同じくらい、もしくはそれ以上に大切なんじゃないかな、と個人的には考えています。どの部署の、誰が、どのように管理/運営していくのか。そのシステムや見直しの方法はどうするのか、という設計はサテライト/分室を構える前にぜひ一緒に考えて頂ければと思っています。

 ▼エレファントストーン社 [サテライトオフィスメイキング映像]

(ウォールアート:櫻井万里明/キュレーション:NOMAL ART COMPANY 



取材・文/ヒトカラ編集部