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2022/7/26

未来を共に創るために、トキメキを開放しよう!隠岐島前高校 視聴覚室リニューアルプロジェクト

実は、ヒトカラメディアが手掛けるのは、オフィスだけじゃないんです。

今回の舞台は、島根県立隠岐島前高校。隠岐諸島・島前に位置し、校舎から美しい海が見える学校です。 2022年4月に「地域共創科」が新設されたことをキッカケに、視聴覚室のリニューアルプロジェクトが誕生。ワークショップで生まれたコンセプト「未来を共に創るために、トキメキを開放しよう」と「共創」をキーワードに、生徒・先生がDIYに参加し、机のデザイン、塗装を行いました。

学校にいる“先生ではない大人”であるコーディネーターの山野さんと一緒に、プロジェクトの振り返りとこれからの展望を探ります。

ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー

    生まれ変わった視聴覚室。自分たちで使い方を作り出せる空間に。

    ▲高校魅力化コーディネーター 山野 靖暁 様(左上)

    ー 山野さん、はじめまして。山野さんは隠岐島前高校の先生なのでしょうか?

    山野

    僕は先生ではなく、コーディネーターという立場です。学校と地域や、学校と外をつなぐ役割ですね。

    例えば、隠岐島前高校独自の「夢探究」という授業。この授業では、20年以上ニホンミツバチの養蜂に取り組んできた地元のおじいさんと一緒に授業を作ったり、島外から来る生徒向けの説明会やオープンキャンパスの企画を受け持ったりしています。

    ほかにも、2022年4月から新設された「地域共創科」で、先生たちと一緒にカリキュラムを作ったりもしていますね。

    松原

    あっというまに、完成から約3ヶ月が経ちましたね。あれから、視聴覚室はどうやって使われていますか?

    山野

    使いこなせている部分と、まだこれからな部分の間にいる状態ですかね。

    機動性の良いキャスター付きのホワイトボードは、授業でもよく活用されていますね。前面の大きなホワイトボードは、まだ使いこなせていないことが多いかな。

    参考:隠岐島前高校ニュースメディア「今、3年生選択科目の「リベラルアーツ」が盛り上がっています」

    松原

    学生たちも、ホワイトボードを使いこなしている感じがしますね。

    山野

    あと、教卓も動かして使っていますよ。キャスターが付いている教卓って、あらためて面白いですよね。

    教卓って鎮座しているイメージが強かったのですが、動かせることでスペースを広く、いろんな形で使うことができるんだっていう気づきもありました。要するに、便利です!

    以前は、レイアウト変更が大変だったんですよね。

    ▲(上)リニューアル前の視聴覚室、(下)リニューアル後の視聴覚室。テーブルや教卓などの什器にはキャスターが付いており、簡単に移動することができます。

    山野

    3人掛けの机は2人いないと移動できなくて、授業のためのレイアウト変更で10分近くかかってしまうこともありました。

    今の机はキャスターが付いていて、生徒たちが自分でサッと動かして移動できる。

    5分もかからずにレイアウト変更ができるようになって、本当に助かっています。

    だから、視聴覚室を使わないときは机と椅子が捌けた状態にする、使うときは自分たちで机と椅子を並べて座る、というのが自然になってきています。

    最初のうちは、教室の入り口近くでモジモジしている雰囲気はありましたが、今では自主的に自分たちのやりたいことに適したスペースを、自分たちでつくるというのが習慣になりつつありますね

    八塚

    自分たちでスペースを作る習慣、というのが面白いですね。たとえば、具体的にどんな風に使っていますか?

    山野

    ワークショップ形式だと、机は無し、数人が椅子だけでキャスター付きのホワイトボードを囲むスタイル。

    授業形式だと、机を2〜3人で囲んで、前面の大きなホワイトボードにプロジェクターを映して…という感じでしょうか。

    もう少し人数が多いと、シンプルに椅子だけのスタイルもあります。

    二重の円を作って、フォークダンスのようにペアで話していく「トークフォークダンス」もやりやすくなりました。

    松原

    「トークフォークダンス」というスタイルがあるんですね。想像を超えた使われ方をしていてすごいなぁ。


    ▲ 視聴覚室のリニューアルプランは、学生・先生合同でワークショップを実施しアイデアを集めました。

    視聴覚室は、だんだんと開放された空間へ。

    ー 新しい視聴覚室の機能を使って、いろんな使われ方が生まれているんですね。ちなみに、他の部屋との使い分けはどんな感じなのでしょうか?

    山野

    学年全体だと視聴覚室を使います。1学年は大体60人くらいなので。

    レイアウトが作りやすいので、視聴覚室が取り合いになることもあるようです。

    学年を横断した利用となると人数が入り切らないので体育館を使っています。

    最近では、生徒の発案で視聴覚室を使った企画も増えていますね。

    例えば、先生を呼んで「あなたが生徒会長ならどんなことをする?」と質問して施策について考えてみるとか。

    参考:隠岐島前高校ニュースメディア「17日(金)、生徒会企画で「あなたがもし生徒会長だったら?」ワークショップを開催しました」

    松原

    以前は、使わないときには鍵をかける習慣があると聞きましたが、緩和されているんですね。

    山野

    鍵を掛けているときもありますが、開いているときも多いです。そろそろ、常時開放でもいいのかな。

    あとは、昼休みには、お昼ごはんを食べている生徒もいますよ。

    先生たちが職員室以外で仕事に集中したいときの場所としてのニーズもありそうですし、意図的にデザインしていくのもアリかもしれないなと。

    コロナ禍でしっかり距離を確保できる場所として、先生たちの職員会議でも使われているんです。視聴覚室の開放感でリラックスして参加できる面もあると思います。

    八塚

    あの視聴覚室って、学校の中でも一番景色が綺麗に見えるんですよね。

    山野

    そうなんです。

    このあいだDIYのワークショップに参加していた生徒に、写真を見せてもらう機会があったんです。

    ▲生徒さんが撮影した写真。先生たちが窓から外の景色を眺めているところなんだそう。

    生徒が撮ったこの写真、ワークショップの休憩時間に、先生たちが窓の外の景色を見ながら「やっぱりここ綺麗だよね」と言っていたシーンなんだそうです。

    「先生たちが子どもみたいに楽しんでいる姿が良かった」んだと。

    この部屋を作るプロセスが思い出に残っている生徒がいるんだな、と実感しましたね。

    一緒にものをつくるっていいなぁ、って改めて思いました。

    仕切りはヒトカラメディアの皆さんにお願いして、DIYは先生と生徒がフラットに参加できたワークショップだからこそ、だったからかもしれません。

    ▲視聴覚室の窓に映る外の景色はこんな感じ。絵葉書になりそうな景色が広がっています。

    生徒のアイデアから生まれた「トキメキ」というワード

    ー コンセプトだった「トキメキの開放」については、最近どうですか?

    山野

    個人的には、トキメキはDIYのときがピークだったかな…(笑)

    でも、いろんなところでトキメキのシーンは生まれていると思うんです。

    松原

    「トキメキ」って、事前のワークショップで生徒さんから生まれた言葉なんですよね。

    「やっぱりノリあうのが大事」「意見を出したときにノッてくれる人がいて欲しい」「ノリノリ、ワクワク…それってトキメキだよね」と。

    ▲「トキメキ」というキーワードは、生徒さんから生まれました。

    八塚

    心が動く場面は生まれていそうですよね。「ちょっといいよね」と切り出しやすくなる場面や関係って大事です。

    山野

    ちょうど9月の本番に向けて学園祭シーズンに入ったんです。チームに分かれてダンスをしたり、クラスの企画を出したり。トキメキとの親和性は高くなりそうですよね。

    学校には、取り組んできたことを振り返る”リフレクションタイム”という時間があるんですが、その時間が始まる直前に、視聴覚室にあるピアノでジブリの曲を弾いている子がいたんです。

    それをキッカケに「今日は久石譲の曲を掛けてみようか」と、音楽を聴きながらリフレクションタイムをやってみました。

    偶発的でしたけど、感覚としてはかなりトキメキに近かったんじゃないかな。

    松原

    めちゃくちゃ良いですね!偶然な感じもまた良い。

    「ないものはない。だったらつくればいいじゃん!」

    ー これから「もっとDIYでここをアレンジしたい」「こういう使えるようにしたい」という意見が出てくるといいですね。

    松原

    実はやり残したことがあって。

    本当はのれんを作りたかったんです。試しに、クロモジの粉※を送ってもらってのれんを染めて、なんて計画もしていたのですが、これは予算の都合で泣く泣くカットして。実際に綺麗に染まったんですよね。

    これに懲りず、「こんなの作れるよ」と、ワークショップをしてみるのも面白いかも

    ※隠岐・海士町では昔から「クロモジ」を使ったお茶「ふくぎ茶」が愛飲されています。

    山野

    いいですね。

    新設される地域共創科の授業では、DIYやものづくりを日常的に行いたいという話も出ていますし、採り入れていきたいですね。

    八塚

    知ってますか?学校って、日本全国で形が大体同じだし、机の大きさも決まっている。だから「学校ってこんなものだよね」という常識になってしまう。

    でも今回、今までとは違う空間や家具を自分たちの手で作ったことによって、常識が絶対のものではなくて、より良くできるものなんだと感じてもらえたんじゃないかと思います。

    これをキッカケに「お金がないから仕方ない」ではなくて、「なくても変えられるんじゃない?」という状況が生まれるようになると嬉しいですね。

    ▲視聴覚室には、既定のカタチにとらわれない家具が並ぶ

    山野

    「ないものはない。だったらつくればいいじゃん!」というのは、島の中でも大事にしたい価値観です。

    必要なものは十分ある。コンビニもスタバも映画館もないけれど、どうやって楽しむか。クリエイティブにつながりますよね。

    松原

    私自身、初めてこのプロジェクトの話を聞いたとき、なかなか挑戦的で驚きましたが、実際に設計してみて「学校ってこんなに自由なんだ」という発見もありました。

    山野

    特殊な学校ではあるとは思うんです。

    僕たちコーディネーターなどの”先生以外の大人”が学校にいるのは、まだ当たり前ではない。

    また、学校経営にもアドバイザーが複数人入っていて、普通では懸念を示されるような新しい挑戦でも、推進しやすい環境であるからこそ、生まれた企画とも言えます。

    島根県内では、僕らより前に職員室刷新で働き方の改善や多様化に取り組んでいる津和野高校の事例もあるんです。

    もしかしたら、学校にもそういう動きが広がっていくかもしれないですよね。

    参考:津和野高等学校 ツコウニュース「新職員室「センセイオフィス」が完成しました」

    大人の「やってみたい!」に生徒がノってもいい

    ー これは大人が聞くのは野暮かもしれませんが…今後、生徒たちの高校生活はどういう方向に面白くなっていくんでしょう?

    山野

    生徒たちは本当に多様で、それぞれにやりたいこと、考えていることがある。

    それに対して、多様な視点を持った大人たちがいるのが隠岐島前高校。生徒たちがトキメキを感じるタイミングを逃さずに、一緒に火を付けられる場面が増えるといいと思います。

    ただ、生徒たちのやりたいことを常に応援する、というだけではなくて、大人側の「これやってみたい!」に対して生徒がノるのような、状態がもっと生まれても良いなと思うんです。

    フラットに挑戦し合う・学び合う状態に近づいていくとより良いのかな。できるだけ境界線が溶ける、混ざるというのが次のフェーズだなと思います。

    ▲山野さんの田んぼでの1ショット

    実は僕、去年から田んぼを始めまして。たくさんの生徒たちに手伝いに来てもらって、彼らなしには成り立たないくらい(笑)最近では、生徒の方から「田んぼ、大丈夫ですか?行きますよ」と声を掛けてくれるんですよ。

    松原

    お互いノリ合ってる感じがしますね!

    山野

    視聴覚室の使い方は、まだまだいろんなバリエーションがありそうです。

    ホワイトボードに描かれた島の地図も活かしたい。こちらが決めていくというよりは、いろんな人に意見を聞きながら考えていきたいです。

    境界線が溶けてフラットにチャレンジしたり、ノリ合ったり、という視点で見たときに、どんな使い方ができるか。試し甲斐がありそうです。


    参考/

    島根県立隠岐島前高等学校ホームページ

    高校魅力化プロジェクトホームページ

    取材・文/照屋有理子

    編集/ヒトカラメディア編集部