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2023/3/6

大切にしたい働き方を共に描く! オフィス移転をただの引越しにしないための『オフィスづくりワークショップ』

オフィス移転をメンバーが自分ごと化できるプロジェクトにし、さらには事業をより前進させるための好機にするべく、移転前後にワークショップに取り組む企業や組織が増えています。ヒトカラメディアにはメンバー参加によるワークショップを提供する専門家が2名在籍しており、オフィス移転の要件を定め、空間設計に落とし込んでいく『オフィスづくりワークショップ』をひとつのソリューションとして展開しています。メンバーを巻き込みながら実施するワークショップにはどんな効力があるのか?ワークショップの前後にどんなことが起きているのか?まずは近年の実施事例について話を伺いながら、『オフィスづくりワークショップ』のヒミツを紐解きます。

ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー

1.これまでのワークショップ事例から見えること

――まずはじめに、これまで実施された『メンバー参加型ワークショップ』について、具体的にどんなことをやられてきたのか、いくつか事例を教えてください。

八塚裕太郎(以下「八塚」):移転をお手伝いした出版社の事例ですが、もともとは移転先のビルを探す仲介を依頼されて動いていたんですね。でも、立地の利便性やガス設備の必要性など、現場メンバーからさまざまな要望が出てきてしまい、そこで改めて仕切り直しをして、まずは“決め方を決めよう”ということで社員の方全員を巻き込んだワークショップを開催することになりました。

経営側としては、営業や編集といった各部門がフロアで分かれているが故にコミュニケーションが取りにくくなっているうえ、ビルも老朽化していたので、新しくワンフロアのオフィスに移転したいという願いがありました。現場メンバーのみなさんとまずは、今のオフィスでの想い出を振り返り、新たな協力を生み出していくうえで大切なことは?そのためにはオフィスにどんな場所があったら良い?といった問いかけをしながら、新しいオフィスのあり方について話し合いました。そのうえで、それを実現するにはどんな立地がふさわしいのか?どんな建物であることが必要なのか?移転先の要件をまとめ直すことで、無事に移転先を決めていくことができました。バラバラに意見を集めてしまうと、決め方が難しくなってしまうので、問いを投げかけながら、お互いの意見を聞き合い、お互いに納得した方針をつくっていくことが大切だと思っています。

――もうひとつは、ぜひ島根県の視聴覚室プロジェクトについてお話しいただきたいです。

八塚:隠岐島前高校のことですよね。これは島根県隠岐島にある隠岐島前高校に『地域共創科』という学科が新しくできることからお声がけいただいたプロジェクトです。この学校がある島根県海士町では町全体で“ないものはない”というキーワードを掲げていたりするんですが、『地域共創科』でも、地域の人と関わりあいながら自分たちに必要な未来を“共創”していこうという取り組みをしています。場所としては、学校の視聴覚教室が使いにくくなっているという現状があったので、その空間のリニューアルを生徒たちと一緒に考えて作っていきました。

先ほどの出版社の事例でもそうですが、「カウンターが欲しい」とか「広いテーブルが欲しい」とかそれぞれの立場や個人から要望を言い出してしまうと、要件や落としどころが絶対に見つからないんですよね。家族の家づくりも同じだと思いますが、まずはどんな過ごし方をしたいのか、どんなシーンを生み出していきたいのかを共有してお互い合意した上で次に行かないといけない。まずは洗い出しから始めて、イメージをすり合わせていくことが大事だと思っています。

このプロジェクトでもそういった過程を大事にしながら進めていったのですが、その中から生まれたもののひとつがキャスター付きの教壇です。普通、教壇というと教室の前方で一段上がった場所にあるし何となく脅威に感じるものですよね。それにキャスターを付けることで逆に教壇の方から生徒の中へ入っていくようなシーンが想像できるようになり、教室の正面もひとつではなくなって、テーブルやホワイトボードと組み合わせていろんなレイアウトやシーンが生まれるようになりました。このプロジェクトではオリジナルの家具を生徒の皆さんと先生方と一緒につくれたこともポイントだったと思います。

――斎さんが担当されたプロジェクトについても教えてください。

斎 絢矢(以下「斎」):2021年に担当させていただいたAIQさんでは、オフィスの仲介やワークショップだけでなく内装設計、工事まで一貫してヒトカラメディアで携わらせていただいたのですが、AIQさんのタイミングとして、より攻めのカルチャーに変えていきたいという思いが経営陣の方々の中にありました。空間も使いながら社内の流れや雰囲気を変えていきたいと。それで、ドデカいステージが真ん中にあるオフィスが出来上がったのですが、これをそのまま引き渡してしまうと「何これ?」となってしまう恐れがあると思ったんですね。これがなぜここにあるのか、どう使えばいいのかがちゃんと伝わらないとステージが置物になってしまう可能性があるんじゃないかと思いました。そこで、使う人の中にこの空間を馴染ませると同時に、新しく掲げた会社のミッションやビジョン、バリューを社員さんたちが個々に引き寄せてもらえるようなワークショップをやりました。

――なるほど。場づくりの後にワークショップを行うというパターンもあるんですね。実際にどんなワークショップを行ったんですか?

斎:まずは、役員の方にオフィスに込めた思いやどんな思いでこのオフィスを考えたのか、というのをその人の言葉でたっぷり語ってもらうところから入っていきました。その上で新しいミッションやビジョンを共有して、社員の方々の経験や体験と繋げていくようなワークショップをやっていきました。私は八塚さんの影響を受けている部分が大きいですが、オフィス設計でもミッションやビジョンの構築でも、まずは個人の皆さんの体験から振り返って語ってもらうところから始めるのを大事にしています。まず、ミッション・ビジョンのような会社の方針と自分自身の体験を繋げてもらったうえで、次に「じゃあこのオフィスを使ってどう実現していく?」というのを考えて話してもらっています。

AIQさんのワークショップの後に「オフィスってそこにあるのが当然で、どう使うかなんて意識したことがなかったけど、“空間がどう成り立っているのか”とか“自分たちがそれとどう接続していくか”を踏まえて空間を見ることによって捉え方が変わりました。会社が変わっていくタイミングで、自分の働き方も変えながら意識的にチャレンジしてみたいと思います」といったコメントをいただいてすごく嬉しかったですね。

八塚:ビジョンも空間も、メンバーそれぞれの中で腹落ちしている事がすごく大事だよね。

斎:ホントそうですね。過去の体験を振り返りながら、”自分と会社”、”自分と空間”の重なりを感じてもらうからこそ、出来上がった空間を主体的・能動的に使ってもらえると思っています。そういった意味で最近インパクトが大きかったのは渋谷レックスさんのプロジェクトでした。

2.ワークショップを通じて会社全体の肯定感がアップ!? 

――福島県で製菓の卸業をされている老舗企業・渋谷レックスさんですね。このプロジェクトは最近、社内の表彰制度でMVA (Most Valuable Anken)も獲得した案件でしたね。

斎:はい。渋谷レックスさんの移転プロジェクトでは、新しい空間のテーマとして「チャレンジする風土の継承」という言葉を掲げていたのですが、それをそのまま伝えてしまうと、私たちや渋谷レックスの経営陣など企画者と、現場の皆さんとの間に少しギャップが生まれてしまうと思ったので、ワークショップでは「1ミリでもはみ出してチャレンジしたことって何かありますか?」というのを問いとして投げかけながら、話したり手を動かしたりしていただきました。最初は「チャレンジってあるかな・・・」みたいな感じだったのですが、少しずつ出てくるようになって、結果として小さなものから大きなものまでいろいろチャレンジしてきた事が分かりました。それを目の当たりにして役員陣は涙…みたいな(笑)。ワークショップを通して全体的な肯定感が高まったように感じましたし、「自分たちって頑張ってきたじゃん」「チャレンジできる会社だったし、自分たちだったんだね」というのを自覚してもらうきっかけを作れた事はすごく大きかったと思います。

――それで、「チャレンジする風土の継承」という言葉がそのまま渋谷レックスさんの中長期戦略のビジョンになったんですよね。

斎:そうなんです。ただのワークショップテーマだったものが、経営・現場双方にとって馴染みのある”自分達の言葉”になったのは嬉しかったですね。渋谷レックスさんのインスタグラムアカウントを拝見していると、社員の皆さんが自発的に日常を発信されていたり、ハッシュタグにも『#チャレンジ』と入っていたり、少しずつアクションが生まれてきているな・・・!というのも感じています。その小さなチャレンジのハードルを超えていくことが、次の大きなチャレンジに繋がっていくのでは?と思っているので、嬉しい変化です!

――オフィス移転のためのワークショップというより、もはや組織課題や経営課題にも効くようなワークショップですね。

八塚:組織方針と空間にギャップがある、というケースは結構多いんですよね。だけど、経営側が問題を解決しようとして、いきなり「さあ、みんなで課題を出し合いましょう!」となってもどのレベル感で話していいかわからないし、両者にとってあまり良いことはない(笑)。でも、「新しいオフィスについて話そうよ」となるとお互いのハードルが下がって話しやすくなるんですよね。大義名分としてオフィスづくりのためのワークショップではないのですが、組織が次に進むためのきっかけになると思います。

3.必要なのは、別々の価値観がありながらも同じ空間を使い倒せるスキル

写真(上):現在、PJ推進中の「フォーク株式会社」でのワークショップ風景

斎:私たちがやっているワークショップは、1社のオフィス作り以外でも、たとえば、新しいビルを建てる時の商品企画や、所属の違う人たちがひとつのビルに集う状況の中で共通認識を作る時などにも応用しています。今って必ずしも会社や組織単位でオフィス空間が成り立っていないこともあるし、チームや部門、企業を超えた繋がりを働く空間を通して作っていけたらいいなと。

八塚:そのために、まずは、どんなメンバーがいて働き方や場所に対してそれぞれどんな考えやスタンスを持っているかを把握しないといけない。

――確かに、同じ会社に所属していても働き方も働く場所も異なっていることが普通になってきているし、企業もそれを受け止めることが前提になってきています。オフィス空間はそれをどう束ねるかということがより求められるようになっているということですね。

八塚:そうですね。だからこそ、我々がやっているようなワークショップが有効だと思いますし、別々の価値観がありながらも共通認識を持って同じ空間を使い倒せるスキルが働く上で必要になってくる。現代の大人たちにこそ“共創学科”が必要なのかもしれないですね。


編集/ヒトカラメディア編集部