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2024/11/15

全社員が思いとアイデアを集結させて自社の「らしさ」を見つめ直す。 名古屋・丸天産業のCIリニューアルプロジェクト 

丸天産業は、名古屋の地で約75年に渡りオフィスや教育施設などの移転・リニューアル、働く環境のデザインを手掛けてきました。この度、ヒトカラメディアでは名古屋市立大学で働く場や働き方の研究を行なっている佐藤泰氏と共に、丸天産業の「CIリニューアル」のプロジェクトを支援しました。どのような経緯で「CIリニューアル」を担うことになったのか、空間とCIのリニューアルにはどんな結びつきがあるのか・・・。「オフィスづくりワークショップ」の専門家として数々のプロジェクトを先導してきたヒトカラメディアの八塚とプロジェクトチームの皆さんと共に、新しいロゴが誕生するまでの軌跡をここで振り返ります。

ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー

▲名古屋市⽴⼤学⼤学院 芸術⼯学研究科 建築都市領域 講師/博士(人間科学) 佐藤 泰 様(左上)

1. オフィス空間とロゴ、どちらも”らしさ”を表現する大事なもの

――これまでオフィスの内装デザインを手掛ける流れで、クライアントさんのCIのリニューアルを担うことはありましたが、CIだけをお手伝いするのは今回が初めてになります。佐藤先生は、なぜヒトカラメディアへお声がけいただいたのでしょうか。

 

名古屋市⽴⼤学⼤学院・佐藤 泰 様(以下「佐藤」):ヒトカラメディアさんとの出会いは去年行われたオフィス学会のパネルディスカッションでした。そこで八塚さんに登壇いただいたのですが、八塚さんがずっとやられているオフィスづくりのアプローチと丸天さんが今回オフィス作りやCIリニューアルでやろうとしていることが合致するとまず思ったんですね。本当の意味で“そこで働く人のためのものづくり”をされていて、そんな八塚さんだったら今回のプロジェクトをどう導いていくんだろう・・・という期待がありました。あとは、直感ですね(笑)。「八塚さんなら絶対盛り上がりそう!」という、人の部分も大きいですね。

ヒトカラメディア・八塚(以下「八塚」):ありがとうございます(笑)。確かにロゴだけを担うのはこれが初めてになりますが、「社員全員の参加型で新しいロゴを作りたい」という構想を伺って、それなら出来るかもしれないと思ったんですね。オフィス空間とロゴ、どちらも自分たちの在り方や働き方を実現していくためのものです。デザインの専門的な部分に関しては、我々が東京・下北沢で運営しているワークプレイス「SYCL by KEIO」の入居者であるアートディレクター・安川宏輝さんにプロジェクトに参画いただき、丸天さん社内外横断チームとして「丸天ブランド向上委員会」を設置して進めていく形となりました。

 

 

――丸天さんの新社屋は2023年6月にすでに完成していて、日経ニューオフィス賞も受賞された素晴らしいオフィスですが、新社屋の建設とともにCIをリニューアルするという計画はもともとあったのでしょうか?

丸天産業・圡方 亜紀 様(以下「圡方」):はい、ありました。オフィスとロゴ、どちらも“お客様に見えるビジュアル“です。我々らしさを表すツールのひとつとして、同タイミングで刷新できたらという考えがありました。一方で、旧ロゴ自体が積極的には使われなくなってきたり、旧ロゴに秘められた当初のストーリを語れる人も少なくなっており、刷新するにも結構大変になりそうだな・・・ということは感じていました。そんな中、新社屋の建設は、全社員が一丸となり我々らしい働き方や「これからもっと変化していこう」という共通認識をもてる機会にもなりました。社員数がここ数年で増えている中、自分たちが大切にしたい「丸天らしさ」を今一度見直す必要性を感じていたこともあり、その思いや気づきをもとに早い段階でCIを考えていこうということになったんです。

※全社員参加のワークショップ

2. ”自分たちらしい良い仕事”をシェアすることから始まる、全社員ワークショップ

 

ーー新しいCIを策定するために、八塚が全社員参加型のワークショップを3回ほど企画しました。最初は戸惑いもあったそうですね。

圡方:そうですね。新しいCIを考えるために集まったのに、最初は自分や丸天の仕事の振り返りをやったりして、ワークショップというもの自体に慣れていない社員もいて、最初は戸惑ったメンバーもいるかもしれませんね。自分たちのこれまでの仕事に対して「GOOD」と「MOTTO」を発表する、というワークショップもあったんですが、丸天らしい良い仕事(GOOD)、未来へ向けてもっとこうしたいこと(MOTTO)って何だろう、ということを全員で考える良い機会になりました。人によって度合いは違うかもしれないですが、あの体験が材料になって新しいロゴを作り上げられた、みんなで考えたことが未来をつくっていくんだ、という感覚を多くの社員が感じていると思います。

八塚:丸天の未来の姿を雑誌にしてみよう、ということで「妄想マガジン」の表紙を作るワークショップもやりましたね。そこで得たイメージをもとに2回目からは実際にロゴのアイデアを出し合って、デザイナーの安川さんにレクチャーいただきながら図案化していく作業をやっていきました。

ーー佐藤先生の研究室で学ばれている学生さんも、今回プロジェクトに参加してくださったんですよね。

佐藤:はい、主に後方から支援させていただいた形になりますが、コアメンバーでのミーティングでは外部目線・学生目線での意見をさせていただいたり、プロジェクトの進捗やワークショップの様子について社内に発信する「ふりかえり記事」を作らせていただいたりしました。ロゴ案もいくつか出させていただいてます(笑)。 

※135案のなかから絞られたロゴ案

八塚:たくさん集まったロゴのアイデアについて委員会で議論する時、もちろん社内メンバーの意見は第一に考えるのですが、佐藤先生をはじめ外部から参加しているメンバーには“外から見た丸天”という視点でコメントも随時出していただくようにしていました。外からはこう見えてるよ、ということも理解しながら議論できるところが、社内だけで進めるのとは違った成果に繋がっているんじゃないかと思います。

佐藤:最後に残った3つのロゴ案の中に家紋のようなデザインのロゴがあったと思うんですが、そこからさらに絞り込んでいく段階で僕が印象的だったのは、その家紋ロゴに対して丸天の社長が「この案も素敵だけど、やめておこう」と言ったことです。丸天は一族経営の企業なのですが「丸天はもう天野家のものじゃなくて、社員みんなのものだから」と。最終的に決まったのは未来に向けたストレッチを期待できるデザインでした。ひとつの企業が腹をくくったというか、僕はそこに新しい一歩を踏み出した瞬間を見たような気がしました。

※最終決定ロゴ

 

3. 同じ文脈の中で空間とロゴを考えていくことの価値 

佐藤:このプロジェクトを建築学科の卒論としてゼミ生がまとめていて、さっきその彼にも伝えていたんですが、オフィスってけっこうお金かかるのに、ちゃんと使われてないことの方が多いんですよね。僕は長年オフィスについて研究していますが、残念ながらホントにオフィスって思ったように使ってもらえません。使ってもらえるようなオフィスを作り、そのファシリティを会社の組織や風土にも寄与するような形にするには、やっぱり中の人がどれだけ思いを込めてオフィスを作るか、思いの反映された空間にできるか、がすごく大事になってきます。だからこそ、今回の丸天さんがこのタイミングでCIをリニューアルできたことは、新オフィスの裏に込められた会社の思いやビジョンをより深く理解することにつながったはずで、社員さんたちがせっかくできた素敵な新オフィスを”使い倒していく”ためにも良かったんじゃないかと思いますね。

八塚:新社屋の建設に続くCIのリニューアルで、とにかくものすごい量のコミュニケーションが必要となり、委員会の方々だけでなく、丸天の皆さんがすごく大変だったんじゃないかなと想像しますが、私もやはりこの2つを同時期に動かしたことは良いことしかなかったと思いますね。空間のリニューアルとCIのリニューアルって、分けて考えることが多いですが、どちらも組織として何を目指して、どんな行動を大切にしていくのか?言葉にして、具体化していく取り組みです。なので、同じ文脈や流れの中で考え直すことには価値があり、愛着を持って、自分たちがどんどん使いたくなる空間とCIを作り上げることに繋がると思います。 

[ COMMENT ]
アートディレクター・安川宏輝さん(一般社団法人 ZUAN UNION / 図案連合)

丸天産業のみなさんが、自分たちであたらしいロゴを制作されるということで、私はデザインやアートディレクションの専門家としてアドバイスをさせていただきました。想いや考え方をどう図案やロゴに入れ込んでいくか、具体的な思考方法などを、ワークショップに落とし込んで、レクチャーさせてもらったのですが、135案も集まることは想定外でしたし、私の普段しないアプローチからの素敵なデザイン案がたくさんありました。プロがつくるものは、確かさがもちろんあるわけですが、今回はそっちを選ばなくて良かったなと思いました。

丸天さんのオフィスでは、みなさんすごく楽しそうに働いているんですよね。自分たちでは気づいていないのかもしれないけれど、それって当たり前のことじゃないですよ、という話もさせていただきました。そんな風に働くことができる方たちだからこそ、やりたいと思うものをちゃんと実らせてあげたいと思いましたし、今回、私は、自分たちでつくりあげたものをみんなで「これいいよね」って言える瞬間をデザインしたんだと思います。「いいね」って言いたいですよね、やっぱり。僕は今回「いいね」って思えましたし、そこへ一緒に辿り着くことができてすごく嬉しかったです。


取材・文/ヒトカラ編集部