賃貸契約後に内装工事をするオフィスとは異なり、内装工事が施された状態で契約する内装付きオフィス。
内装工事費用が不要な点、契約後にすぐ入居が可能な点などを魅力に挙げる企業が増え、近年、移転先の選択肢として急激にニーズが高まっています。
供給数も増えているなかで、ヒトカラメディアが手掛ける内装付きオフィスはどうやって企画を立て、どう差別化しているのか? 驚異の成約率を誇る企画チームに、「強み」について聞いてみました。
ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー
キーワードは「コスト削減」「流動性」「選択肢の増加」
ー 「内装付きオフィス」とは、どういうものなのか教えてください。
三川内装付きオフィスとは、ビルオーナーさんの費用負担で入居しやすいビルを企画、内装を作った状態で貸し出すものです。セットアップオフィスとも呼ばれています。
一般的には、内装付きオフィスをつくるプロジェクトではデザイナー、工事業者、リーシングとチームが分かれることが多いのですが、ヒトカラメディアでは、企画・設計・施工・リーシングと、一気通貫してプロジェクトを担当することが多いです。
ー 最近、この内装付きオフィスというものを良く目にするようになりましたね。
三川そうですね。特にコロナ以降、内装付きオフィスの物件数は顕著に増えています。コロナを経て、移転先を探しているお客さんの意識にも変化が見られます。
まずは、コスト削減。
オフィス移転にかかる初期費用やランニングコストに対する意識は、よりシビアになっています。特に、成長過程の企業では、オフィスよりも事業にお金を使いたいことも多い。企業のフェーズによって需要も異なります。

伊藤いままではオフィスに必要な面積も、人数×◯坪、といった単純な計算をしていたのが、リモートワークが広がり、しっかりと検証する企業が増えました。
情報を得る機会が多くなったことで、選ぶ側の知識レベルも高まっていると思います。
ー シェアオフィスやコワーキングスペースなど自由度の高いオフィスを検討する企業も増えたように感じます。
三川オフィスにも流動性が求められるようになっています。
例えば、事業拡大による大幅な人員増加も考えられますし、今後も今回のコロナのように大きく働き方が変わる可能性もある、という認識が生まれました。2年契約、5年契約などの縛りはリスクと捉えられることが増えました。
また、オフィスにはつきものである原状回復、契約してから入居までに必要な内装工事による時間的制約がネックになることもあります。
さらに、働き方のバリエーションが増えたことにより、オフィスの選択肢も広がりました。
シェアオフィスやコワーキングスペースなど契約形態が柔軟なフレキシブルオフィスもたくさんありますし、事業のコア部分だけをオフィスで行い、あとはリモートワークというスタイルも取ることができます。
つまり、従来のオフィスの在り方から、ニーズが大きく変化したといっても良い状況なんです。
ー いままでのオフィス市場と同じ感覚では、借り手がつかない可能性があるんですね?
三川情報が増えたことと、コロナによる空室率の増加によって、競合が非常に多いのが現状です。従来のオフィスの運用方法を取っていたビルオーナーさんからすると、リスクが高まっています。

賃料の減額はもちろん、フリーレントやADを付けたり、内装工事費用をオーナー側で負担したりと、差別化のために金銭面でのメリットを訴求することも増えました。
この場合、価格競争を招き、本来貸せるはずの金額で貸せなくなるデメリットが大きい。
原状回復費用の免除や解約予告期間の短縮など、テナント側からニーズのある柔軟な契約形態に取り組むという対応もあります。
この場合は、入居が決まりやすい反面、退去されやすい状況も生み出し、空室のリスクを高めることにも繋がります。
どの方法もメリットとリスクがあります。
狙うべき結果と状況に応じて、適切な手法を選択することが大切なんです。
あえてターゲットを絞る、ヒトカラメディアの内装付きオフィス企画
ー 市場には、いろんなタイプの内装付きオフィスがあると思うんですが、ヒトカラメディアの内装付きオフィスの特徴はなんですか?
三川明確にターゲットを設定したオフィスを作っていることです。
一般的な内装付きオフィスは、汎用性のあるレイアウト、ホテル風やカフェ風のおしゃれな内装、家具付き、会議室付きなど、ターゲットの間口を広く設定した企画が多いんです。
ヒトカラメディアが手掛けるのは、狭いターゲットを狙ったオフィス。かなり具体的なターゲットを設定して、「刺さる人には刺さる」物件をつくります。
オフィスのある街にどんな企業があって、どんな人が好んでいて、どんな物件があって、どれくらいの価格にすると競合がいなくなるか、という考え方でターゲットを決めています。
20坪弱の2フロアをセット貸しすることを前提に企画した恵比寿のプロジェクト。テーマは「収束と発散」。
ー ターゲットを絞ると、正直不安な気持ちも…。「刺さらない」ことはないんですか?
三川ここが、ヒトカラメディアの一番の強みです。
私たちは普段からオフィス仲介業務やテナントに対しての内装提案、ビル管理業務も行っています。だからこそ、実際に使っているテナントさんや、オフィスを探している企業から聞く具体的なニーズを把握できる。だから、実際に企業のニーズに応えられ、かつ仲介プレーヤーが紹介しやすいものはどういうものか、という観点を持って企画しています。
つまり、机上の空論にならない、具体的なターゲット設定が実現できるんです。
あと、刺さらない人には刺さらないですが、最終的に入居するのは1社だけ。
ターゲットを絞るのを怖がらず、刺さる人の歩留まりを上げることを大事にしています。最近の事例では、11社内見して4社から申し込みが入ったオフィスもあったんですよ。
ー 11社内見して4社から申し込み!すごい刺さってますね!
三川ターゲットを絞ることによる大きなメリットは、価格競争にならないこと。似たようなオフィスがなければ、比較されることもありません。
テナント側からすると、内装工事が必要なく初期費用が抑えられる。契約期間にも縛りを設けていないので、比較的自由度が高い点も、コロナ後の需要に合致しています。
ターゲット、内装のストーリー、賃貸条件のバランスが取れていることが大事です。

事例)20坪弱の2フロアをセット貸しすることを前提に企画した恵比寿のプロジェクト。テーマは「収束と発散」。結果、4社からの申込みがあり、飲食企業がトレーニングルームを併設したオフィスとして契約することとなった。
伊藤お客さんからのオーダーで作るオフィスとはまた違う。
テナント募集のための企画なので、あくまで「自分たちの作品」にならないように気をつけています。
ー テナント募集も担当しているんですよね。
三川はい、そうなんです。
テナントさんを決めるところまで自分たちで担うことで、そのオフィスの強みをしっかりと伝えることができます。
内見の立ち会いの際も、具体的な使い方も合わせて伝えると「すごくイメージが湧きました」と言ってもらえることも多いです。まだ工事中の場合は、イメージパースを見ながら説明することもあります。

伊藤テナントさんの入れ替わりのタイミングでは、内装付きオフィスならテナント退去が決まったタイミングからすぐ、入居中のイメージのままでご案内を始められます。
これは、内装付きオフィスならではの強みのひとつ。結果、賃料が発生しないダウンタイムを短くすることができるんです。
内見する側としても働くイメージがしやすいですし、一般的なオフィスでは必須となる、内装工事による”賃料が発生しているのに使えない期間”をなくすことができる。オーナーさんとテナントさん、双方にメリットがありますよね。
日常のビル管理業務が内装付きオフィス企画に活かされる理由

ー ビル管理業務も請け負っているとのことでしたが、内装付きオフィス企画というサービスとのつながりがイメージできません。
三川まあ、まったく同じフィールドの業務というわけではないですね(笑)ただ、相互にとてもシナジーがあるんですよ。
私たちは、ビルのテナントさんと同じ目線で話し、相談相手になることをスタンスとしてビル管理をしています。
たとえば、日頃からSlackやメッセンジャーなどのツールを活用したり、テナントさんの新しいサービスを使ってみて連絡したり。テナントさんの”ファン”になるんです。そうやって日頃からコミュニケーションを取っていると、テナントさん側も連絡のハードルが下がって、小さなことでも声を掛けてもらえるようになる。
いわゆる“ビル管理”のサービスの枠を飛び越えて、テナントさんの事業成長を後押しする存在でありたいんですよね。
ー 思っていたビル管理業務とはまったく違いました…!
三川「こんなことやりたいんだけど…」と声を掛けてくれた企業さんに、別のビルのテナントさんをご紹介して、実際にビジネスにつながったこともあります。
そうやっていると、テナントさんの声をリアルタイムでキャッチできるようになる。現場でどんな新しいニーズが生まれているか、どんなことがネックになっているか。これが企画に活きてくるんです。
「ニーズを拾って、これからの貸し方に活かす」というサイクルを期待して、ビル管理を委託してくれたディベロッパーさんもいるんです。
今までの慣習にとらわれない、新たな可能性を探していきたい
ー 内装付きオフィスは、これからより成長していく市場。今後、どんな展開を考えていますか?
伊藤これまで、オフィスビルの貸し方・借り方は業界独自の慣習が非常に多かったんです。
既存の価値観にとらわれないオフィスビルの使い方の企画や、リスクの低い契約形態の企画を検討しています。
それによって、オーナーさんにも、テナントさんにもメリットのある提案ができると思っています。
三川そして、オーナーさん、テナントさんともに、事業をサポートする存在でありたいです。
オーナーさんとテナントさんはもちろんのこと、テナントさん同士を結びつけてチャンスを生み出したいと思っています。
組織課題を解決するワークショップなどもしていきたいですね。

取材・文/照屋有理子
編集/ヒトカラメディア編集部
ヒトカラメディア
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