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2021/11/11

移住して1年、街はどう変わった? 島根県雲南市『オトナリ』管理人インタビュー 

2020年10月末に島根県雲南市の商店街にオープンした『オトナリ』。 市外の企業が雲南市の課題を一緒に解決するプロジェクトの一環として、「商店街に賑わいを取り戻す」を目的に生まれた、空き家を改装したワークスペースです。

  オープンから1年が経ち、『オトナリ』と街はどう変化したのか? 東京から移住した管理人・大塚さんに『オトナリ』と雲南市の現在を語ってもらいました。 

ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー

    オトナリは、近所のママさんや高校生にも利用されている仕事場

    ー 移住したのはいつでしたっけ?

    移住したのは、2020年9月ですね。コワーキングスペース「オトナリ」が運営を始めてちょうど1年が過ぎたところです。

    ー この1年、どうでしたか?

    移住して大変だったことは、冬が想像以上に寒かったことですかね(笑)去年は雪も20cm近く積もってビックリしました。

    ー 最近の『オトナリ』はどうですか?

    週イチでコーヒーを振る舞う方が来てくれて、カフェのように使ってくれる人も増えています。

    最近は、近所のママさんやお父さん、高校生の利用もあります。家にいると農作業や家の用事を頼まれて集中できなかったり、落ち着ける場所がないから、という方も多いですね。

    イベントでは演劇をやってもらったり、キッチンでスパイスカレーを作ってもらったり。スパイスカレーは大人気で「次はいつ来るの?」とリクエストがあったほどです。

    ー 東京近郊からの引っ越しは初めてだったそうですが、環境には慣れましたか?

    わりと順応する方なんですよね(笑)変に事前のイメージを持っていなかったのが逆に良かったのかも?

    雲南市は僕と同じく移住してくる人も結構いるんです。市としても引っ越しを希望する人向けに空き家ツアーをやったり、オンラインで雲南の暮らしを紹介したりと、移住者を受け入れてくれる体制が整っているんですよ。


    「チャレンジ」から「ちょっとしてみたい」へのチューニング

    ー 『オトナリ』って「ちょっとしてみたい、を応援する」っていうコンセプトですよね。1年運営してきて手応えはありますか?

    いまは「ちょっとしてみたい」ですが、実は最初は「チャレンジ」という言葉を使っていたんです。

    そもそも雲南市は「チャレンジの街」を掲げていて、子ども、若者、大人、企業それぞれがチャレンジしてもらえるような施策を打っています。計画段階では、そのチャレンジを横でつなげたり、前に進められるような場所になるといいな、と思っていました。

    でも、実際に運営をスタートしてみて「チャレンジ」という言葉がハードルになっていることに気付いたんです。

    ー 「チャレンジ」という言葉そのものがハードルになっていると

    チャレンジと聞くと”起業”や”街全体でイベント”なんて大きなことが浮かんでしまいますけど、それだけがチャレンジじゃない。「ちょっとしてみたい」という気持ちはきっと皆持っているはずで、表に出てくる濃淡が人によって違うだけだと思うんです。

    「チャレンジ」ってなんなんだ?って考えた1年でもありましたね。

    ー たしかに、人によって「ちょっとしてみたい」から一歩踏み出すまでにグラデーションがありそうですね。

    『オトナリ』はチャレンジへのハードルを下げる場所だと思っています。

    何をやってもいい空間、高くない費用、仲間が見つかりそうな雰囲気など、ハードルを下げる要素を提供して「ちょっとしてみたい」を実現してもらう。

    当初、『オトナリ』には、”街には少ない要素”を作ろうと思っていました。例えばカウンター席。スタンディングの高さやキッチンと対面の設計って、周辺のお店には少ないんです。

    そうしたら、以前バーテンダーとして働いていた人が、カウンター席を使ってバーをやってくれました。閉店してしまったカフェが1日だけ復活したことも。調理中もお客さんと対面で話せるのが良かったと言ってもらえて、設計の意図通りだなと嬉しくなりました。

    バーテンダーイベントでは、夜な夜な語らう時間が生まれた

    ー まさに「ちょっとやってみたい」が実現しているんですね。

    そうなんです。その他にも、『オトナリ』の入口に設置している屋台には、週1回コーヒーを振る舞う方が来てくれています。以前からスポットでコーヒー店ができる場所を探していたそうですが、条件やご自身のライフスタイルに合う場所が見つからなかったとか。

    そんな矢先、『オトナリ』に置いてあった屋台を見て「ここだったらできるかも」と思ってくれたんだそうです。

    実際に作ってみて、使ってもらって、音楽で言う”B面”を見せられる場所って大事だなと思いました。”B面”を本業にするのはハードルが高くても、たまになら「やってみよう」と思える。それも人によって、ちょうどいい距離感があるんですよね。

    ー 雲南の人たちから出た「あったらいいな」という希望も実現したと聞きました

    そうなんですよ。『オトナリ』の企画段階で、街の人と一緒に、どんなことを実現したいか、アイデア出しのワークショップをしたんです。

    そのなかにあったのが「スナックやりたい」。

    実際にアイデアを出してくれた方ではなかったんですが、オープン後、1番最初に開催したイベントがスナックでした。不思議な縁ですよね(笑)

    ワークショップ時に出たアイデアのなかにある「スナックをつくりたい」が実現

    雲南の人たちの働き方に合わせた新たな仕組み

    ー 運営をはじめる前の想定と実際に運営してみて変わってきたことはありますか?

    オープン前は、フリーランスやリモートワークの方のワークスペースとして使ってもらいたいと思っていました。ただ、オープンしてみると、毎日通う利用者の方は意外と少なかったんです。

    一方で、出張や週末などのドロップイン利用の方が多いこと気付きました。

    ”平日毎日”ではなく、”土日メイン、たまに平日”の需要が高かったんです。

    ー 東京とは働き方が違った、ということでしょうか?

    そうですね。当初は東京の人の働き方をイメージして仕組みを作っていたんですが、雲南の人たちの働き方を観察していたら見えてきたポイントです。

    それを踏まえて、月額の契約プランの他に「月に8回使えるチケット」を作りました。

    『オトナリ』はなんでも許容してくれる場所。何をやっていてもちょっと応援してくれるし、逆に何かを制限されることもありません。

    こういう場所って、街にはあんまりないんですよね。そこが”たまに使いたい”という需要に合っているのかなと思います。

    ー 街の様子を肌で感じながら調整をしているんですね。

    今後、誰かを連れて使える「オトナリさんチケット」みたいなものも考えても良いかもしれないですね。関わってもらえる人がどんどん増えると良いなと思います。


    課題先進地域・雲南と『オトナリ』の未来

    ー オトナリは、JR・木次駅からは徒歩3分。商店街のなかにあるんですよね?

    はい、そうです。

    ただ、商店街と言っても既に商売をやめてしまったお店も多くて、商店だったスペースの多くが住んでいる方の駐車場になってしまっているのが現状です。木次の街自体にも空き家が多く、跡継ぎもいない。「次をどうする?」という話が山積みです。

    木次商店街の通りに面して暖簾を掲げる「オトナリ」

    「次をどうする?」というと?

    このことについては、街の全員が当事者なんですよね。

    ただ、問題とは感じていても、言い逃げできるような環境ではありません。声を上げたら自分が担い手にならなければいけない。かと言って、「だから言わない」では街が先細っていくばかりです。

    雲南に骨を埋める覚悟で問題に取り組む熱意のある人が1人いるのも良いですし、それなりに向き合える人がたくさんいて、入れ替わりながら関わり続けるのもアリだと思うんです。

    つまり、関わる人が増えれば増えるほど、良い。

    そうすれば、ひとりひとりが小さな”できること”をキッカケに、より当事者になっていくんだと思います。

    雲南市って、課題の先進地域なんです。

    ー 課題の先進地域…はじめて聞きました。実際にどういう状態なんですか?

    非常に高齢化が進んでいて、25年後の日本の課題に取り組んでいる。言い換えれば直面している街なんです。

    だから、いまこの課題に向き合うことって大切だと思うし、経験からヒントだったりアイデアを掴んでおければと考えています。

    人口の高齢化率が日本の25年後と同じ水準の雲南市(雲南市ホームページより引用)

    ー 街はどんな取り組みをしているんですか?

    雲南市はこの大きな課題を上手く使って「チャレンジ」を起点とした街づくりに取り組んでいます。

    そのうちのひとつが「企業チャレンジ」。

    企業が、今後の社会に必要になるものを実験して”雲南モデル”を作り、広げていくイメージです。実験だけでなく、実装までするというのがポイントですね。

    • 「企業チャレンジ」とは、自社の製品・サービスを通じて新しい社会デザインを目指す企業やNPOへ雲南市を実証フィールドとして提供し、地域自主組織などと結びつけながらプロジェクト化していく試みである。雲南市の募集に対して企業が手を挙げる形もあれば、企業側からの提案もあり得るという。

    島根県雲南市が大企業を巻き込んで次に仕掛ける「ソーシャルチャレンジバレー」構想とは? ~ローカルベンチャー・サミット2018レポート(3)より引用)

    自治組織もしっかり機能しているし、理解がある街だからこそ、とても馴染みやすかったです。

    雲南市の抱えている課題は、結局は「誰がやるんだ?」みたいなことで、すぐに解決できるわけではないですが、「ちょっとやってみたい」というエネルギーが重なったり膨らんだりすることによって、解決の方向性のひとつが見えるかもしれないですよね。

    ー そのためにも、今後『オトナリ』として考えていることはありますか?

    近いうちに、『オトナリ』を含めた雲南地域のワーケーション企画『雲南ふれ旅ワーケーション』の実施を予定しています。

    地域課題を考える”ビジネス”・自然に近い生活を体験する”里山くらし”・雲南の歴史や現在の街づくりを知る”地元雲南”のテーマから、興味のあるものを自分で選んでもらえるようになっています。インフラを含めた自給自足の生活を送っている方の暮らしぶりを見られるのも貴重ですし、昔から雲南に住んでいる方に聞く雲南の神話や伝説も面白いです。

    いわゆるリゾート地のような環境で仕事をするというより、雲南の人たちと触れ合い、環境を体験してもらうイメージですね。もちろん『オトナリ』を使って仕事をする時間もしっかり取れます。

    さらに、2022年からは『オトナリ』に宿泊できるようになる予定です。

    今までがそうだったように、まだまだこれからも変化していくんだと思います。もっと僕たちが考えていなかったような、新しい使い方の提案も大歓迎ですね!

    お知らせ

    雲南ふれ旅ワーケーション』は、第二弾の参加者を募集しています。雲南市の暮らしと『オトナリ』を体験してみませんか?

    募集日程 2021年11月8日(月)~11月19日(金) 24:00締切

    実施期間 2021年12月10日(金)~12月24日(金) ※期間中に2泊3日以上の滞在

    その他詳細・応募はこちら

    https://furetabi-unnan.jp/it-hojo#moushikomi



    取材・文/照屋有理子

    編集/ヒトカラメディア編集部