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2021/8/31

オフィス移転プロジェクトのコツを、百戦錬磨のプロジェクトマネージャーに聞きました。

はじめまして。ヒトカラメディア編集部ライターの照屋です。

ヒトカラメディアには、オフィスデザインやオフィス仲介だけでなく、プロジェクトを成功させるための ”プロジェクトマネジメント” のサービスがあります。

プロジェクトマネージャーは、コスト(費用)・スケジュール(時間)・クオリティ(品質)のバランスを取りながら、オフィス移転チームの一員としてプロジェクトを推進していく存在です。 ただ、”プロジェクトマネジメント”のメリットって具体的に想像しづらいですよね?もしかしたら、自宅の引っ越しを何回も経験していれば、ひとりでもできるかもしれない…なんて考えてしまいます。

そこで、オフィス移転ビギナーの私が、百戦錬磨のプロジェクトマネージャー・今井さんにオフィス移転の”プロジェクトマネジメント”のポイントについて聞いてきました。  

ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー

    初心者が知っておくべき、移転スケジュールとタスク量

    照屋

    単刀直入に……、私はオフィス移転について素人なのですが、オフィス移転って大変ですか?

    自宅の引っ越し経験を何回か積んでいれば、引越し業者さんの段取りは把握できるなとも思いまして。

    今井

    未経験の方がオフィス移転プロジェクトを担当するのは、ズバリとても大変です。

    オフィス移転は、荷造り、運搬といういわゆる”引越し”はプロジェクトの一部に過ぎません。移転先の工事や業務環境の整備、移転元の原状回復など、”引越し”だけではない業務の方が、むしろ多い。

    また、プロジェクトの規模が大きくなるほど、業者間での専門用語が飛び交うことも多くなります。かつ、マイルストーンを気にしながら先手先手で段取りをする必要もあり、多くの知識と経験が求められます。

    少なくとも、ある程度大きなオフィス移転を複数回経験していたり、大手デベロッパーさんの管理するビルへの移転経験がないと、オフィス移転プロジェクトを管理するのはなかなか大変だと思います。

    照屋

    オフィス移転って、どのくらいの期間を考えておけば良いんでしょうか?

    今井

    オフィスの規模にもよりますが、300坪ほどの規模までのオフィスだと大体6ヶ月前後でしょうか。なかには1年かかるプロジェクトもあれば、3〜4ヶ月で完了するスピード移転もあります。

    これは、ある移転プロジェクトのロードマップ事例です。オフィスの規模は約350坪、150名ほどのオフィスへの移転です。

    プロジェクトスタートは8月。移転までは6ヶ月間あります。

    3月末で移転前のビルの契約が終了するので、それまでに原状回復の工事を完了させるとなると、わりとスケジュールはタイトです。

    この規模だとタスクは全部で111個くらいでしょうか。専門家であるプロジェクトマネージャーがやっても週15〜20時間くらいかかるので、慣れない方だと、かなりの時間を消費してしまうと思います。

    照屋

    この量のタスクと作業時間が通常業務に積み上がったら、残業必至ですね…。

    今井

    ただ、僕たちプロジェクトマネージャーがおよそ85%のタスクを引き受けることができるんですよ。

    照屋

    85%! 担当者の負担が全く違いますね。

    あとの15%は、何をするんでしょう?

    今井

    残りの15%は、主に意思決定です。

    いくつかある候補のなかからひとつ選ぶ、契約書類にサインをする、などは僕たちにはできないので、担当者や決済者にお願いすることになります。

    その意思決定のための材料を揃えるのが、プロジェクトマネージャーの仕事ですね。

    照屋

    とても心強いです。

    ただ、上司にはできるところは自分でやれって言われそうだな…。

    今井

    ありそうですね(笑)そういう方のためにも、押さえておきたいポイントをお伝えしようと思います!

    プロジェクトマネージャーは「宴会の幹事」

    照屋

    オフィス移転には、どういう業者さんが関わるんですか?

    工事業者さん、引越し業者さんはなんとなくイメージがつきます。

    今井

    いい視点ですね。体制を把握することはプロジェクト管理においてとても大切です。

    関わる業者はざっくり、デザイン&設計、家具、内装、電気設備、セキュリティ、防犯カメラ、電話、ネットワーク、引っ越し……

    照屋

    …関係者がすごく多いですね。

    今井

    …ですね(笑)。

    かつ、工費の相見積もりを取る場合は、それぞれの設備に対して複数の業者とやり取りが発生しますからね。

    照屋

    どこかで手配の抜け落ちが出てきそうで怖いです。

    今井 

    例えば、ネットワークの回線工事はNUROだと申込をしてから3〜4ヶ月かかる事もあります。

    内装が完成する頃になって、「そろそろ工事終わるから依頼しよう」では回線工事が移転に間に合わず、オフィスでネットが使えない状況になってしまいますからね。

    照屋

    考えただけでも、変な汗がでてきます……。

    今井

    プロジェクトマネージャーって、「宴会の幹事」みたいなイメージなんです。

    宴会の幹事って、ポンと依頼されることも多いですけど、結構やることが多くて大変ですよね。参加者の希望を聞いて、予算を確保して、日程を調整して、会場を確保して、料理や会費を決めて。

    オフィス移転も、プロジェクトメンバーの意見を集めて、総予算取りをして、全体のスケジュールを組んで、物件を決めて、工事の内容を決めて見積もりを取る。

    プロジェクトを成功させるための準備を、先回りして着々と進めていく。タスクが多いのに失敗できない。とても重要なポジションなんです

    オフィスの知見をデザインに取り入れること

    照屋

    あ、オフィス移転といえば空間デザインも欠かせないポイントですよね。

    デザインも、プロジェクトマネージャーが手掛けるんですか?

    今井

    オフィスを専門で請け負っているデザイン会社さんに声をかけることが多いですね。もちろん、ヒトカラメディアの空間プランニングチームも活躍しています。

    クライアント様の要望に応じて、数社にお声がけして、コンペ形式にすることもあります。

    ただ、小規模のオフィスの場合は、デザイナーがプロジェクトマネージャーを兼任することもあります。

    照屋

    コンペ形式って、公共建築のイメージが強いです。

    オフィスデザインでもコンペがあるんですね。

    今井

    大きなプロジェクトになると、コンペ形式を採ることが多いですね。

    ちなみに、コンペを成功させるにはテクニックが必要です。

    コンペでは、各社の案をキチンと比較できるように、要件定義書をしっかりと作ることが大切です。

    必ず実装しなければいけない機能や設備を漏れなくデザイナーに伝え、見積もり内容のブレが起こらない状況をつくる。見積もりの粒度がブレると、比較ができなくなるため、正確に判断しづらくなりますからね。

    照屋

    なるほど。オフィスの設備を漏れなくまとめるとなると、知識が要りますね。

    デザイナーは、商業空間を手掛けているインテリアデザイン事務所や、建築家にも依頼できるんですか?

    今井

    依頼は可能です。

    希望がある場合は、インテリアデザイン事務所や建築家の方にお願いすることもあります。

    その場合も、プロジェクトマネージャーがオフィスデザインの知見を伝えながら、二人三脚で進めていきます。

    照屋

    「オフィスデザインの知見」?

    どういうことを指すんでしょうか?

    今井

    働く場における動線の考え方や、席数、ストレージ数の算出の仕方。また、働き方のトレンドを反映した空間づくりなどのことです。

    デザイナーの仕事は品質を上げること。

    格好良く、美しいデザインを追求します。ただ、デザインを追求していくと、コストが跳ね上がったり、納期に間に合わなくなったり、ということも起きることがあります。

    一方、プロジェクトマネージャーの仕事は、コスト・スケジュール・クオリティのバランスを取ることです。

    プロジェクトマネージャーはデザイナーではありませんが、多くの事例を見てきているのが強みです。過去の事例を応用しながら、デザインを損なわないコストの下げ方や納め方などの知見をデザイナーに伝え、オフィスとしてのより良い空間づくりに協力することが出来ます。

    コストを下げるためのスケジュール管理

    照屋

    工事会社はどうやって選ぶんですか?

    特に知り合いや取引先などの心当たりがないのですが。

    今井

    普段からお付き合いのある内装会社にお願いすることが多いですね。

    また、デザイン会社が対応してくれたり、デザイン会社から内装会社を紹介いただいたり、ヒトカラメディア内の専門部署である「ヒトカラ工務店」が担当したり。

    どんな会社でもマネジメント可能です。会社によって得意分野やカラーが異なりますし、デザイナーさんとの相性を考慮することもあります。

    照屋

    金額のイメージがつかないので、適切な価格で発注するのが難しそうです。

    今井

    よくある相談内容ですね。

    工事の見積もりって、内容を見ると「一式」として算出されているものも多いです。

    ただ、作業内容の内訳が把握していると、コストを下げるための交渉が出来ることがあります。

    照屋

    交渉のためには、具体的な作業内容を把握する必要があると。

    今井

    また、オフィスの工事には「工事区分」というものがあります。

    これは、工事の費用を誰が負担するか、工事業者の決定権が誰にあるのか、のふたつによって決まっています。(詳しくはこちら

    「C工事」は借主が費用を負担し、業者を選ぶことができるため、費用面でのコントロールがしやすい工事です。主にテナント入居区画の内装部分などに多いですね。

    ときに「C工事」は、内装会社の言いなりにならないように、相見積もりを取って比較検討することが必要です。相見積もりのための時間を確保したスケジュール管理も重要です。

    一方、「B工事」は借主が費用を負担し、貸主の指定業者による施工です。入居区画内であっても、借主が好きな業者を選ぶことはできません。

    大手デベロッパーが所有しているビルになるほど、B工事の区分領域は増え、費用が高くなる傾向にあります。また、スケジュールが押して工事期間が長くなればなるほど、費用が増えていきます。そういった状況を防ぐためにも、設計期間に余裕を持たせておくことが大切です。

    特に工事内容を取りまとめるフェーズでは、関わる業者も多くなる一方で、交渉ごとも増えます。プロジェクトマネージャーの腕の見せどころでもあるため、専門的な知見に頼ることをおすすめしますよ。

    照屋

    引越しまでくれば、すこしイメージがつきます。引越しのときに気をつけたいことはなんですか?

    今井

    オフィスの引っ越しは当日までの段取りが全てです。

    断捨離、荷造り準備の社員さんへのご協力依頼。家具の転用計画や荷物の配置計画など、当日に向けていかに準備をできるかにかかっています。

    機密情報の取り扱いもあり、担当者の方がとにかく大変なパートでもありますね。

    外部の専門家をひとり雇うことで、コストパフォーマンスを上げる

    照屋

    オフィス移転プロジェクトって、内容のボリュームがすごいですね(汗)

    プロジェクトマネジメントをお願いする場合、どれくらいのタイミングでお願いするのが望ましいのでしょうか?

    今井

    もちろん、どのタイミングのご相談でも、その時点からしっかりサポートできますよ。

    とはいえ、なるべく早くご相談いただいたほうが、プロジェクトの精度は上がります。

    たとえば、物件が決まる前にお声がけいただければ、プロジェクトで実現したいことや現状の問題点などをヒアリングし、物件選びに活かすことが出来ますからね。

    プロジェクトマネージャーは、外部の専門家をひとり雇う、というイメージで考えてもらうのが良いと思います。初心者の方が頑張るのと、専門家が頑張るのだったら、後者の方がやはりコストパフォーマンスが良いですよね。

    オフィスは会社の働き方を決める重大な要素ですから、失敗は極力避けたいところ。これらのポイントを抑えつつ、適材適所でプロの手を借りながらやっていくのがオススメですよ。

    あとがき:プロが併走してくれる安心感

    照屋  

    今井さんにお話を聞いて、結婚式を計画したときのことを思い出しました。

    「結婚式の準備は、仕事をもうひとつ抱えているようなもの」と聞いていたので、会場選びの時点からフリーのウェディングプランナーさんに依頼をしたんです。

    会場との交渉やアイテムの発注などはすべておまかせ。

    はじめてで分からないことだらけの”結婚式プロジェクト”に、客観的な視点を持つプロが併走してくれたのはとても心強く、時間を有意義に使えたと思います。

    自分でもできなくはない。

    でも、プロと一緒に進める方がプロジェクトの完成度が上がるなら、検討してみる価値はあるのではないでしょうか。

    オフィスは移転して終わりではなく、使っていくことで、新たな課題やワークスタイルに適した形が見つかります。

    ヒトカラメディアでは、うまく運用していくためのルール作りや社内への周知、ときにはワークショップを用いてオフィスの意図や使い方を考える機会を作り、より良い醸成のサポートもしています。

    一緒にオフィス移転プロジェクトを成功させましょう!


    取材・文/照屋有理子

    編集/ヒトカラメディア編集部