PROJECT
2025/3/31
働く場所は人を変え、人を育てる。福島の歴史ある企業のオフィスリニューアル〜社員/パートが自然と交わるコミュニケーションスペース
福島県福島市で菓子食品卸売業などを展開する渋谷レックス株式会社。2022年にリニューアルした自社ビルの1階に続いて、この度、2階へ範囲を広げたリニューアルが完了しました。1階のリニューアルプロジェクトでは日経ニューオフィス賞において「東北ニューオフィス推進賞」も受賞した渋谷レックス社ですが、オフィスの在り方が組織・会社にもたらすインパクトについて代表取締役・渋谷裕司社長へ改めて伺うと共に、1階とは全く異なる役割を持たせた2階のリニューアルについて、ヒトカラメディアの担当プランナー・小島と江川も交えなが振り返ります。
ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー
1.1階のリニューアル成功を踏まえて、2階のあり方を考える
ーーワークスペースを中心とした1階のリニューアルが完了したのが2022年の11月でした。日経ニューオフィス賞の受賞をはじめ、さまざまな反響があったと伺っていますが、どんな変化があったのか改めて伺えますか?
渋谷レックス・渋谷 裕司様(以下、「渋谷」):1階のリニューアルは、もともと社内メンバーの士気をあげたり、未来に向けた目標や思いを共有するために行いました。ですが、予想外に社外からの反響が大きくて驚きましたね。リニューアルした経緯や費用、効果への質問、オフィス見学ツアーをやってほしいという問い合わせなどが殺到しました。新卒採用の説明会ではオフィスを見て目を輝かせる学生が非常に多かったです。中途採用でも、県外からの応募者も倍増しました。
▲渋谷レックス株式会社 代表取締役社長 渋谷 裕司 様
ヒトカラメディア・小島 亮(以下、「小島」):それはそれですごく嬉しかったのですが、そのぶん、次に2階をリニューアルしようとなったときにすごくハードルが上がりましたよね。1階だけで席数は十分に足りている。なら、2階を同じような使い方にしても意味がないので、これからどのような事業を展開していくのか、どんな企業になっていくと良いのかなど、未来から逆算して考える必要がありました。
渋谷:そうなんですよね。ただ2階を綺麗にしてリニューアルしたいというだけでなく、何の目的でリニューアルするのか、未来を見据えたうえで、どんなふうに寄与できる場所であるべきなのかを考えることでコンセプトが見えてきましたよね。
小島:大切なのは”ここでどんな状況を起こしたいのか”を考えること。
ヒトカラメディア・江川 郁美(以下、「江川」):それを明確にするために、全社員参加のワークショップを今回も行いましたね。誰と繋がっていくか、どのような未来と繋がりたいか、オフィスでどのようなことがしたいのかを皆んなで出し合いました。それで見えてきたのが併設した倉庫や店舗で働くパートさんを含める、社内の人同士の繋がりをもっと強化したいということ。社外に門戸を開くよりも、社内をもっとハッピーにすることこそが、今後の渋谷レックスを成長させるというものでした。
2.こだわったのは交流が生まれる動線作り
ーー社内のハッピーをもっと増やすための場所として、2階は社員やパートさんなどさまざまな人たちがコミュニケーションを取れるスペースになりましたね。可動式の家具を採用して、全社行事など大きなイベントもできるようにしたり、大きなカウンターキッチンやパートの方々がゆっくり過ごせる休憩スペースを大きく取るなど、社内交流の場所になりました。
渋谷:そうですね。2階の使い方が決まったことで計画はグッと進みましたが、心配だったのは、せっかく作った空間もパートさんが使いづらくては意味がないということです。業務内容が異なるパートさんと社員とは、働く場所が違うのでどうしてもコミュニケーションの機会が少なくなってしまいます。それで、パートさんが自然に2階へ来てくれる仕組みを作れないかと小島さんや江川さんと一緒に考え、パートさんのロッカーを2階へ設置することにしたのです。そうすれば出社と退勤時には2階に自然と来るようになります。
小島:さらに言うと、ロッカーを2階へ持ってきただけでなく、あえてフロアの一番奥に設置しました。そうすることで、パートさんと正社員が接点を持つ回数を増やす動線を作り出せたらと思いました。すれ違ったり目が合う回数が増えることで自然と社員との距離感も縮まり、気楽に利用しやすくなったんじゃないかと思います。
江川:カウンターキッチンはもともと1階のワークスペースの中にあったのですが、黙々と仕事をしている人の横でワイワイしづらいという声もあったので、今回2階へ移動させ、1階は「Actionフロア」として、2階は「Brush Upフロア」として使い分けることをまず決めました。
パートさんたちが使う休憩室も1階にあったのですが、以前はワークスペースと区切られていたためパートさんと社員さんの会話は起きにくい状況になっていました。
今回新たに2階に作った休憩スペースは元々少しくぼんでいた空間を利用して、オープンなスペースではあるけれど奥行きがあるスペースにすることでパートさんが休憩しやすい場所になったと思います。
それと、ここには皆さんと一緒に行ったDIYワークショップで作ったお菓子ラックを置いて、自社で扱っているお菓子をより身近に感じていただく仕組みも取り入れています。
渋谷:先日はここで会社の懇親会をしたのですが、パートさんの参加率は以前に飲食店で開催したときよりも良かったんですよ。「もう終わっちゃうの?」と話していたメンバーもいたようで、手応えを感じました。2階のテーブルは可動式なので、イベントなどスペースを広く使いたいときにも便利ですね。
小島:2階ではその他にも、健康ワークショップや節分イベントなども行われていましたね。僕たちが予想していなかった使い方がされることや新しい行動が生まれることは、とてもうれしいです。
3.会社の行動指針をゾーニングに落とし込む
ーー1階2階ともに、エリアにはHappy、Smileなどさまざまな名前がついています。これらはどこから生まれたのでしょうか?
渋谷:2階のオフィスリニューアルと並行して、弊社で働く人たちが成長するための10個の行動指針「GROW×GLOW UP」を策定しました。それらを策定しただけで終わらないように、日々の行動にもしっかり活かして行きたいと思い、空間のさまざまな場所に落とし込もうということになったんです。Innovation、Smile、Excite、thanXなど10個の指針があるのですが、たとえば1FのステージはExcite Stageと名付けられていて、お互いの取り組みや夢、目標が発信され、わくわくさせる場所になっています。行動指針を空間に落とし込むことで、そこにいる人たちがそれを意識して行動するきっかけになるかなと。
江川:2階のリニューアルにも落とし込まれていて、みんなが集まって楽しく話せるキッチンは「Smile Kitchen」、新しいことが生まれる会議室は「Innovation Room」と名付けられましたね。
渋谷:どの空間とどのような行動が繋がるのか、GROW×GLOW UPチームとオフィスリニューアルを担当したメンバーで考えていきました。今では「Smileの前で写真を撮ろう」など、少しずつ社員の行動に繋がってきているように感じます。
そして、1階と2階を繋ぐ大きな役目を果たす階段は、GROW×GLOW UPを象徴するものとして位置付けることにしました。
小島:普通に考えれば階段はただの動線。でも1階と2階を繋ぐ、シーンやモードを切り替えるための重要な場所として、階段も表舞台にできないかと考えました。それで思いついたのがアートを施すことです。
江川:アーティストの方にお願いしてHappy、SmileなどGROW×GLOW UPの指針をポップなキャラクターとして描いてもらいました。暗かった階段が明るくなり、まさにGROW×GLOW UPの名にふさわしい場所になったと思います。
4.より働く人のマインドが上がる場所に
――新しい事業を加速化する中で、社外向けの施策ではなく、オフィスづくりを丁寧に行なっている理由があれば教えてください。
渋谷:働く人のパフォーマンスによって、会社のパフォーマンスも大きく変わります。これまで労働条件や業務推進などソフト面の改革もたくさんしてきましたが、働く場所である”ハード面”もまた人を変え、人を育てることに繋がることが1階と2階のリニューアルを通して改めて感じました。そして、それが結果的に外へもいい影響を与えるのではと思っています。ですので、これからも人に注目した施策を続けていきたいですね。
また、働く人たちがいる場所、という意味では、オフィスと隣接している倉庫もそのうちのひとつですので、きちんと考えていきたいと思っているところです。
小島:そうですね。オフィスも倉庫も、ソフト面とハード面をうまく連動させながら、働く人たちが幸せを感じて2倍、3倍のエネルギーが出せるような場所になるといいですね。
5.PJ担当者が振り返る2度目のオフィスリニューアル
渡邉彩花 様/経営企画部(写真一番左)
「空間の変化が社内にどのように影響するのか、周囲の状況が見えていて初めて想像できることのため、PJ担当として関わらせていただく中で非常に難しいことでした。
実際に新しい環境で仕事を行うようになってから、パートナーさんとの交流の機会が増えるだけでなく、必ず目を合わせて挨拶しようなど自分自身の意識も変化したように感じます」
秡川奈々 様/HR事業部(写真左から2番目)
「担当者としてこのPJに携わらせていただき、お打ち合わせや会社全体でのワークショップなどを通してリニューアルの背景や空間の意図を理解し浸透にも努めていたため、例えば採用活動などで学生さんにもスペースがどうして誕生したのか、どのように使われているのか、しっかり説明することができました。
どの空間にどのGROW×GLOW UPの行動指針を落とし込むのか一緒に働くみんなで話し合うことができたのも、改めて自分たちのオフィスだと全社的に感じていただくきっかけになりました。PJの担当者として関わらせていただいた経験は、自分のなかで間違いなく大きなものであり、成長の機会となりました」
渡辺麻友 様/経営企画部(写真左から3番目)
「皆さんが働く姿やコミュニケーションをとっている姿を想像しながら、2階、そしてアートのある空間の在り方についてPJメンバーで何度も話し合いを重ねました。ワークショップを通してオフィスづくりに全社員が関わっておりますので、オフィスに親しみを持って過ごしてもらえたら嬉しく思います。弊社は「チャレンジ」が一つのキーワードになっておりますが、今回のリニューアルはPJメンバーにとって大きなチャレンジの機会となりました」
取材・文/酒井 明子
ヒトカラメディア
プロジェクトメンバー





