

オフィスビルマニア
オフィスビルを「ただの箱」ではない視点で切り取る、オフィスビルマニアのレビューコラム。立地やスペックを超えて、建物の個性や背景、ささやかな違いから街と働く場の面白さを、ゆるく深掘りします。

今回ご紹介するのは、原宿の奥まったエリアに佇む「Terraza Harajuku」というビルです。このビルは”唯一無二”という言葉がふさわしい、強烈な個性を放っています。
まずは外観。段々畑のようにセットバックしていく独特のフォルムが特徴ですが、原宿の喧騒から少し離れた場所に、こんなエッジの効いた建築物が突如として現れるので、ビルの利用者だけでなく、道行く人もこのコントラストに惹きつけられているように思います。

次に内観ですが、図面を見てみると、執務室の形はギザギザであったり、柱も多く、オフィスとしては使いにくい部分もあり、非効率な形状をしています。
しかし、このビルにおいては、それがむしろ個性として受け入れられ、原宿の奥地というロケーションともマッチし、クリエイターたちの感性を強く刺激しています。実際に入居されているテナントも、アパレル企業が半数以上を占め、その他もデザイン会社など、クリエイティブ系の企業がほとんどです。まさに、このビルが持つ世界観に共鳴した企業が集まっていると言えるでしょう。

私が初めてこのビルを訪れた時、思わずグッときてしまったポイントは、ビルの耐震性を支える「耐震ブレース」と呼ばれる部材です。通常は、壁の裏などに隠されているのに対し、このビルではあえて剥き出しになっています。ですが、不思議なことにこの空間においてはその柱さえもデザインとして溶け込み、格好よく見せてしまう力強さがあるのです。
この物件を借りる際、床がタイルカーペットの敷かれていない”躯体現し(くたいあらわし)”で引き渡される点も、ビルマニアの心がくすぐられます。「カーペットが敷いてあっても、クリエイティブな内装にするためにどうせ剥がすでしょう?」という、このビルならではの思想が感じられるからです。
一般的なオフィスの天高は2.7mmほどですが、このビルの天井はコンクリートの打ちっぱなしで3mもあります。しかも、この突き抜けた開放感を出すために天井には空調設備を置かず、床下に点在する丸い吹出口から風を出す仕組みを採用。その徹底ぶりもさすがですね。

さらに、そのこだわりはエレベーターホールにまで・・・!一般的なオフィスビルはエレベーターを降りると目の前は壁であることがほとんどですが、このビルはなんと全面ガラス張り。エレベーターが開いた瞬間、開放的な景色が広がります。また、内階段も剥き出し。内階段はドアの奥などに隠されていることが多いですが、ここも敢えて剥き出しにし、デザイン性の高いオフィスに仕上げている点にグッときます。

オフィスビルは、その多くが効率性を重視した四角い箱型をしています。しかし、「Terraza Harajuku」のような、一見すると非効率でも個性が際立つビルは、入居するテナントの個性を何倍にも引き立て、その企業らしさを表現する強力な”メディア”となり得ます。
原宿・表参道エリアは、常に新しいカルチャーが生まれ、進化を続ける街ですが、「Terraza Harajuku」のように挑戦的で面白いビルがもっと増えていけば、さらに豊かで刺激的なエリアになっていくかもしれませんね。