

オフィスビルマニア
オフィスビルを「ただの箱」ではない視点で切り取る、オフィスビルマニアのレビューコラム。立地やスペックを超えて、建物の個性や背景、ささやかな違いから街と働く場の面白さを、ゆるく深掘りします。

記念すべき第1回目にご紹介するのは「晴海トリトンスクエア」です。このビルの大きな特徴は、ひとことで言うと、ビルがオフィスビルの枠を超えてそれ自体が”ひとつの街”として機能しているということです。
晴海トリトンスクエアは、X、Y、Z、Wという4つのオフィス棟で構成されていて、それらの1階から3階が「エントランスアトリウム」として一体的につながっており、非常に開放的な空間を創り出しています。天井高は10数メートルはある吹き抜けで、足を踏み入れた瞬間、そのスケールに圧倒されます。
この低層階には、飲食店やカフェ、物販店はもちろん、銀行や郵便局、フードコート、さらには保育園まで揃っています。そのため、ここで働くオフィスワーカーだけでなく、近隣の住民の方々が日常的に買い物をしに来たり、ベビーカーを押した親子連れがカフェでくつろいでいたりと、多様な人々が行き交う光景が広がっています。オフィスビルという枠を超え、様々な属性の人々が集い、交流する一つのコミュニティ、一つの街になっているんです。
晴海という立地からアクセス面を心配するかもしれませんが、最寄りの勝どき駅からは徒歩6〜7分ほど。大通りを通るルートもありますが、目の前にそびえ立つトリトンスクエアを眺めながら、大きな川にかかる橋を渡っていくアプローチが私のお気に入りです。都心にいながら日常的にこうした自然を感じられるのは、大きな魅力ではないでしょうか。
竣工当時は、この地に高層タワーが建つということで大きな話題となり、大手企業がこぞって入居しました。現在もその傾向はありますが、最近ではスタートアップ企業の入居も増えてきており、大手からスタートアップまで、幅広い企業が集まる面白いビルへと進化しています。

晴海トリトンスクエアの竣工は2001年ですが、私が特に注目しているのは、2023年から2024年にかけて大規模なリニューアルが行われたX棟です。
4つの棟がある中で、なぜX棟だけがこれほど大規模なリニューアルを遂げたのか。その背景には、ビルの所有形態の違いがあります。他の棟がフロアごとに所有者が異なる「区分所有」であるのに対し、X棟は一棟丸ごとを一つの投資家が所有しています。そのため、スピーディな意思決定が可能となり、これほど大胆なリニューアルが実現できたのです。
このリニューアルで最も注目すべきは、共用部の充実度です。デザインを手がけたのは、世界的なデザイン会社であるゲンスラー社。彼らの手によって、X棟の共用部は都内のオフィスビルの中でも屈指のレベルに生まれ変わりました。
2階には広々としたオープンラウンジが設けられ、単一の椅子が並んでいるのではなく、ゆったりと寛げるソファースペースや、まるでゆりかごに揺られているかのようなユニークな席もあり、多様な働き方やリフレッシュに対応しています。
また、大・中・小3つのサイズのカンファレンスルームも完備。このカンファレンスルーム内にもラウンジが併設されており、施設全体を貸し切って大規模なイベントを開催することも可能です。
重要なのは、これらの施設がX棟の入居テナント”専用”であるという点です。利用にはカードキーが必要で、部外者が自由に出入りすることはできません。これにより「共有スペースがいつも満席で使えない」「会議室やリフレッシュスペースが足りない」といった不満を解消し、X棟の付加価値を確固たるものにしているのです。

リニューアル直後はまだ空室が目立っていましたが、渋谷など都心主要エリアの賃料が高騰していく中で徐々に注目を集め、賃料もリニューアル当時より大きく上昇しているにも関わらず、現在では募集中の区画は残りわずかとなっています。
素晴らしい眺望、ビル内ですべてが完結する利便性、そして都内トップレベルの共有部・・・。晴海トリトンスクエアX棟は、仕事に集中するための環境が整い、オンとオフのメリハリをつけたワークスタイルを実現できる”最上級”のビルだと私は感じています。爽やかな風を感じながら、ぜひ一度見に行ってみてください。

