企業、自治体、社員の三方良しを作る、サテライトオフィスという仕組み

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この1、2年で「サテライトオフィス」という言葉を目にする機会が徐々に増えてきました。東京などの都市部に本社を構える企業が、地方にサブで拠点を持つスタイルです。言うなれば「支店展開」なのですが、なぜいま注目されているのか。僕らヒトカラメディアもオフィス移転をはじめとした「働き方」に関わる事業の一環としてサテライトオフィスとは深く関わっています。整理の意味も込めて、企業・自治体・社員の目線からメリットをまとめてみました!

 

企業:都市部だけだと出会えない、新しい人材との接点

地方にサテライトオフィスを構えると企業側は何が嬉しいのか。とりわけ大きいのが「地方でのライフスタイル」が「採用」へ及ぼす影響です。都市部では優秀な人材の確保がかなり難しくなっています。特にエンジニア層! たとえば東京都内で、数百万の求人広告費をかけながら、年間のエントリー数が数件……そんな企業がざらにあるほどに、人材が不足しているそうです。

ここでうまく作用してくるのが「地方でのライフスタイル」。例えば太平洋に面する徳島県美波町。まだご存知ない方も多いかもしれませんが、サテライトオフィス進出が盛んなエリアです。実はこちら、サーファー達にとって絶好の波乗りスポット(大阪からも足を運ぶ人がいるくらい!)。ここにサテライトオフィスを持つことで「美波町に住んで、サーフィンをしながら働きたい」という人と接点を持つことができるのです。実際に募集に対してすぐに数十件のエントリーがあった事例も!

美波町

徳島県美波町。徳島阿波おどり空港から車で約1時間。大阪からもサーファーが波を求めてやってくるエリア。ウミガメの産卵地としても有名

東京勤務でサーフィン好きであれば湘南あたりに家を構えるかもしれません。けどこれって、通勤にも時間かかりますし、例えば平日にサーフィンなんて話はあまり現実的ではないですよね。でもそれが美波町であれば、朝ちょっと波に乗って出勤、なんてこともできちゃうんですね。サーフィン好きだけではありません。農業に興味ある人もおすすめのエリア。また当然ながら、徳島出身者にも強い訴求が可能です。Uターンをなんとなく考えていた層にも現実的な選択肢として候補に上がってくるのです。

もちろんどうPRしていくかとセットになりますが、東京のみに拠点を構え、都内で採用活用をやっていてもなかなか巡り会えない層に「ライフスタイル」や「出身地」という切り口を持つことでアプローチが可能になるのです。それに地方のオフィス家賃は都内に比べればかなりの割安です。うまく空き家などを見つけて、よりコストをかけずに拠点を作ることもできるでしょう。採用媒体などをうまく活用していく方法もありますが、このように「働き方・暮らし方」のバリエーションを企業が持つことが企業の採用力につながってくるケースも出てきました。

神山町

徳島県神山町。サテライトオフィスと言えば神山町!ということで、今では日本各地から企業の視察が絶えない。実は20年以上前から着実にいろんな取り組みをやっているエリア

 

自治体:意志ある企業との相乗効果

いままで企業誘致というと、メーカーの工場やコールセンターなど「機能」を置くパターンが大多数でした。固定費をいかに抑えるかが肝心なのですが、もちろん、これらも自治体にとっては雇用を生みますし、嬉しいことに違いはありません。僕が生まれ育った九州では、自動車メーカーの工場に勤務する人がほとんど、という街もあったくらいです(工場が撤退するとものすご〜く怖いのですが……)。

ではサテライトオフィスだと何が違うのか? それは企業の「意志」と「フットワークの軽さ」に拠るところ大きいのではないかなと思っています。サテライトオフィスを構える企業の多くはITベンチャー企業です。有名な企業もあれば、あまり知られていない企業もあります。認知も広げたいですし、優秀な人材が欲しいと思っています。

彼らとしては「地方にサテライトオフィスを構えたこと」をどれだけ自分たちの魅力付けに活かすかに知恵を絞ります。PRに使うでしょうし、採用戦略の一環としてとらえるかもしれません。拠点を置くだけでは終わらずに、地方に拠点を置いたことを「意志」を持って外部に対して発信していく力学が働くのです。

初音湯

株式会社あわえは美波町の地域活性化に関わるビジネスを展開する企業。2014年夏に美波町の歴史ある銭湯「初音湯」をリノベーションしてオフィスとした。美波町のサテライトオフィス増加に多大な貢献をしている

また、サテライトオフィスを構えたエリアがもっと盛り上がっていくと注目度も上がりますし、面白い人材が集まってきます。そこで重要なのがフットワークの軽さ。何かしらを考えて意思決定するまでの早さ、実現するまでのスピード感はなかなか大企業には真似できません。外部への発信も、他社や自治体とのコラボレーションも、ITやテクノロジーを活用しながら実現できます。その土地に馴染んでいきながら、新しい取り組みを始める企業も少なくありません。

単に雇用を生むだけに留まらず、そこから意志を持って、地域のアセットをどう生かしていくか。地域×ITベンチャー企業の相互作用が期待できる。これは副次的な効果ではありますが、大きな要素だと思います。

 

社員:都市と地方のほどよい両立

社員側にはどんなメリットがあるのか。いくつか考えられますが、個人的には「都市と地方の両立」が大きいと思っています。推測の域は超えませんが、「田舎で暮らしたい」と思っている人の大多数は、いろんな理由で都市を捨てられないのではないかなと思います。なんだかんだで東京という街はものすごく刺激的だし、駅ごとに違った個性を持っているのは面白い。その情報量の多さに疲れることはあるけれども、うまく付き合っていけばこんなに魅力的な場所はそうそうありません。地方と都市を、7対3とか6対4とか、そんな塩梅を求めているのではないかなと。まわりで話を聞いてみると、そんな意見が多いです。

また仕事の面でもそう。こんなに面白い仕事が集まっているエリアはあまりないでしょう。もちろん地方でも東京以上に刺激的な仕事をされている方もいらっしゃいます。ただ、ボリュームと平均値でいくと東京を初めとした都市部に軍配があがります。人もそうですね。エンジニアなどが集まって行われる勉強会などのコミュニティも盛んです。自身のスキルアップやキャリアステップを考えると、「地方はイメージ湧かないな、まだまだ東京で働いていたいな」という気持ちが強いでしょう。でも、地元をはじめとした地方とも関わりを持ちたい。

このあたりをほどよく解決してくれるのがサテライトオフィスの良さではないかなと考えています。地方に拠点を構え、そこで仕事はするけれども、その業務内容は都市部と変わらなくって、いざとなれば本社に戻ってこれる。ある意味片足を都市部に残したまま、地方での就労が可能です。いままで都市に残るか、UIターンするかのゼロイチだったところにほどよいグラデーションをつけてくれます。

 

デメリットもあるけれど……

ここで挙げている内容は、サテライトオフィスの側面に過ぎません。拠点が増えたことで社内の制度もチューニングをかける必要がありますし(総務機能どうする、評価制度どうする、給与体系どうするetc…)、リモートでのコミュニケーションロスをどう補っていくかなどは課題です。

ヒトカラメディア軽井沢オフィス

ヒトカラメディアも軽井沢にサテライトオフィスを展開中。不思議なことに、東京よりもとにかく集中できる

ただ、それらのデメリットを含めても、有り余るメリットを受け取れる可能性があります。そして何よりもサテライトオフィスの皆さん、羨ましいくらいに「楽しく」働いています。日本の四季の魅力もたっぷり味わっていらっしゃいます。ライフスタイルもワークスタイルも、より理想に近い形を実践してますし、そういった人たちが地域のエネルギーにもなっています。

相関がどこまであるかは不明ですが、サテライトオフィスを構えた企業は業績も順調なところばかりです。単に地域活性化ではなく、企業の成長につながる手法として、サテライトオフィスの可能性を強く感じます。まだまだ課題はありますが、サテライトオフィスを構える企業が増えてくると、エネルギッシュに地方で働く人が増えてくると、日本各地でいろんなことが起こるのではないかなととても楽しみです。このあたり、ヒトカラメディアとしてもいろんなサポートを提供できればなと思っています。

田久保 博樹
田久保 博樹
佐賀出身。九州大学芸術工学部卒業。雑学好き。株式会社オールアバウトでメディアの企画や編集、立ち上げに携わってきました。働き方や暮らし方、都市や地方での時間の使い方ってもっといろんなカタチがあってもよいのでは!との想いから、ヒトカラメディアに参画。お酒と旅と歴史とアウトドアが趣味。郡上八幡の徹夜おどりは2年連続参戦中。興味ある方、お声がけください!