休憩の質をあげて、従業員の欲望を引き出す!日新が手がけた徳島県小松島市の工場休憩所プロジェクト

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オフィス移転のやり方ひとつで会社は変わり、そこに集う人たちの働き方も変わる。ヒトカラメディアは、「ただのオフィス移転」を「会社の成長の好機」に変えるサービスを提供しています。

 

今回ご紹介するのは、株式会社日新さんの四国工場に併設する休憩所。木造住宅の建築に欠かせない「合板」の製造で、国内市場シェア約30%を誇り、全国に6つの工場を持つ日新さんは、ヒトカラメディアと島津臣志建築設計事務所とともに、どんな休憩所を建てたのか。

 

 

この休憩所の企画とマスターデザインを担当したヒトカラメディアの村山(むらやま)、小島(おじま)にインタビューをしました。

 

<プロフィール>

村山 太一(むらやま たいち)

 

株式会社木下商会・代表。石川県金沢市出身。首都大学東京大学院工学研究科建築学専攻修了。インテリア雑誌コンフォルトの編集を経て、輸入オフィス家具の販売、オフィス構築に従事。その後ヒトカラメディアに入社し、プランニング事業部を立ち上げる。2019年4月にヒトカラメディアを卒業し起業。

 

 

小島 亮(おじま りょう) 

 

株式会社ヒトカラメディア・プランニング事業部・デザイナー。茨城県筑西市出身。東海大学工学部建築学科卒業。主に商業空間のデザイン、設計、施工に従事。その後ヒトカラメディアに入社。満足度の高い『働き方』、『働く場』そして『暮らし方』を生み出していきたいと常日頃考えている。

 

 

 

 

今、働いてくれている従業員のために!工場の休憩所のリニューアルを決意

 

—鳥取に本社を構える日新さんと、現在東京中目黒を拠点とするヒトカラメディア。どういう経緯で、日新さんの休憩所新築に携わることになったのですか?

 

小島:日新さんの四国工場は、徳島市の隣の小松島市にあります。その四国工場の休憩所が老朽化してきてどうしよう?っていうタイミングに、ご縁あって、同じ徳島県にサテライトオフィスを持つ弊社にご相談をいただきました。そして、プロジェクトづくりからご提案するチャンスをもらいました。

 

村山:ちょうど美波町のコワーキングスペース「ミナミマリンラボ」をつくっているときでもあって、「徳島にオフィスを持っててよかった~」ってしみじみ思っていましたね(笑)。このプロジェクトのきっかけは、日新さんの四国工場、総務部の福本 芳明さん。工場勤務でも「働き方改革」を!という動きの一環ですね。

 

小島:福本さんって、現場の良き代弁者。現場のことをよく知っていて、常に現場のことを考えていらっしゃいます。今回のプロジェクトの根本には、そんな福本さんの「今、働いてくれている従業員の方に、もっと良い環境で働いてもらいたい」という強い信念がありました。

 

村山:あわせて「せっかくだっから、徳島の会社さんとお仕事がしたい!徳島の材料を使いたい!」という、地元を応援したいという思いも、ひしひしと感じました。素敵ですよね。

 

 

 

休憩時間をどう過ごすかは作業と同じくらい大事!24時間稼働の工場での働き方

 

—東京でデスクワークをしている私には、なかなか想像がつかないのですが、工場では従業員の方はどのような働き方をしているのですか?

 

村山:工場でのお仕事は、機械に付いて同じ作業を繰り返すことが多いです。しかも、ずっと立ったまま、ずっと座ったままといった作業もあって、根気強さや体力が必要だと思います。

 

小島:さらに、工場の機械は24時間稼働。なので、朝の8時くらいから17時くらいまでの人と、夜の20時くらいから朝の5時くらいまでの人が交代制で働きます。

 

小島:夜勤は、慣れるまでが辛いと伺いました。工場では、休憩も作業と同じくらい大事なお仕事なんです。僕は東京で、休憩がてらちょっとコンビニに行ったりして気分転換をしたりするんですが、ここでは、全く違うレベルの「休憩」が必要なんだってことに気が付いて、僕の頭のスイッチが切り替わりました。しかも、「心地よい休み方」って、人によっても違うし、同じ人でも、時間や精神状態によっても全然違うじゃないですか。

 

村山:そうそう。ガチで寝たい人もいれば、ちょっと外の空気に当たってうたた寝したい人もいる。家族に連絡をしたい人もいれば、ゲームをしたい人もいる。甘いものを食べたい人もいれば、筋トレをしたい人もいる。

 

小島:そうですよね。休憩所は、家とは違って、たくさんの人が本気で休める場所でないといけないわけで。工場での働き方を知れば知るほど、休憩所は人間の欲望の塊だなって。それをプランに落とすのは大変だけどやりがいがあると思ったので、僕は提案する前からワクワクが止まらなかったです。

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建て替え前の休憩所

 

 

「OFF」の質をあげる!いい大人たちが一致団結して取り組んだ

 

—ヒトカラメディアからは、どのような提案をしたのですか?

 

村山:まず、休憩所がどういうタイミングで使われているかを整理しました。実際に働いている方にヒアリングをして、一日のスケジュールと休み方について書き出したんです。

 

小島:整理して見えてきたのは、休憩という中でも「ON」と「OFF」の2つが存在するということ。「ON」は工場とプライベートを良くするための準備をして外とつながる休憩時間。「OFF」は、体を休めたり緊張をほぐしたり、仲間たちと過ごして、内とつながる休憩時間。今回は、その中でも、特に「OFF」の休憩の質を捉え直しましょう、という提案をしました。

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村山:休憩所に必要なのは、「従業員がしっかりと休憩できる機能」。効果的な休憩スペースを用意することによって、従業員の満足度を上げ、従業員同士や会社と従業員とのエンゲージメント(信頼関係)を高めることを目指しました。

 

小島:今回体制としては、企画とマスターデザインがヒトカラメディア、基本及び実施設計と監理を島津臣志建築設計事務所さん、施工は株式会社坂本工務店さん、なのですが、発注側の日新さん、造作家具を作ってくれた株式会社スケールさんを含め、関係者みんながこの空間の「狙い」を理解してくれました。見ているところが一緒だったので、細かい話をしなくても、それぞれが使う人の気持ちをベースに考えてくれたので、安心感がありました。もちろん、みなさん徳島の会社さんです。

島津臣志建築設計事務所さんのHP

島津臣志建築設計事務所さんのHP

 

村山:そうですね。当事者意識しかないプロ集団って感じでしたね。そして、いい意味でおせっかい。役割を割り切りすぎず、お互いカバーしあいつつ、とても気持ちが良いプロジェクトでした。「OFF」の質が高い空間を作るために、いい大人たちが「みんなやろうぜ!」って一致団結して、汗水垂らして頑張った感じ。日新の福本さんをはじめ、みなさんこのプロジェクト自体を楽しんでくれたのでは、と思います。

プロジェクトのきっかけとなった福本さんと

プロジェクトのきっかけとなった福本さんと

 

 

点在していた思いを集めて具現化。従業員を巻き込んだ模型ワークショップも

 

—今回、従業員の方によるプロジェクトチームを作ったと伺いました。プロジェクトでは、どんなことをしたのですか?

 

小島:休憩所への要望を出してもらったり、家具の使い方を模型で考えるワークショップをしたりしました。ワークショップでは意見がたくさん出ましたよ。模型作りのような工作って、いくつになっても楽しいですよね。

 

村山:そうですよね。さらに、模型を使うと空間に対してのハードルが低くなるんです。平面図では広さとか高さのイメージを掴むのはなかなか難しくい。そうすると、意見なんて言えないじゃないですか。でも模型があると、実際に触りながら自分の意見を空間に落とし込めるので、どんどんイメージが湧いて、どんどん意見が出る。ヒトカラメディアではよく社内用としても模型を作るのですが、空間を自分ごと化する一番のツールだと思っています。

模型作りに没頭する村山

 

小島:今回のプロジェクトチームは、朝礼で手をあげてくれたメンバーなんです。ってことは、空間に少しでも興味があったり、会社や働き方に対して色々と思いがあったりする、ということ。その思いを吐き出してもらいやすいように、発言のハードルが低くなる工夫をしました。

 

村山:チームのコミュニケーションのツールに、みんながプライベートで使っているLINEを選んだのも工夫の一つです。

 

小島:村山さん、率先して「ふるふるしましょう!」ってLINEのアカウント交換をしてましたもんね(笑)。

 

村山:ふるふるしまくりましたね(笑)。自己紹介も自分たちから。趣味の話やスタンプを送るのも積極的にして、発言しやすい雰囲気づくりを心がけました。

 

小島:プロジェクトメンバーから、お休みの日に「あ、そう言えば今ふと思ったのですが・・・」ってLINEが送られてきたときは、嬉しかったですね。現場の思いこそが全てなので。結局僕たちは、そこらじゅうに散らばっていた従業員の方たちの思いを集めて、整理して、空間に落とし込んだだけなんです。

家具の使い方を考えた模型ワークショップ

家具の使い方を考えた模型ワークショップ

 

自分の空間だと感じる仕掛けがたくさん!断面を設計して風と光のグラデーションを作る 

 

—斜めの屋根で印象的ですよね。なぜ斜めにしたのですか?

 

小島:実は今回、新築ということもあり、断面からデザイン設計を考えたんです。そしたら、いつのまにか斜めになっちゃいました(笑)。

休憩所の断面デザイン

休憩所の断面デザイン

 

小島:断面から考えると、空気や光の設計ができるんです。人によって、心地よい温度や明るさって違うじゃないですか。寝ている人には涼しくて気持ちの良い温度が、外にいた人にとっては寒すぎたり。だから、あえて空気や光のグラデーションが生まれるようにデザインしたんです。

 

村山:例えば、廊下。建築的にはドンと通した方が絶対美しいんです。でも、廊下だって大事な環境。あえて壁で日陰を作り、エアコンの効いていない涼しいスペースにしました。

空気と光のグラデーションを生んだ廊下

空気と光のグラデーションを生んだ廊下

 

村山:もともとあった桜と松を残して、絵のように眺められるようになっています。桜もただのフォルムじゃなく、良質な「OFF」を与えるポテンシャルを持った要素なので。

 

村山:僕も小島も建築を学んだ人間なので、普段は描かない断面のデザインを考えるは楽しくてしょうがなかったですね。ただ、あくまでも一番大切なのは、建築物としての美しさではなく、使う人の心地よさ。なので、デザインには「アフォーダンスを誘発する余白」を意識的に取り入れました。

 

「アフォーダンス」とは、説明がなくても行動を喚起するようデザインされた素材や形のこと。例えば、ドアに平らな板が貼ってあれば、押しますよね。で、ドアノブが付いていれば引く。ドアに特徴を持たせることによって、説明なしで誰でも使えるようになる。でもその一方で、その主張が強すぎると、使う人の行動を限定しすぎちゃうんです。それは僕たちの本望じゃないんです。

 

小島:この休憩所は、いろんな欲望が織り混ざっている場所なので、たくさんの休憩のバリエーションが必要なんです。そのためには、できるだけ欲望を引き出して、使っているうちに自分の空間なんだと思ってもらわないといけない。なので、そこにいたらさりげなく意識が変わってて、気づいたら真剣に「OFF」しちゃってた、という仕掛けをたくさん散りばめました。もう、僕たちの悪巧みだらけってわけです(笑)。

 

例えば、奥行きが2mある畳の小上がり。寝てもよし、ゴロゴロしながらゲームをしてもよし、ちゃぶ台を置いて鍋をしてもよし。他の場所もそうですが、スマホを充電しながら見れるよう、電源のコンセントはたくさん配置しました。

広さをしっかりとった色々な使い方ができる小上がり

 

村山:窓もそうですね。光を感じるだけの存在でもいいし、座ってもいいし、ものを置いてもいい。下を眺めて景色を堪能してもいい。

アフォーダンスを誘発する窓

 

小島:家具にも仕掛けを盛り込みました。ベンチはL字型に配置して、ワイワイと話しやすいスペースに。でも、実はクッションは自由に移動できるので、誰もいないときは横になることもできます。

 

村山:こうやって休憩のバリエーションを追求した結果、屋根は斜めになりました(笑)。斜めの屋根には汲み上げた地下水を流しています。空調効率を上げることができるんです。

屋根からの地下水散布

屋根からの地下水散布

 

小島:汲み上げた地下水は、休憩所の周りの水盤にもつかっていて。先日、福本さんから教えていただいたのですが、水盤にスズメやトンビが水浴びに来るそうです。周りの動物たちやたくさんの人の欲望と共存できる休憩所。自分で言うのもなんですが、なかなか秀逸なデザインだなぁって、写真を見るたびに思います(笑)。

 

夜の休憩所。

 

実際の使い勝手は?従業員の方に感想を聞いてみた!

 

—実際に使ってみて、従業員の方はなんておっしゃっていますか?

小島:プロジェクトメンバーの方は、さすがに綺麗になったなーって(笑)。でも、綺麗になったからといって使い心地が悪いってことはなく、ご飯を食べる場所、ゴロンと寝転がる場所、涼む場所など、自分の居場所を選べるからとても居心地が良い、とおっしゃっていました。

 

村山:休憩所としてゆっくりと過ごしていただけていて本望ですね。僕が嬉しかったのは、プロジェクトメンバーが、今の空間に慣れてきたらレイアウトを変えたりしてもいいかも、とおっしゃっていたこと。家具を簡単に動かるからって。ワークショップなどを通して、空間が身近になっている証拠ですね。

 

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休憩の様子

 

小島:まだまだこれから、色々な使い方が生まれそうで楽しみです。

 

ー 本日はお忙しい中お話をいただき、ありがとうございました。

(インタビューここまで)

 

インタビューの途中、「この休憩所は、一言でいうとどんな空間ですか?」と聞いたところ、小島さんが「散り散りになっていた思いを集めてみんなで形にした、ちょうどいいところ」と答えてくれました。

 

あぁ、この休憩所はただの「空間」ではなく、「環境」の集合体なのだ、と思った瞬間でした。自分たちが作った合板で囲まれた、いろんな表情を見せてくれるリラックス空間。私はこの休憩所に、昆虫の巣や卵を想像させるような、自然の原理や安心感を感じます。「ちょうどいい」という言葉は、このような「人間味」溢れる建築物の最高の褒め言葉なのではないでしょうか。

 

 

ヒトカラメディアは、「働く場」と「働き方」に関して、多くの成長企業のお手伝いをしています。お客様のミッションやビジョン、バリューを大切に、オフィス作りをサポートします。「ただのオフィス移転」を「会社の成長の好機」に変えたいとお考えの方、働き方・働く場に関してお悩みの方、ぜひヒトカラメディアにお気軽にご相談ください。

會田貴美子
會田貴美子
大阪府出身。大阪大学理学部物理学科卒業。株式会社リクルートに新卒で入社しSUUMOの広告営業に従事。その後、不動産仲介会社で、ポータルサイトの企画や編集、メディア立ち上げに携わってきました。子育てしながらの働き方こそ、地方と都市をミックスすることで、多くの幸せを生み出すのでは?と考え、ヒトカラメディアに参画。趣味は発酵食品作りとDIYとアウトドア。