うだつがあがる町、徳島県美馬市のサテライトオフィス体験施設『創〜so〜』の魅力(後編)

自治会長の渡邊さん。『創〜so〜』立ち上げまで、石田さんの想いを受け入れ、取り組みを見守り支えてくれた

2016年3月より徳島県美馬市に開所したサテライトオフィス体験施設『創〜so〜』。前編に引き続き、『創〜so〜』の企画・運営を担当される美馬市の石田さんにお話を伺いました。(サテライトオフィスや『創〜so〜』周辺の環境については「前編」をご覧ください)

 

ーそれでは、サテライトオフィス体験施設『創〜so〜』の中をお見せ頂いてよろしいですか?

 

はい、穴吹川とは歩いて3分ほどの場所で、元々は電力会社の営業所兼下宿として使われていた施設をサテライトオフィス体験施設に改修しました。かなり奥行きの長い家で、表の道路に面したところに事務所スペースが1つ、一番奥に広いリビングがあります。その間に和室3部屋や洗面所、浴室。あとは全く手をつけていないガレージがあります。まだまだ未完成な部分もたくさんあります。施設が稼働してからも、徐々にDIYなどで手を加えていこうと思っています。

 

サテライトオフィス『創〜so〜』の執務スペース。4名用のデスクとチェア、ロッカー、ラックが備えられている

サテライトオフィス『創〜so〜』の執務スペース。4名用のデスクとチェア、ロッカー、ラックが備えられている

 

ー和室が3部屋ありますが、宿泊できるんですか?

 

はい、『創〜so〜』はもちろん宿泊も可能です。せっかくの遠方からのサテライトオフィス体験で、夜は市街地のホテルに戻る、となるとせっかくの機会もしっかりと味わえないですからね。費用は1日あたり1500円頂戴しています。宿泊の際はあとは別途布団代もお願いしています。

 

全部で3部屋あるきれいな和室。もちろん宿泊が可能で、1部屋あたり2人はゆったり、ぎゅうぎゅうで3人泊まれる広さ。施設としては利用の上限は特に設けていないが、8名程度が目安とのこと

全部で3部屋あるきれいな和室。もちろん宿泊が可能で、1部屋あたり2人はゆったり、ぎゅうぎゅうで3人泊まれる広さ。施設としては利用の上限は特に設けていないが、8名程度が目安とのこと

 

施設の一番奥にあるリビングスペース。もともと2つあった部屋の壁を取っ払い、広いリビングとした。ガスコンロも設置予定で、地元の食材を使って料理などもできる

施設の一番奥にあるリビングスペース。もともと2つあった部屋の壁を取っ払い、広いリビングとした。ガスコンロも設置予定で、地元の食材を使って料理などもできる

 

キッチン側から撮影したリビング。日差しが心地よく、撮影した3月上旬でも暖房が要らないくらいの暖かさだった

キッチン側から撮影したリビング。日差しが心地よく、撮影した3月上旬でも暖房が要らないくらいの暖かさだった

ー1泊2日で一人あたり3000円+布団代というわけですね。安いですね。

 

いえ、施設まるごとの使用料が1日あたり1500円なので、例えば5名で使うと3000円を人数で割る計算になります。1泊2日で一人あたり600円、あとは布団代も頂戴していますね。

 

ーものすごく安いですね……!10名で使うと一人あたり300円+布団代ですか……。

 

そうなります、ただ10名だとちょっと窮屈かもしれません(笑)。8名くらいなら十分ゆとりを持って使えます。なにはともあれ、来て使っていただかないと何も始まらないですからね。利用される方がなるべく気軽に利用頂けるような金額設定をしています。民間だと利益を生む必要があるので難しいかもしれません。行政だからこそ出せる価値かなと思っています。

 

ー確かに、最初の縁のないところからのきっかけをいかに作るかが一番肝心ですね。徳島といえば、県内に張り巡らされた光ファイバー網ですよね。IT企業の誘致に一役買っていると思いますが。

 

もちろん美馬市も光ファイバー網、通ってます。当然、この知野地区にも張り巡らされています。以前、通信の部署にいたこともあるので、けっこう詳しいですよ。

 

ーこれは何ですか?

 

「音声告知端末機」と言いまして、美馬市から支給しているものです。美馬市の他には、お隣の三好市でも支給されていますね。これがルーターの役割を果たします。なのでこれに無線機を差し込めば、ネット開通です。試しにちょっと繋いでみましょうかね。

 

美馬市の各家庭に支給されている「音声告知端末機」。ルーター代わりとなり、各家庭に高速のネット環境を提供する。美馬市ならではの光景だ

美馬市の各家庭に支給されている「音声告知端末機」。ルーター代わりとなり、各家庭に高速のネット環境を提供する。美馬市ならではの光景だ

 

ーモデムを市が支給するってすごいですね。そしてさすが、手際がいいですね。せっかくなんでアプリで速さ測ってみてもよいですか?

……ダウンロード31.25Mbps、アップロード50.21Mbps……爆速ですね!!!

 

ちょっと僕が想像していたよりもだいぶ速い値ですね……。ともあれ、誤差あったとしても基本的にはIT系の業務でネットの速度で困ることはまずありません。むしろ快適に作業できると思います。

 

アプリを用いた簡易テストなので参考値として見てもらいたいが、それでもアップロード50M、ダウンロード30M超えはなかなか見かけない数値

アプリを用いた簡易テストなので参考値として見てもらいたいが、それでもアップロード50M、ダウンロード30M超えはなかなか見かけない数値

 

ーそういえば、『創〜so〜』という施設名、一度聞いただけですごく印象に残るなと思ったのですが、この名前にはどんな意味が込められているのですか?

 

実は4つも意味があるんです。

 

ー4つも!

 

4つも、です(笑)。美馬市は「四国のまほろば」というキャッチフレーズを使っているのですが、その中の理念として、「共創」というテーマがあります。美馬市に集まる多種多様な人々で一緒に魅力的な地域づくりをしていこうというテーマです。この「共創」がまずひとつめ。

 

2つめが「創造」の「創」です。この施設から、新しい企業や事業が生まれて、新しいものを創り出してほしいという意味を込めています。3つめは、この施設がきっかけとなり増やしていきたい、「SO(サテライトオフィス)」です。美馬市と外をつなぐ架け橋をここから作っていきたいと考えています。

 

4つめが「想(おもい)」。多くの人の想いが重なるような場所にしていきたいです。この施設を利用する方はもちろんなんですが、この施設のある地元の方々の想いもしっかりと重ねていきたいですね。こことの交わりがないと、この場所でサテライトオフィスを体験してもらうことの意味はかなり薄まりますからね。地元の方にとっても、どんな人が来ているのか、何をやっているのか分からない状態というのは不安につながりますからね。

 

ー地元の方とのつながりというのは非常に大事ですよね

 

そうですね、やはり地元の方の理解と受け入れる気持ちがなければ、訪れる側もなかなか行きにくいですし、いい体験にはなり得ないですよね。それもあって、『創〜so〜』の場所を決めて、施設としてオープンするまでに何度も地元に足を運び、説明会も実施しました。けっこうな人数が集まりまして、この集落のほとんどの方に参加頂けました。前のめりというよりも、緩やかにこの取り組みを受け入れていただいているような感じですね。施設に用事があるときはいつも声かけて下さいますし、これからどんなことが起きるのか興味あるみたいです。僕が思ってた以上に、皆さん関心があるんだなと。身が引き締まる思いですね。

 

知野地区では既に有名人の石田さん。人とすれ違う度に声をかけたり声をかけられたり

知野地区では既に有名人の石田さん。人とすれ違う度に声をかけたり声をかけられたり

 

ー「サテライトオフィス」って概念は地元のみなさん、理解されているんですか?

 

ひとりひとりに聞いてみたわけではないのですが、みなさんが正確に理解されている状態ではまだないと思います。ひとつ言えるのは、「この地域に若い方々が仕事しに来てくれたら嬉しいですよね」という点に関しては全面的に賛同頂いていますね。「やってみりゃええ」と背中を押してもらってます。ただ、神山町の事例をご存知の方がいらっしゃったりするので、「神山のかっこいい施設とはちょっと違うな」と言われたりはしました(笑)。

 

ー手厳しいですね(笑)

 

ここから歩いてすぐのところにいらっしゃる、知野さんという方から言われたんですけどね。この知野さんという方がとても魅力的な方で。実は、僕と知野地区との出会いは、この知野さんという方がきっかけなんです。車で美馬市内のいろんな場所を巡っているときに、この地区で「ど根性農園」という看板を見かけまして、そばにいた男性に声をかけてみると、その農園を運営されている知野さんだったという。

 

知野さんのど根性農園。石田さんと知野さんが出会い、『創〜so〜』がこの地区にできるきっかけになった場所だ

知野さんのど根性農園。石田さんと知野さんが出会い、『創〜so〜』がこの地区にできるきっかけになった場所だ

ー『創〜so〜』から穴吹川に向かう途中にある農園ですよね? 確かに、あの看板は目を引きますよね(笑)

 

本当に器用な方で、農業を始められたのはこの数年ですがいい作物を作られますし、あとは庭をきれいに芝生で整えたり、家には自作のピザ窯があったり。このピザ窯もサテライトオフィス体験の魅力のひとつとして活用していけたらと思っています。知野さんには「面白い人、連れて来いよ」と言われていますので(笑)。

 

ど根性農園を営む知野さん。奥の小屋の中には自作のピザ窯があり、これまた自作の屋根がついた庭で焼きたてのピザを美味しく食べることができる

ど根性農園を営む知野さん。奥の小屋の中には自作のピザ窯があり、これまた自作の屋根がついた庭で焼きたてのピザを美味しく食べることができる

 

ーピザ窯まで!

 

すごいですよね(笑)。あとは、この知野地区の自治会長をされている渡邊さんですね。『創〜so〜』の開設までいろいろと支援して頂きました。「とりあえずやってみて、困ったことや何か考えていることがあったら助けになるかどうかわからないけどとりあえず言ってくれ」と言って頂いて。繰り返しになってしまいますが、渡邊さんはじめ、知野地区のみなさんは本当に受け入れるスタンスがあるので、その点含めて自信を持って『創〜so〜』ではなかなか都市部では味わえない体験ができると思います。

 

自治会長の渡邊さん。『創〜so〜』立ち上げまで、石田さんの想いを受け入れ、取り組みを見守り支えてくれた

自治会長の渡邊さん。『創〜so〜』立ち上げまで、石田さんの想いを受け入れ、取り組みを見守り支えてくれた

 

ーありがとうございます。改めてですが、人も自然も施設も、本当に魅力的な場所ですね。

 

これから暖かくなってくると、川遊びもできますし、緑も青々としていて本当に気持ちの良い季節になりますのでぜひお越しください。まだ美馬市にはサテライトオフィスを構える企業は一社もありません。今回、『創〜so〜』ができてようやくスタートラインかなと思っています。ただ、今回立ち上げる過程で知ったことや知り合った方を振り返ると、自分自身いままで知らない魅力がたくさんあることに気付きました。知野地区のような魅力的な自然と人々が暮らす場所もそうですし、うだつの町並みの脇町でも面白い動きがどんどん生まれています。

 

これらをつなぎ合わせるひとつの接点として、『創〜so〜』に関わる企画を打ち出していきたいと考えています。もし興味をお持ちになった方がいらっしゃれば、気軽に美馬市までお声がけ頂けると嬉しいです!

 

 

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株式会社ヒトカラメディアは『「都市」と「地方」の「働く」と「暮らす」をもっとオモシロくする』をミッションに、ベンチャー企業を対象としたオフィス移転、内装プランニング、働き方のコンサルティングを行う会社です。軽井沢と徳島県美波町で、サテライトオフィスを展開しています。